さようならのお弁当
お弁当を頂きました。晩御飯に頂きました。食べながら、つい涙でしょっぱくなりました。
下さったのは、もう10年以上ずっと通ってきてた患者さんです。今日がお別れでした。数日前に、ケアマネさんから、お一人暮らしで、認知症もひどくなって、ホームに入ることになりました。〇〇島のホームです。そちらに紹介状を書いて下さいと聞いておりました。驚きました。広島県の東の瀬戸内海の島です。とても遠くです。そして、今日、その方が来られました。これまで、そして今日もまったく認知症とは思えない会話を交わしてきたのですが。
先生、私はどこに行くんでしょうか、と言われます。〇〇島と聞いたけれど。あなた本人は聞いてないの?それが、島というのは聞きましたが、なんという名前のホームか、住所もなんにも教えてもらっていません、と。その島には、知り合いもいないし、ぜんぜん縁もない所だそうです。今広島では、ホームに入りたくとも、全く空きがなくって、そんな遠い所に行かないといけないのですね。私も施設の名前も聞いていないので、宛名のない紹介状となりました。なんと言って上げたらいいのか、しばし迷いました。で、でもね、島だったらきっと海が見えて景色のいいところだと思うよ、それは楽しみじゃね、と言いました。そうですね、きれいな所だといいですね、とご本人も言われます。
で、宛名のない紹介状もお渡しして、さようならをしました。なんかあったら電話してきて。診察券に電話番号は書いてあるからというと、ありがとうございますと。そうして一旦帰られたのですが。しばらくして、ナースが「先生!〇〇さんがお弁当を沢山!!」と言います。お礼にお弁当やさんで買ってきました。お世話になって、ここに来られて幸せでした、と。そんな、これからお引越しにお金もかかるでしょうに。お金、使わせてしまいましたね。でもこの沢山のお弁当を持って帰って下さいとも言えないし。先生、握手して下さいと。しっかり手を握って、どうぞお元気で、と双方涙でお別れしました。近くのホームに入られたなら、ずっと通ってくることもできますのに。どうしてそんな遠くに行かなければならないのでしょう。あまりに遠方過ぎて。それに、そんなやり取りをして思います。彼女は本当に認知症なのでしょうか。クリニックにもお一人で来られていますし・・。
こんな悲しい思いをして、ついの住処に移らなければならないなんて。私はやっぱり政治がくそだと思います。
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