2030年にむけた産婦人科医療
先週22日の水曜日、「Women's Health Forum~2030年にむけた産婦人科医療~」が開かれました。
第一部、「未来の産婦人科医療~各施設の取り組み~」がとても面白くて、聴き入りました。様々な病院の若い先生たちの発表です。
まず広島市民病院の先生の「AYA世代のがん診療」。先日、旭川の思春期学会でも「AYA世代のがん」のシンポジウムを聞いたばかりです。AYA世代とは、思春期・若年世代といい、この時期は、子どものがんと成人のがんの両方に発症するがんを発症しやすいのです。そして、この世代のがん治療は手術、放射線療法、抗がん剤などにより、生殖能力に影響があり得ます。その治療前に、将来の生殖のための、卵巣や卵や精巣や精子の保存をしようとする試みです。思春期学会では、かなり活発な論議がされて、世の中こんなに進んで来たのかと感慨深いものがありました。それが広島でも取り組まれています。なかなか大変なことではありますが、患者さんやその親の皆さんがつらい中、少しでも将来に望みを託すことができる、貴重なことと思います。私も、これから乳がんの治療をする人に相談されて、不妊治療で卵を保存しているドクターにつないだことがあります。この分野はまだはじまったばかりですが、将来は大切な治療となるでしょう。長い間の保管、保存など管理が大変なこともあるでしょうが。
次の尾道総合病院の「SDGsで考える産婦人科医療」もとても面白かったです。経営、お金をできるだけかけないということは、勤務医の方はなかなか考えにくいことでしょうが。我々開業医にとってはとても深刻なことではあります。多くの病院が赤字に陥っている今、病院の経営に貢献する取り組みは貴重なことでした。こんなことが発表されるようになったかという感慨もありました。例えば、残業をできるだけしないように、時間内に仕事は終えましょうとか、夜はできるだけ呼ばれないように、近隣の先生方にも協力していただくとか・・。これらは経営の為だけでなく、女性の産婦人科医が増えた今、とても大切なことでしょう。(以前、土谷病院で産婦人科の医師を女性ばかりでしていた時、子育てのためにも時間内に頑張って仕事を終えましょうと言って実践したことがあります。)
次は県立広島病院の「子宮腺筋症病巣除去術の導入と展望」。子宮筋腫の核出術はよくされていますが、腺筋症はなかなか難しいのです。が、それに挑戦しているということでした。それにより、病気で苦しいだけでなく、妊娠が困難な方も妊娠が可能になってきていると。これはすごいことですね。頑張ってほしいと思います。同時に、早くからの治療で、そこまで行かないようにすることも大切なこと。つらい月経痛を我慢しないように、早く病院に行くように若人達への警鐘が必要なことです。
最後の広島大学の「当院でのロボット手術の取り組みについて」。新しく赴任された山口教授は京都大学でロボット手術に取り組まれていました。若い先生たちがそれを学ぶためにどのような研修が必要かという発表でした。これまでの普通の手術、腹腔鏡による手術など、どれもがその役に立っていて、今患者さんにより負担のない新しい手術に取り組もうとする意欲がとても頼もしいものでした。
時代が変わります。わたしたちは、もう老兵です。私たちの任務としては、これらの治療を必要とする患者さんを的確に見分け、しかるべき病院につなぐこと。それをさらに痛感しました。
第二部の基調講演は県立広島病院に赴任された阪埜先生による「月経困難症診療における治療戦略2025~薬剤の特性を踏まえて~」は、私たちの日常の診療に直接必要なお話でした。私も講演の場で必ず若い人たちや保護者の方たちに伝えるのですが、生理痛は我慢しないように。早く病院に行って、楽に過ごせるようにしてと。それは、その時を楽にするだけでなく、筋腫や内膜症や腺筋症などのつらくて不妊に繋がる病気が潜んでいることが多いからでもあります。もっと啓発をしなければと思いました。
はじめから終わりまでずっと楽しく聞けて、役に立つ会でした。その後は、懇親会。研修会では写真が撮れませんでしたので、ここで。

いつも、患者さんを紹介してお世話になっている先生方に直接お会いして、いろいろとお話ができました。沢山紹介してきても、今回初めてお会いする先生にもご挨拶出来ました。
発表された先生方、持田製薬さん、大変お世話になりました。ありがとうございました。私も、どんどん進歩する医療に遅れないように、このような会には、きるだけ積極的に参加しましょうと思いました。そんな会でした。
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