2025年「8.6ヒロシマ平和の夕べ」⑤平和講演Ⅱ青木理さん・インタビュー小山美砂さん
今年の「8.6ヒロシマ平和の夕べ」の平和講演、二つ目は青木理さん。以前、青木さんが朝鮮民主主義人民共和国の核について書かれているのを読んで、青木さんのお話を聴きたいと思ったのでした。いつ核戦争になってもおかしくないような今の世界情勢の下で、本気で核兵器廃絶の道筋をつけたいと強く願う時、いわゆる大国の陰での核をどうする?その論義を深めたいと思いました。青木さんに講演をお願いしたら、なんと、講演は苦手だと。まさか。どなたかに質問、インタビューをしてもらって、それに答えるということであればできると。本当にびっくりしましたが、それならそれで。その態勢を整えましょう。そこで考えたのが、インタビュアーを小山美砂さんにして頂くということでした。
小山美砂さんは、元毎日新聞の記者、ジャーナリストとして、「黒い雨訴訟」を上梓されています。ジャーナリスト同士、がっちり組み合った議論になるのでは、と思ったのです。
結果、かなり骨太のお話になったと思います。皆さん、じっと、目を凝らすようにして、お話に聞き入っていらっしゃいました。スタッフがまとめたものをここに再現します。長いので、これも二回に分けて再録しますね。
まず、小山さんの「青木さんとヒロシマの繋がりは?」から始まりました。
青木 初めて広島を訪れたのは、高校の修学旅行だった。その後、通信社の仕事にかかわるようになり、「ヒロシマ、被爆」を追ってはいたが。
90年代の後半から、朝鮮半島の問題を取材した。北の核問題を取材するために、安保・核政策などに少しは知識を得たが、「ヒロシマ、ナガサキ」をどれほど知ってきたかは、覚つかない。
2000年代に韓国に駐在した。今も朝鮮半島は、分断が続いている。当然ながら北朝鮮の核実験、保有などの問題は取材の課題になった。最近、「核兵器は安上がり」と言った政治家がいる。じつは核兵器は「貧者の兵器」とも言われる。あの国にとっては自分たちの体制を守るため、アメリカという世界最大の超軍事国家から受ける圧迫に対抗するために、「核兵器を持つしかない」というのは“一理ある”のかもしれない…。
小山 いまの日本、「核武装も」という声も出ている…。そこには北朝鮮、共和国に対する意識があると思う。それに、どう対するのか。広島には朝鮮人被爆者協議会があり、いわゆる北支持の人たちもいる。彼らは「共和国の核は、アメリカの核による威嚇に対するためだ」と…。私たちは、そういう核にどう向き合うのか。
青木 アメリカであれ北であれ、「体制を守る」とか、どんな理由があろうと、核兵器とその保有は認めてはならない。国際情勢のなか、広島、長崎以降、例えばキューバ危機などかあった。いまはロシアのウクライナ侵攻など、もっと危険な状況にある…。「核による脅し」が、ある意味「有効化」してしまった。
これまでは一応、核拡散防止、NPT条約があった。それは別言すると「不平等な体制」でもある。つまり「米英仏ロシア中国の5カ国は「核をもってよいが、その他の加盟国は持ってはならない」というもの。しかも、国連安保理常任理事国である。
最大の保有国であるロシアがウクライナに侵攻し、「使う」と脅した。ロシアだけではない。アメリカは(イスラエルの意図を汲み)イランの核施設を攻撃した。イランは「核保有」に意欲を見せていた。同時にイランは、NPT加盟国でもある。イスラエルは事実上の核保有国でありながら、加入していない。
本来なら、最大の保有国である米ロこそ核軍軍縮に努力するべき。それが逆に「核による威嚇」を行なう。「やっぱり核を持たなければ」という北朝鮮の理屈に、むしろ力を与えている。米ロの行為は、「核拡散」という方向に向かうに等しいのでは。NPT体制は、非常に不平等、不完全であり問題があるが、さらに骨抜きにされるという危うい状況が懸念される。それが「被爆80年」の世界の現状ではないか。
日本が「核抑止」を言う、より危うい時代に向かおうとしているのではないか。世論調査でも「核保有」「核武装」論は、かなり上がってきている。
小山 きょうの広島市平和宣言にも「自国のことのみに専念する安全保障政策そのものが、国と国との争いのもとになっていないか。核兵器を含む軍事力の強化を進める国こそ、核兵器に依存しない建設的な議論をする責任がある」(要旨)としている。とても大事なことだ。しかし、アメリカによるイラン核施設への攻撃にも、日本政府は追随しているばかり。
(明日に続きます。)
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