卵巣癌、子宮体癌
昨日木曜日の夜は、臨床産婦人科医会の研修でした。対面とオンラインのハイブリットでしたが、私は、このテーマは、どうしても対面で聴きたいので、県医師会館に行きました。テーマは、「婦人科腫瘍に関する最近の話題~卵巣癌・子宮体癌治療を中心に~」。演者は四国がんセンターの竹原和宏先生でした。
竹原先生は、広島大学の後輩です。四国がんセンターの婦人科では、かつて私の同級生の日浦昌道先生が部長として情熱をもって治療をしていらっしゃいました。わたしは、進行した卵巣癌の患者さんは、四国まで行くことを説得して、日浦先生に託したものです。その日浦先生が自らがんになって、あっという間に亡くなられて、もう10年になります。
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今は、竹原先生を始めとして皆さんが精力的にがん治療をしていらっしゃると聞いていました。お話は、本当に素晴らしかったです。
昔は、とても厳しかった卵巣癌が、今は「生きられる」病気になってきました。2009年から2011年に治療を開始した卵巣癌全体の5年生存率は60%です。1978年にプラチナ製剤の抗がん剤ができて、画期的に生存率が伸びはじめ、その後どんどん様々な治療薬できて、組み合わせによるカクテル療法ができるようになり、さらに今では手術後に抗がん剤治療をしたのちに、維持療法として内服のバイオなどの抗がん剤ができました。今では、組織型によって、個別化医療がなされるようになっています。
例えば卵巣癌Ⅲ/Ⅳ期のHRD陽性という厳しい組織型の方の治療は5年生存率65.5%(プラセボだと48.4%)。HRD陽性且つtBRCA変異陽性の人の5年生存率は73.2%(プラセボは53.8%)です。
竹原先生のお話の素晴らしかったのは、とにかく諦めないで、今度はこの治療、もしもこの後に再発したらどの治療にしようかと、次々と治療をすることによって、生存期間を長らえて行っているということです。このようにして、社会全体でのがん治療が徐々に成果を上げて行っているのだと思います。その情熱に頭が下がる思いがしました。
子宮体がんも、以前はほとんどが腺癌で放射線療法が効かずなかなか難しいがんであったけれど、今や五年生存率はこうです。

久々に研修の講義を聞いて、感動しました。このように情熱をもってがん治療に取り組んでいる医療者たちの横目に、「抗がん剤なんて毒だ」と人々の治療意欲をそぐ人たちに、今回のお話を聞いてもらいたいと思いました。
わたしのすべきことは、がんの方たちをちゃんと見つけ、どこで治療をしたらいいのかを真摯にアドバイスすることと思いました。また、私の患者さんで、せっかくがんの手術を受けたのに、抗がん剤は拒否しましたと言って、あっという間に再発して亡くなってしまった方がおありです。そんなことがないように、治療を受けてほしいと紹介する時には説得すること、これを肝に銘じようと思っています。
いいお話をありがとうございました。
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