「8.6ヒロシマ平和の夕べ」③子どもの甲状腺がん
「8.6ヒロシマ平和の夕べ」の続きです。
「3.11子ども甲状腺がん 損害賠償請求訴訟」について。弁護団副団長の杉浦ひとみさんにお話し戴きました。
事前に頂いたレジュメを了承いただいていますので、ここに転載させていだたきます。
311子ども甲状腺がん 損害賠償請求訴訟
2024.8.6
弁護士 杉浦 ひとみ
1 裁判の紹介
この裁判は 2011年3月11日の東日本大震災の東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線被ばくと、子どもたちの甲状腺がんとの因果関係を立証し、被害者への補償を求めるもので、福島第一原発事故と病気との因果関係を争う、住民による初の集団訴訟です。
2 自己紹介
2022年11月から弁護団に加入。これまで戦時性暴力被害裁判、東京大空襲裁判や性暴力被害、犯罪被害者支援などを通じて、被害者の精神的損害についての事件や、集団訴訟に関わってきたことから、参加することになった。
3 裁判の具体的内容
2022.1.27 東京地方裁判所に提訴
原告 7名(男性2名、女性5名)提訴時17~27歳 被災時6~16歳
被告 東京電力ホールディングス株式会社 ※国、福島県は除外
請求額 8800万円~1億1000万円
弁護団長 井戸謙一(志賀原発の原子炉運転差止請求事件を認めた裁判官)
4 原告になった方たち
原告たちは、全員が甲状腺の片葉摘出術を受け,4人は再発して全摘出となり,あえて放射性物質を服用する過酷な治療を受け,あるいは受けようとしている(提訴当時)うち1人は,再発を繰り返し,4回も手術をした.うち 1 人は,医師から肺転移を指摘されている.甲状腺のすべてを失った4人は,生涯にわたってホルモン剤を飲み続けなければならない(生存できない).誰もが進学や就職に支障をきたし,再発に怯え,将来が見えないつらい思いを抱いて生活している.さらに、原告らは将来の医療費を心配しているが, 医療保険に入ることもできない。正当な補償を求 めたいと思うのは当然である。
しかし、それだけではなく、自分たちが矢面に立つことによって,同じように苦しんでいるであろう300人近い若者たちに勇気を持ってほしい,そして,原爆の被爆者に被爆者援護法があるように,福島原発事故による被ばく者にも,将来の医療費や生活費の支援の枠組みを作ってほしいと願って,提訴を決意した.
5 因果関係について
本来,小児甲状腺がんは,1 年間に 100 万人中 1 ~ 2 人しか発生しないといわれる極めて稀ながんである。これが,原発事故後の福島で,わかっているだけで 293 人(福島県県民健康調査で 266 人,それ以外で 27 人)もの子どもに発見され,福島県県民健康調査で発見された上記 266 人中,すでに 222人が摘出術を受けている。
放射線被ばくが甲状腺がん発生率を増加させることは,科学的によく立証されている。
しかし、東京電力は,福島原発事故と小児甲状腺がん多発との因果関係を否定。
国や福島県の主張と同様,福島県県民健康調査検討委員会及び UNSCEAR(国連科学委員会)が因果関係を否定していることを根拠にする。裁判では、現在はこの点の主張立証の攻防。
6 甲状腺がんに罹患した苦しみ ~ 被害 原告らの声
7 子ども甲状腺がん裁判の三重苦
- 子どもの被害が甚大であること ~ 被害をどう算定するか
- 国、県、東電が全て因果関係を否定する姿勢 ~分かりきった加害の否定
- 原発事故による被害はないものとする国の大きな方針は、社会からの原告らの排除
の動きとなる大きな圧力
国にとっては、福島原発事故による住民の健康被害はあってはならないものである. そのため,福島では,「被爆安全論」が流布され,被爆による健康影響の不安を口にすることすらできないという社会的雰囲気が醸成されてきた。
NPO 法人 3・11 甲状腺がん子供基金が援助している小児甲状腺がんの患者及び家族に対して実施したアンケート調査結果によれば,6 割の患者 及び家族が小児甲状腺がん罹患の原因は被ばくで あると考えていることが分かった。しかし,彼らは,そのことを口にすることができない。
提訴した若者、その家族の孤立という理不尽な現実がある。
このため、原告は匿名で陳述し、法廷でも遮蔽をしたりする。
→ 原告が支援者の支援によりエンパワーされる過程を得ることができない損失
8 さいごに
甲状腺がんに罹患した若者は統計上の数十倍に及ぶことや福島原発事故による住民の健康被害がなかったことにされ、若者の甲状腺がんも「過剰診断」として片づけられようとしていることも社会に知られていない。事故の被害を明らかにすることこそ、原発事故の過酷さ、重大さを正しく評価する上で大切なことであるにも関わらず、これを明らかにしようとしない日本社会の異常性が現れている。
ご参照HP「311甲状腺がん子ども支援ネットワーク」 レジュメ以上
裁判に訴えるということが、どれだけストレスとなるか、本当に大変な事。よく決意されたことと思います。国、福島県、それに使われたドクターたちが当初からいかに理不尽な事を言って来たか、私たちは良く見ています。原告の皆さんを支援したいと思います。
レジュメの最後に記された「311甲状腺がん子ども支援ネットワーク」https://www.311support.net に詳しい情報が出ています。ぜひご覧言頂いて、私からもご支援をお願いしたいと思います。以下は、そのホームページにある写真です。
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