「髪がつなぐ物語」
小学校6年生の国語の教科書に採用されたと知ったので、取り寄せて読みました。子ども用に漢字にルビが振ってありますが、でも、大人が十分読める本でした。
このお話は、私は、帯広三条高校の放送局の、NHK杯全国高校放送コンテストで第三位となったテレビドキュメント「髪の絆」を観たことがあって、一応知っていると思っていました。しかし、本を読むと、全然違ったというか、知っていたのは表面だけでした。
今でこそ多少は知られているヘアードネーション、髪のない人のためのウィッグを作る、その髪を提供すること。2009年にそれを始めたのは、大阪の美容師渡辺貴一さん。全くのボランティアで、NPOを作り、地道な活動を続けました。
この渡辺さんたちが作ったNPOジャパンヘアドネーション&チャリティー、通称ジャーダックと同じ活動をしていたアデランス、この両者が帯広三条高校の放送局の取材によりつながり、より効率的にその活動ができるようになったことも感動的でした。そもそも帯広三条高校がこの取材をすることにした背景には、顧問の安藤先生のつらい体験があったことでした。
ウィッグを一人分作るためには、30人分もの髪が必要なこと。また、提供された髪がそのままウィッグとなるのではなく、色や質を整えて出来上がるには、一年もの時間が必要でした。
それに、この本には、治療のために髪を失った小児がんの子どもたち、なぜか原因不明で脱毛症ですべての髪がなくなり、二度と生えてこない人などの事が何人も出てきます。やっとウィッグが出来上がって、連絡をしたその日にその高校生が亡くなってしまっていたこと、その彼女の遺体にウィッグを付け、美容師さんがカットをしてあげたことなどの記述には涙を禁じえませんでした。
また、髪を提供する人たちの事もいろいろと出てきます。中でも、小学生の男の子がいろいろとからかわれたりいじめられたりしても、頑張って必要な長さ31センチになるまで髪を伸ばし続け、提供したことも。それも、二回も。
私的には、ボランティアの渡部さんたちのしんどさ、ウィッグを提供してほしい人たちはみんな熱意をもってお願いするのであって、きちんと順番に提供しようとすること、待っている間に亡くなってしまう人もいてつらいこともあるけれど、それでも、それを守ろうとする事などに、共感することがありました。
これは、いろいろな人たちの人生の記録です。小学生だけでなく、多くの人に読んで頂きたい感動的な本です。
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