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「塀の中のおばあさん」

 今日も午前中は電話当番でした。当番をしながら、本を読みました。読売新聞編集委員の猪熊律子著「塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で」。

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 ずっと昔、女性刑務所のルポを読んで、とても興味深かったのを覚えています。中でも、ひどい意地悪をされた姑を殺した広島県の女性の事は、何十年たった今でも忘れられません。妊娠していても、十分に食事を摂らせてもらえなかったこと。隠れてパンを買って食べているのを見つかって、ひどく叱られたこと。そんな話をしている女性の後にいた刑務官も鼻をすすって泣いていたことなど。

 それから、今、個人的に女性刑務所に収容されている性同一性障害の人への関わりがあって、その必要もあって読み始めたのです。

 でも、今回のこの本は、ルポというより、統計中心の社会学の本と言っていいでしょう。読み物を楽しむというよりも、お勉強をしている感じでした。

 新規受刑者は、どんどん減っているものの、女性は高止まり。それも65歳以上の高齢者が増え続け、いまや女性受刑者の2割が高齢者だと。

 受刑者は再犯が多く、その罪名は、男女とも窃盗と覚せい剤がトップ2であるけれど、男性はこの二つで6割、女性は8割と。しかも、高齢男性は窃盗が5割だが、女性は9割。さらに窃盗でも、高齢女性は圧倒的に万引きであると。金額は3000円未満が約7割、その内1000円未満が約4割になると。

 しかも、刑務所の中では、認知症や筋力が衰えたり咀嚼できない受刑者が増え、食事も刻み食やおかゆなど、こまかに対応していると。また、入浴やトイレの介助やおむつのケアも必要な受刑者も。介護は、収容者の中でできるように訓練した人が配置されています。外部講師による筋肉のトレーニングや口腔ケアの指導も刑務所の中でされています。

 それから、万引き犯の中には摂食障害の者も多く、それらの医療刑務所での治療にも及んでいます。ダイエットから過食嘔吐。それを何十年も続けていると、治療は本当に大変です。

 さらに、覚せい剤。なぜ薬にはまっていったか、ここでは、何人もの女性たちの話が出て来ます。いずれも、いじめや虐待やDVなどでくるしみ、自己肯定感が低い女性たちが、薬に逃れて行く姿が描かれます。

 職業訓練と、出所後の生活について。再犯、再収用がとても多い現状をどうすれば再犯を防いでいけるか、様々な考察と実践がルポされています。訓練は、介護、フォークリフト、美容、パソコンなどに加え、今ではホテル清掃やエスティシャンやネイルなどの訓練もなされているそうです。

 ただ、刑務所から帰って来た人を受け入れる所もまだなかなかありません。彼女たちが自力で生活できるように社会が変わっていかないと、再犯は増え続けるでしょう。

 夢中で読み切った本ですが、では、あなたはどうするか、と突き付けられると、さて、私にできることは何なんだろうと戸惑わずにはいられません。今のように物価がドンドン上がって行くと、万引きする人も増え、塀の中に収容される人も増え続けるでしょうねと、これだけははっきり言えます。国民が幸せに生活できるように、やはり政治の問題であるということでしょうか。

 さて、そろそろ次の講演の準備にかからなければなりません・・。それから、養子縁組の動きがバタバタと急に出て来たので、家庭訪問にも急ぎ出かけなければならなくなりました。ぐずぐずしてはおれません。

 

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