« ベランダの花 | トップページ | 兄の文章から② »

兄の文章から

 福岡の兄が亡くなってほどなく、兄が作っていたホームページ「一麦窯」が開けなくなりました。いろいろ大切な文章や写真が載っていたのを後ほどじっくりと読んだり、遺作展に来る方へのパンフを作るのに利用しようと思っていたのに、それがどうしても見られなくなったのです。何とか、あり合わせでポスターやパンフを作りましたが、ホームページが開けないのが、とても残念で。ただ、兄のパソコンにはそれらの文章や写真が残っているのではないかと思ったので、義姉に頼んで、そのパソコンを送って頂きました。そして、私のパソコンの先生に明けることをお願いしました。

 そしたら、開けました。文章も、写真も出てきました。まだすべてではありませんが、多くは出てきました。それらから、一部をここに転載したいと思います。このまま埋もれさせるにはもったいないと思うので。陶芸について語ったものが多いのですが、いろいろな社会に通じると思いますので。先ずは、これから。


6. 全会一致は良いことか

 新聞、テレビ等で株主総会の様子が報じられる。いかに短時間でスムーズに会議を終わらせられるかが、担当者の腕の見せ所とされるという。

 新宮町文化協会本年度総会が4月8日に行われ、全ての議題が満場一致で可決され、極めてスムーズに最短時間で終わることができた。

 一方、7月1日に行われた芸術祭反省会では予定時間をオーバーするほどに多数の発言があり、それに対する反論もあった。

 これだけ多くの会員の発言が見られたのは、両会議の性格が全く異なるにしても特筆に値する。

 ところで、いささか古い話になるが、かつて「日本人とユダヤ人」という本がベストセラーになった。内容もさることながら著者のイザヤ・ベンダサンとは一体何者かが随分騒がれたので、覚えておられる方も多いと思う。

 この著書の第6章に「全会一致の審判は無効」-サンへドリンの規定と[法外の法」-という記述がある。

 全会一致は偏見か興奮の結果、または外部からの圧力以外にはありえないから、その決定は無効だというのである。

 たとえわずかでも異論を唱えるものがあるならその異論との対比の上で、比較的、絶対的正義に近いことが証明されるわけで、少数の異論もある多数者の意見は比較的正しいと信じてよい、ということなのである。

 諸会議において形の上では全会一致で決められたことが、非公式の場で否定的意見を出されるケースが珍しくない。問うてみると、圧力の前で自由に発言できないというのが大方である。

 諸問題で根強い少数意見に苦慮することが多いが、千人もの会員からなる任意団体では、種々様々な考え、意見があるのは当然であり法的権限等無縁で、ボランティアで構成される役員会は、最終的な一致を見るための作業が実に重く、しんどい思いを余儀なくなくされる。

 少数意見あってこその多数意見である。同等に耳を傾け吟味する必要がある。それを踏まえて、最終的に一致に至るのが理想でありその決定には、全員一致で誠実に対応することが求められるのである。

10.機械は故障する 人間は間違える

 人間の愚かさの象徴とされる古代文書に記された「バベルの塔」の物語を読み返してみた。(註1)

人間の英知の結晶として天まで届く塔を建設しようとした。途中で言葉の問題で混乱が生じ頓挫した。

 もう一つ、一世紀後半に書かれたと思われる文書に、このようなたとえ話がある。(註2) ある大規模農業経営者が想定外の大豊作に恵まれた。保管場所に困るほどであった。悩んだ挙句、「今の倉庫を壊して新しく大貯蔵庫をつくって収穫物や全財産をしまおう。これでもう先行き困ることはない。飲み食いして楽しくやろう。」と言い聞かせた。

その時「お前の命は今夜で終わる。それらの宝物は誰のものになると思うか。」という天の声が聞こえた。

上記二つの物語は、人間の愚かさと傲慢を象徴する話として興味深い。人間は間違える存在であり、機械は故障することがあるという大原則を無視し、その誤りを指摘する声を吟味することをせず、絶対安全などと言う神話を捏造する人間の傲慢と愚かさ。

 権威ある学説が後にその誤りが指摘されることは珍しいことではない。原子炉が暴走すると手がつけられなくなるということは以前から指摘されてきた。科学が万能であるかのごとく錯覚しあるいはさせられ、目先の利益を追い求める時人間の愚かさが証明される。

 今日もテレビでは原発を推進してきた御用学者たちの解説を放送している。

註1.2の原典はへブル語、ギリシャ語であり難儀なので日本語訳に寄った。

2000.7月大5回アジア工芸展・バベルの塔

Img_6522

『河野美代子からだの相談室』
ここをクリックすると私の体の相談室と著書の販売があります。
ぜひ覗いてみて下さい。



広島ブログに参加しています。このバナーをクリックすると、
私のポイントになります。ご協力よろしくお願いします。広島ブログ

|

« ベランダの花 | トップページ | 兄の文章から② »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ベランダの花 | トップページ | 兄の文章から② »