緊急避妊薬のOTC化に反対します。
もうこれまで何度も何度も言って来たことなのですが。懲りずに、言います。緊急避妊薬のOTC化(薬局で自由に買えるようになること)についてです。緊急避妊薬は、もう説明はいらないとは思いますが、念のために。レイプされたとか、コンドームが破れた等のハプニングがあり、今はまだ妊娠は困る、産むことはできないという時に、72時間以内に産婦人科に行けば、緊急避妊薬を処方してもらえると。でも、それは100%ではなく、約85%くらいの確立で妊娠を防ぐことができるというものです。
この度のクリスマスイブの翌々日の月曜日には、二人の方が緊急避妊薬を求めて来られました。うち、お一人は、緊急避妊薬が二回目と。あら?一回目の時にドクターからピルを勧められなかった?と尋ねると、勧められたと。でも、それを取りに行きそびれているうちに、今回のことになったと。彼には、コンドームを使ってと言っても使ってくれないと。もうお一人は、なんと緊急避妊薬が4回目だということでした。それも、今年の8月から立て続けです。相手はずっと同じ男性と。あなたがこうして緊急避妊薬を取りに来ていることは、彼は知ってる?と私は尋ねます。こんなことを繰り返してたら、あなたのホルモンはぐちゃぐちゃになってしまう。もうきちんとピルで避妊をするようにした方がいいねと言いました。今度出血があったら、その日からこれを飲んでと、低用量ピルもお出ししました。
次の表は、私のところで半年の間に緊急避妊薬を求めてきた人たちの統計です。



緊急避妊を求めてきた人たちの中で、レイプされた方というのは、4%でしかありません。45%が避妊しなかったというもの。コンドームが破れた、外れたというのは、一見気の毒に思いますが、やはりちゃんとしたつけ方をしていない、原則を守っていません。外す時に手で押さえて外すというような基本的なことです。しっかり説明書を読んでというのですが。そして、この中の二人の方が緊急避妊薬を飲んだにも関わらず妊娠し、結果、人工中絶を受けています。
そもそも、日本で緊急避妊薬が認可されたのは、こうです。日本の医療行政は世界の中で、こんなに貧しいのです。

それまで認可されなかったから、私たちはそれまで中用量ピルをドーンと、4錠も飲んでもらうという無茶なことでしのぐしかありませんでした。飲んだ人は強烈な吐き気で、げーげーはきながら耐えるしかなかったのです。やれやれやっと認可されたと思ったら、ものすごく高い値段を付けられました。当時は、15000円くらい。(今はジェネリックができているので、約10000円で処方できます。)値段を高くすれば、乱用されないだろうと。その当時、この薬を認可することに反対の人たちは、「こんなものを認可すると若い女が後で薬を飲んだらいいじゃないと、セックスをしまくって、社会が乱れる」と言っていたのです。
そんな時、イギリスから日本に来ている研究者の方にお会いして、このことを聞きました。その方は、日本の女性たちのことをとても心配なさっていました。
「イギリスでは、若い女性の人工中絶を減らそうと、国家プロジェクトを作ったと。そして、全国に「保健センター」を作って、そこに行けば、ピルも無料で、緊急避妊薬も無料で提供されると。でも、そこは公的な機関だから、休みの日はクローズされる。緊急避妊薬は時間の制限があるので、そんなときのためにスーパーマーケットのドラッグコーナーで自分で買って飲むことができると。それでも、その時には、教育がセットされないから、少し高くしましょうと。だいたい1500円くらいで買えるようにと。」
保健センターでは無料ですが、その時には、例えばこれからはピルをちゃんと飲みましょうとか、繰り返さないようにという教育がされます。それがないからと高くと言っても、それが1500円くらいなのですね。
私のクリニックは平和公園の近くにあるので、外国のツーリストがよく来られます。フランスからの旅行者の方が緊急避妊を求めてこられました。その方に、「フランスと同じ薬をお出ししますが、でも、高いですよ、一万円します」というと、どうしてですか?国では1000円ですよ、と嘆いて言われました。どうしてなのか、それはガバメントに聞いてくれと言うしかありませんでした。
緊急避妊薬のOTC化を求めて、「医者がもうけようとしている」と言った方がありました。とんでもない、こんなもので、私たちはもうけられません。だって、そもそも薬の問屋さんから私たちが購入するのが、高いのですから。購入するのと、ほとんど同じ値段で患者さんにお出ししているのですから。その上で、なぜ緊急避妊を必要とすることになったのか、今回はお出ししますが、こんなセックスを繰り返してはダメだと、こんこんとお話しします。時には、カップルの二人の関係の見直しを求めることもあります。だって、男性とまったく避妊の話もなく、妊娠したらどうしようかと言う話もなく、避妊もない性交をして、あとで一人で心配になってクリニックを訪れるという人が大変多いからです。
長くなりました。このお話し、明日も続きますね。
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