小山祐士作「神部ハナという女の一生」
今日は、午前中は呉で「にんしんSOS広島」の研修の講師をしました。私は、ここの顧問をしています。今年度は、4月から10月迄の半年で569回の相談がメール、電話で寄せられています。日頃は、相談員さんが困った、またはわからない時に随時相談に乗ってきましたが、今日は、まとめて日頃の疑問などに詳しくお答えするという形での研修でした。
例えば、ピルを飲んでいるのに、生理が来ないとか、妊娠検査薬で薄く反応がでた時には、どう考えたらいいのかとか。ピルの種類による違いとか。やめた後のホルモンの戻る期間とか。これは、飲み始める前にその人の月経がどうであったかによって異なることも。また、月経が不順な人のその原因、ダイエットによって無月経となった場合、また、若い人にとても多い「PCO」多のう胞卵巣についてであるとか、それらを詳しくお話ししました。相談員の方たちがしっかりした知識で自信をもってお答えしてあげることが何より大切ですので、今日の研修はお役に立ったのではないかな?と思います。また、深刻なケースについても、相談員の皆さんの適切な寄り添いで、多くの女性たちが救われていることが、本当にうれしいと思います。
済んだ後、用意していただいたお弁当を食べながら、雑談をするのも楽しみにしていたのですが、コロナがまた増えてきていることで、それぞれ持ち帰って頂くことになりました。
広島では、性被害ワンストップセンターも、にんしんSOSも、DV相談センターも、LGBT相談も、エソール広島の生活相談も、ずいぶん活発に機能しています。私たちは機会あるごとに「一人で悩まないで」といい続けていますが、それぞれに関わっている人たちのおかげですね。
広島に高速を飛ばして帰って、それからすぐに今度は自転車で出かけました。「広島文学資料保存の会」主催で、朗読劇「神部ハナという女の一生」を観るために、袋町のひと・まちプラザへ。
尾道のそばの瀬戸内海の景色が美しい小さな島に住むハナは、困った女性の堕胎をして、訪ねてきた木下刑事につかまります。その刑事と彼女を中心として、堕胎をしてもらった女性や思い留まって元気な子を産んだ被爆女性等が出て来ます。
いろいろな意味で、私には身につまされるお芝居でした。
「九人の子どもがみんな揃って、ようでけて丈夫に育っとるいうんで、優良多子家庭じゃいうて、厚生省から表彰されたりしたんですがの。優良多子家庭じゃいうて宝物見たいにほめそやしておきながら、一方じゃ戦を進めて行きんさって、子どもたちを、次々にみんな殺しんさった。」
「次々にみんな殺した、と言うと・・・?」
「この年寄り一人残して、みんな死んでしもうたんですわい。上の三人の男の子は陸軍にとられ、まだこまかった四男まで少年航空兵に志願し、みんな、あっちこっちの戦争で戦死し、残ったもんは、みんなピカで死んでしもうたと見んさい。ようもようも、こがいにあたし一人が生き残ったもんですわい。」
「でも旦那さん、若い娘さんに・・「いいわ、いいわ、おろして戴けないとしたら、生きておれないですもん、いいわ、あたしァ死ぬけん、あたしァ、この前の海に飛び込んで死ぬるわ」そがいに言うてワンワン泣かれてみんさい。可哀そうで、いとおしうて、たとえ自分は地獄へ行ってもええと、ひとつ助けてやろうかいの、という気持ちになりますぞ。・・」
結局ハナさんは堕胎罪で実刑判決を受けます。が、その半年後、白血病を病み、刑務所から市立病院に移され、そこに木下刑事がお見舞いに行きます。涙を流して喜んでくれたハナは見違えるほど衰弱しています。枕元には、誰が持って来てやったか、コスモスと野菊の花が飾ってありました。
「あたしァ刑事さん、本当は早よう、あの世へ行きたいでがんす。主人や、可愛い九人の子供が、次い次いに顔をのぞいして、「ハナや、早よう来いや」「お母さん、一人で苦労ばァせんと、早よう来んさいや」「お母さんむごい、世の中にいつまでも居らんと早よう来んさいや」言うて・・、呼びに来てくれるんで・・。(尺八の調べ 静かに・・)ほーら、主人が、尺八を吹いて・・ええ音色で・・。」
そうして、木下刑事に見守られて、彼女はその生涯を閉じます。
木下刑事の役は、私の高校の演劇部の先輩、板倉勝久さん、どんな障害がある子が生まれるか怖くて、一旦はハナにおろしてくれるようにたのんだけれど、思いとどまって元気な子を産んだ被爆者の女性の役は、いつも「8.6ヒロシマ平和の夕べ」でメッセージの朗読等で協力して下さる高山いづみさんでした。板倉さんも、ハナ役の土屋時子さんも、学生時代からずっとずっと演劇を続けていらっして、本当にすごいし、うらやましいことです。
そのあとで、第二部、「小山祐士の魅力と劇世界を語る」広島大学名誉教授、ふくやま文学館館長の岩崎文人さん、土屋時子さん、板倉勝久さんのお話しがありました。そもそもラジオドラマとして作られたこの名作について、また、小山祐士についての原爆をテーマとした反戦、反原爆のお話しはとても魅力的で、小山祐士の戯曲集を買って読みたくなりました。
ちょうど、時を同じくして、この「神部ハナという女の一生」を発展させた「泰山木の木の下で」の劇団民芸公演が市民劇場で上演されます。私は、3日の土曜日に観に行きます。
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