「ゲノム医療~卵巣癌を中心に~」
先週木曜日夜には、「産婦人科におけるゲノム医療の展開~卵巣癌中心に~」の研修を受けました。演者は岡山大学大学院医歯薬総合研究科病態制御科学専攻腫瘍制御学講座(臨床遺伝子医療学分野)教授の平沢晃先生。肩書長いですね。座長が読み上げる時に何回かかんでいましたよ。そもそもは慶応大学卒の産婦人科医で、今はがんの研究者でいらっしゃいます。
ゲノムとは遺伝と染色体の組み合わせた言葉で、遺伝子の集合体であるDNAのすべての遺伝情報のことです。先進医療としてのゲノム医療とは。
現在がんの約1割は遺伝性とされています。婦人科で言うと、卵巣癌は15~20%が遺伝性であると。
がん患者の腫瘍部および正常部のゲノム情報を用いて、治療の最適化、予後予測、発生予防(未発症も対象となります)を行うこと。これは本人のメリットとともに、血縁者のがんの予防にもつながります。
特に婦人科では、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群:HBOC」が今、注目されています。社会的にはアメリカのアンジェリーナ・ジョリーの手術で一気に関心が広がりました。HBOCを発症する遺伝子はBRCA遺伝子と呼ばれ、BRCA1とBRCA2があります。この遺伝子を持っている人の約70%が80歳までに乳がんにかかり、20%弱が卵巣がんにかかるとされています。このほか卵管がん、腹膜がん、すい臓がん、男性の乳がん、前立腺がんなどの罹患率が高くなります。この遺伝子は、50%の確率で子どもに遺伝します。今日本人は400人に一人がこの遺伝子を持っているそうです。ユダヤ人は40人に一人の確率だそうです。
今では卵巣がんにかかった場合、BRCA遺伝子の検査が保険収載されました。さらに、BRCA遺伝子を持っていることが分かった場合、予防的な乳房切除(リスク低減乳房切除術)や卵巣切除(リスク低減卵管卵巣切除術)も保険収載されています。
親戚や一人のお嬢さんが乳がんと卵巣がんで亡くなって、検査をするとお母さんと、もう一人のお嬢さんもBRCA遺伝子が陽性で、悩まれた上お母様は手術を受け、お嬢さんは、検診を密に受けながらお子さんを産み、その時点でそろそろ手術を受ける決心をされたという事例もお話下さいました。卵巣がんを発症するのは若くて、35歳過ぎから警戒したほうが良いとのことでした。もしその遺伝子を持っていることが分かると、それはそれは大変に悩まれる所でしょう。
しかし、発症予防ということを考えて、卵巣がんにかかった方がBRCA遺伝子を持っているかどうかの検査をお勧めすることを積極的に考えた方がよいということでした。
この頃、婦人科では、ホルモン療法やOC、LEP製剤や貧血の研修が多くて食傷気味でしたが、今回のはがんの話で、久々に硬派の話を聴いたように思いました。
しかし、会場は西区のサンプラザで、帰りのタクシーを頼んでいたのに、行列が出来ていて、ちょっと中に入っているうちに、誰も並んでいる人はいなくタクシーもいなくて、えらい目に遭いました。会場の人に聞くと、ここはタクシーが通らないところで、アルパークの入口まで行けばと言われて暑い中歩いて行ったのですが、そこにも全くタクシーはおらず、又歩いて会場まで帰るという、汗びっしょりで全くえらい目に遭いました。この会場は車で自分で行くなど、気を付けたほうがよさそうです。
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