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中三同士の妊娠・中学校長会の機関誌から①

 クリニックの本だなにあるはずの探し物をしていて、どさっと一塊の本たちを落としてしまいました。一冊ずつ元の本だなに戻しながら、ふと、これは何だ?と思ったのです。20年前の発行の全日本中学校長会の機関誌の様です。中を見ると、性教育特集がしてあり、私も書いていました。「産婦人科医療の現場から教育現場に望むこと」。ここに書いたことはすっかり忘れていましたが、この少女と彼のことはしっかり覚えています。読み返してみて、20年前と今はまったく変わらないし。今もこのまま通じると思いました。特に、男子生徒に私が言ったこと。今、ここに転載したいと思います。

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事例については、転載することはしません。が、中三同士の妊娠。彼女は学年で成績が一番。生徒会活動を頑張っています。彼はあるスポーツが優れていて、県代表にもなってそのスポーツで高校に推薦入学することがほぼ決まっていました。産んで育てたいと必死に訴える彼女。彼女の側の親も何とかならないかといろいろと考えても、男性側は中絶をと強く望んでいました。どうにもならず、結局中絶することを選択せざるを得ませんでした。長時間話し合った挙句です。そう決めた後。私は、彼を呼び話しかけました。以下、私が書いているのを転載します。

「あなたは、彼女のことをとても好きになって、そしてセックスしたのだろうけれど、あなたは何より知識不足、力不足だったと思うよ。まずあなたに本当に知識と力があったなら、彼女妊娠させはしなかった。ちゃんと避妊が出来たはず。それがいいかげんで、結果、彼女妊娠させてしまったね。それが第一点。

 それから、もしあなたに知識と力があったなら、彼女ここまで放っておかなかった。彼女がおかしい、生理がない、妊娠したんじゃないかとあなたに言ったとき、あなたはだれか大人に相談するなり、彼女の手引っ張って産婦人科に連れて行くなり、何らかの行動をとらなければならなかった。それを何にもしないで、ここまで放っておいた。これが第二点。

 何より彼女が赤ちゃんを産みたいと言っても、あなたは引き受けることが出来なかったね。僕は中学を卒業したら働くから、二人で頑張ってその子を育てよう、と言ってあげられなかった。申し訳ないけど、その子はおろして欲しいとしか言えなかったね。これが力不足第三点。

 それから、こうして彼女は泣きながら中絶すると決心しているけど、じゃあそのお金は?中絶と言ってももうギリギリだから、彼女は四日間も入院しなきゃいけないし、お金も三十四万円もかかる。それは中学生のあなたにはとても出すことはできない。親に頼むしかないでしょう。お金すら用意できない。これが第四点。

 要するに、あなたは何にもできない。何もないのに事態はここまで来てしまっている。そういうことだね。あなたはセックスをする資格がなかったということだと思うよ。それをちゃんと自覚しなさい。厳しいことを言うようだけど、これを自覚してくれないとあなたはまたやってしまうかもしれないからね。おそらくあなたはちゃんと高校生になるだろうけど、また彼女を、または他の女性を妊娠させて、そして申し訳ないけどおろして欲しい、なんてことは、絶対に繰り返して欲しくないからね。だから、これだけのことを言っておくよ。」

事態は急を要する。入院の準備のために彼女だけ部屋に残ってもらっていると、彼女が言った。

「先生、お願いがあります。」

まだ長いので、二・三回のシリーズになりそうです。明日に続きます。

 

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