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「からだ・私たち自身」③

「からだ・私たち自身」が日本で翻訳出版された当時、私はまだ土谷病院の勤務医でした。1990年に今のクリニックを開業し、後に医療法人としました。

 本に書かれているHIV・エイズは、まだこの頃は病気が知られ始めた頃でした。その後に大変な事態となって。特に、血友病の方たちへの輸入血液製剤により感染させられた方たち。その多くの方たちが亡くなりました。又、同時に男性同性愛、ゲイの方たちへの差別偏見はすさまじいものでした。女性の感染者へも。まるでふしだらな人がかかるかの様な言われ方でした。

1990年広島エイズダイアル発足。私はその代表を務めました。ずいぶんといろいろなことが会って30年経った今、早くに見つかれば寿命を全うできる感染症となりました。

 今、私は診療の傍ら、バッシングに向かいながらも、性教育の講演にあちこちでかけています。この間、私への誹謗中傷に対して、名誉棄損の裁判も闘いました。人間と性教育研究協議会、いわゆる性教協広島サークルのメンバーたちにいつも教えられ、支えられています。今年夏には、全国セミナーがこの広島で行われます。

 自然な成り行きでしょうか。診療の場では、性同一性障害の方たちの来院も増えてきました。今、100人近くの方たちの治療を行っています。FTM、MTF両方の方たちへの治療です。時々裁判所への診断書を書きます。これは、ものすごいもので、一人の方について原稿用紙50枚ほどになります。小学校入学前の子どもさんの相談も。思春期の子にとっては体が望まない性へと変化するのはとても苦痛です。それにどう対応するか・・。性的マイノリティーの方たちは、30年前よりは大分生きやすくなったとは言え、当事者にとっては、まだ自死率も高く、とてもしんどい社会であります。

 私はまた、NPO「性暴力被害者サポート広島」の理事もしています。当NPOは、今、広島県の「性被害ワンストップセンター」の委託を受けて、様々な職種の多くの女性たちと共に性暴力に向かっています。ここでは、性暴力の被害者に対する日本の法律の情けなさ(明治時代の男たちによって作られた法律がほんの少し変えられただけで、今も大手を振っています。)伊藤詩織さんの事件に見られるように、世間の被害者への目に絶望的になることもあります。

同時に、「にんしんSOS広島」の顧問もしています。ここには、たくさんの妊娠についてや自分のからだについての悩みが寄せられ、アドバイスを求められたり、研修の講師をしたりしています。

 そして、私は「特別養子縁組のあっせん事業者」でもあります。特別養子縁組は、1987年に民法に導入され、この本の出版と同年1988年に斡旋事業ができるようになりました。私はこの法律ができる前の1985年からやむを得ずのあっせんをしています。そして、2018年、法律の改正により、民間のあっせん事業者は届け出制から「許可制」となりました。許可を得るためには、とても厳しい条件が必要です。それらの条件をクリアして許可して頂いていますが、私は赤ちゃんの命でお金が動くのが嫌で、すべてボランティアで行っています。だから、養親の家への家庭訪問等の交通費を含めて、自腹です。広島で生まれた赤ちゃんですが、養親は全国の方たちですので、あちこち動くのに、大分お腹が痛くなってきました。大金が動く他のあっせん事業者の方々への大きな批判を持っていますが、一人の力では、どうにもならないものです。

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直接産婦人科医療と関係はないのですが、私自身被爆二世であることの因縁から、16年前から被爆者や被爆二世の方たちと「8.6ヒロシマ平和の夕べ」の会を立ち上げ、毎年集会を行っています。ここで知り合った多くの方たちともかけがいない大切な出会いでした。はだしのゲンの中沢啓治さんや、京都大学の小林圭二先生や、ずっこけ三人組の那須正幹さん等すでに亡くなった方もおありです。私自身が被爆二世であることは現実なのですから、これも体が動くかぎり続けるべきことでしょう。

以上のようなことで、自分自身の30年を振り返ってみました。色々だったなあと改めて思います。

いつかすべて引退して、孫の世話でもしながらのんびりできる時が来るだろうか、もしかして死ぬまで働き続けるのでしょうか。そんなのは絶対嫌ですよね。

23日、多くの皆様とお会いできることを楽しみにしています。

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