「からだ・私たち自身」②
昨日ご案内した「からだ私たち自身」Web公開記念シンポジウム「私のからだは『わたし自身』のものになったか―ー30年後の検証」の申し込みは、以下のアドレスにお願いします。ここの「チケットを申し込む」から申し込んで下さいませ。
https://karadabt2022.peatix.com/?fbclid=IwAR3eTLIOaDU_EPdfjfEiZSsDSit7fHIJG4O5qzqLk772snoAWxrqI7wYjj4
本当に久しぶり十何年ぶりかにこの本を開いてみました。でっかく重い本です。クリニックの体重計で測ってみると、2.5キロもありました。
裏表紙です。表裏とも今は亡き宮迫千鶴さんの作品です。
帯です。
本の発行に携わってきた人たちの写真も収録されています。
この本の初めのページに、日本語版発刊にあたってと、私の文章が出ています。その一部、途中までを再録しますね。
1.女から女へのメッセージ
「からだ―私たち自身」の校閲は、私にとって楽しさと苦痛とが同居する作業でした。米国と日本の社会的相違はあっても、おそらく全世界の女たちがおかれている共通した状況―女の心とからだーの偏見や神話、そしてそれにもとづいた差別、などを、この本は見事に解き明かしてくれています。日常の診療の中で漫然として感じていたそれらが、決して女たち自身の責任ではなく、歴史的、社会的に作られたものであることを、私に示してくれました。それは、私にとって新鮮で楽しい作業でした。さらに、この本の著者たちの、やさしさと包容力。病む人たちへ、さらには、社会の中で差別され続けている貧しい人々や、有色人種、少数民族の人々などへの細やかな心使いのみならず、はっきりと差別の構図の解明と、差別者への糾弾をも行っています。それは医師としての私に、刃を突きつけるものでもありました。「お前は、これまで何をしてきたのか」と。
診療の場で、常々私は「女は、自分のからだを知らない」「女は、がまんをし過ぎる」・・と感じ続けていました。例えば、性器に何か異常を覚えても、性器のどこがどうなっているのか、はっきり名称を使って訴えられる人は、大変少ないのです。例えば子宮筋腫からの過多月経によるひどい貧血でも、ふらふらになるまでがまんをし続け、やっと病院に来た時には、すっかり心臓まで悪くしている人が後を絶ちません。私は、「もっとからだを知ろうよ」「そんなにがまんをするのはよそうよ」と女たちに言ってきました。しかし、それらは、決して彼女たちの責任ではなく、そうせしめているもの・・・女性が自らの性器を見、さわり、知ろうとすることのタブー自分の健康よりも家族の日常生活の継続を優先させなければならないと考えさせられてきたもの、それらに立ち向かわなければ、どうしようもない、個々の女の力のみでは、とうてい解決しないことなのでした。
この本の著者たちは、個人が知識を得、もっと自己主張することを教えてくれるのみならず、女たちのネットワーク作りを強く勧めています。悩む者同士語り合ってみれば、自分の抱えている問題が、決して一人の特殊な問題でなく、女たちが共通して持っているものだと気づき、それに立ち向かう勇気を与えてくれるだろうと。一人では困難でも、みんなの力と、励ましがあれば・・・。
性器のコンプレックスや、性の悩み。これは、あらゆる年代の女たちに共通ではあっても、最も個人的で、語りにくいこと。自分はちっとも楽しくない性を、夫の性欲のためにのみ続けてきた高齢の女性たち、避妊の主張すらできないままに、彼に体を開いている若い女性たち。根底を流れているものは同じなのです。そのように女たちに教えて来たものは、一体何なのか。まさにそれらを、女たちは語り合わなければならないし、またその輪を拡げ、身近な女性たちや後輩たちに伝えて行かなければならないのだと本当にスッキリと教えてくれました。(以下略します)
若い私が書いていること。今もちっとも変わらない。いえ、むしろ後退しているかもしれません。この本が出版されたのが1988年。この頃は、まだ性教育に希望を持って前向きに取り組んでいました。その後、日本で低用量ピルがやっとやっと認可されたのが、1999年。国連加盟189か国のうち、びりでした。そして、2003年間からの性教育バッシング。とてもつらい闘いでした。私は裁判までして闘ったのですが、今もまだバッシングは続いています。緊急避妊薬がやっと日本で認可されたのは、2011年。世界中のラスト6か国となってからでした。イラン、イラク、アフガン、ペルー、北朝鮮、日本。それも、他国ではほとんど無料か安い値段で投与され日本ではひどく高価に設定されました。子宮頸がん予防ワクチンが日本で認可されたのは、世界中の100か国めでした。アッという間に積極的勧奨が取りやめとなり、たちまち接種されなくなって、今や世界中で日本は子宮頸がんの多発国となってしまいました。性暴力の被害についての明治以来の刑法の問題も。
日本の女性行政はこんな貧しい状況にあるということは、ほとんど知られていません。それらも、宗教団体や、「日本の伝統的家族の形態を」という輩、夫婦別姓や非婚の出産に反対する人達に政治が動かされている証・・。
政治をしっかり見続けることがいかに大切か、と思うのです。女性行政は、森友、加計、桜、それらと同列にあるのですが・・。
これらを当日、私がちゃんと話ができるでしょうか。もう一回、これについて話したいと思います。
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