核兵器禁止条約発効によせて「 きのこ会」の声明
核兵器禁止条約発効に寄せて、様々な団体や個人から声明が発表されました。いずれも感動を持って読ませて戴きました。
中でも、きのこ会(原爆小頭症の被爆者と家族の会)が、広島市役所で記者会見をして発表された声明が、何より胸を打ちました。涙が止まりません。きのこ会の事務局長である平尾直政さんが、フェイスブックにその声明と、読みやすくした文章を載せていらっしゃいますので、ここに転載させて戴きます。胎内被爆者である方たちの、これまでの苦難の人生に想いを馳せながら、核兵器禁止条約の発効を喜びたいと思います。そして、すべての核兵器保有国と、日本もこの条例に参加するよう、求めたいと思います。
核兵器禁止条約発効によせて
原爆小頭症被爆者と家族の会である「きのこ会」は、核兵器禁止条約が発効したことを全面的に歓迎します。
核兵器は単に「巨大な威力を持つ爆弾」ではありません。ひとの細胞を遺伝子レベルで傷つける人類史上類を見ない「悪魔の兵器」です。被爆の後、生き残ったと思っていた者の命をも奪います。核兵器から発せられる放射線は、がんなどの致命的な病を誘引します。しかし、それがいつ発症し、いつ命を奪うのかはわかりません。いわば「見えない時限爆弾」を人体に埋め込むようなものです。しかもそれは被爆から75年たった今もなおかつ被爆者たちを苦しめ続けています。
核兵器の放射線は、戦場から最も遠いはずの、母親の胎内で芽生えた小さな命をも傷つけます。原爆小頭症は、妊娠早期の胎児が核兵器の強力な放射線にさらされることでおこります。放射線の影響で、原爆小頭症被爆者の多くは、生まれながらに脳の発達などが妨げられ、知的障害、内臓疾患、股関節の異常、指の欠損など様々な障害を負いました。もし母親のお腹の中で被爆することさえなかったら、彼らはまったく別の人生を歩んでいたはずです。
私の兄は爆心地から900メートルの木造家屋の中で胎内被爆した原爆小頭児です。まもなく75歳になりますが、今も簡単な計算すらできません。買い物ではどんな小さなものでも必ずお札を出します。お札を出せばお釣りが返ってくるからです。兄の財布は小銭でいっぱいですが、彼はそれを使うことはありません。小銭の使い方がわからないからです。
あるとき兄は私に言いました。「わしが原爆にあわんかったら、どうなったと思う?」。私は答えに困りました。
知的障害のある小頭症被爆者たちは、自らの口で「核兵器の廃絶」とは言いません。しかし、その存在そのもので、核兵器の非人道性を訴えています。
核兵器禁止条約は、その前文において「全廃こそがいかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である。」と記しています。この前文のメッセージを、核兵器保有国は真摯に受け止めてください。「唯一の戦争被爆国」を自認し、非核三原則を掲げる日本国政府は、核兵器禁止条約に署名・批准をしてください。
原爆小頭症の子どもと家族の悲劇を繰り返さないために、核兵器禁止条約が実効性を伴うものとなることを心から願います。
2021年1月22日
きのこ会(原爆小頭症被爆者と家族の会)
会長 長岡義夫
会長 長岡義夫
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