情けない国日本④SNSによる性
診療をしていて、ここに来て急に「SNS」という物の不気味さに呆然としています。産婦人科の現場ですので、私の所では「性被害」に遭った人なのですが。被害に遭ったのは、中学生も高校生も大学生もです。「何も知らなくって被害に遭った」というのとちょっと違うのではないかと思える例が増えているのですね。自ら望んだように「繰り返す」人も。
例えば、とても怖い目に遭って緊急避妊薬を取に来て、処方。ともかく妊娠しないですみました。私は緊急避妊薬を処方した人には必ずこれからも繰り返す可能性があるのか否かを問います。SNSというのは、会おうということにつながる。会う目的これはもうsexなのだと。こんこんと話します。そうして痛い目に合っていてもまたSNSは続けるというのですね。
「大丈夫です、会うだけです。私はそのつもりはありませんから」と言った人がいましたが、すぐにまた来ました。「やっぱり緊急避妊薬をまた出して下さい」と。「あなたはは会うだけ、SEXはしないと言ったよね。」そうだったけど、自分はそのつもりだったけど・・と。それに、「緊急避妊薬は、コンドームをちゃんと付けていたけど、ずれてたから不安なので」と。ああ、違うな、そう語る口調、表情から、これは違うと分かります。何しろ来年で産婦人科生活49年です。多くの若者と話して来てこれは本当のことを言ってるかくらいわかります。
それくらいだった薬は要らない生理が来るのを待ちなさいというと、今後のために売ってほしいと言います。「違うよね、あなたが私に言ったのは本当のことではないでしょう?本当のことをそのまま言ってみて」というと観念したように、避妊のないセックスをしたと。言いました。SNSでその日に会った人と。この前とおんなじことを繰り返しているのですね。
それが危ないこととか、危ないというのは単に妊娠が心配とか性感染症にかかるかもとか、そういうことだけでなく、「知らない人と密室にこもることは命危機にさらすことなのだ」ということが分かっていません。私そんなことをしている女性で、もう二人殺された人がいるのですね。警察から報せが来て初めて私も知ることになるのですが。
セックスというのは、すべての警戒心を解き放って、双方が心から望んですること。裸の心と心で向き合うこと。そうしてこそ、素敵なセックスとなるのだということを、私は若者に伝えたいと思い、実際性教育の講演の中ではそう言及をしています。その彼女は、私から二度目の緊急避妊薬をもらい、内服して、でもまたSNSは続けるといいました。ピルはのまないと。セックスした後だけ緊急避妊薬、アフターピルをのんだほうがいいと。それだったら男からそのお金をもらえるからと。
実はそんな人がひとり二人ではないのです。ある人は、緊急避妊薬を飲んで妊娠しなくて済みました。それからすぐにまたSNSで知り合った違う人と性交をし、でもなぜか今回は緊急避妊の内服をしなくて妊娠してしまいました。相手に告げると、「自分の子ではない」といわれブロックされてもうコンタクトが取れなくなりました。仕方無く人工中絶です。相手の同意書をもらうことができないのでお母さんに相手の所にサインをしてもらいました。手術代は母親に出してもらったと。中絶の後の診察の時、「これからは?」と聞くと、やっぱりSNSは続けるというのです。
SNSって、よほど魅力があることなのでしょうか。この二人とも、大学生でしっかりした家庭で育った人です。
青春時代というのはいろいろと寂しかったり、孤独だったり、辛かったり、人が恋しかったり、それらを通り抜けてしっかりした大人になるものだと思います。今はその孤独をSNSで癒す。そんな時代なのでしょうか。でも、癒されるどころか、それによってかえって傷ついてしまっているのですが。
私はそこに、性教育の不在を見ます。なんにも教育されていないと、性というのはそんなものだと思うのは無理もないと。だって、そんな出会ってすぐのセックスが、動画でさんざん発信されています。見ようと思ったら、いくらでもそんなセックスが見られるのですね。基本的なことを何にも教わらずにYou Tubeでみて、性というのは、そういうものと思うのは仕方ないことなのかもしれません。
もういい加減世の大人たちは、本気で若者の教育について考えないと、とんでもない社会になっています。それどころか、大人たちが、出会った若い人に薬物を飲ませてレイプしたり、子どもに手を出したりもしているのです。
12月22日に文科省が発表した、2019年度に公立小・中・高校の教職員がわいせつ行為で処分されたのが273人いたと。場所はホテルが37人教室29人、保健室、生徒指導室等が28人と。学校現場ももう安全な場所ではなくなっているということなのですね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ca52541cfa602914ba080641137dc3180cd521a7
学校が性教育に取り組むということは、教職員も共に勉強するということでもあります。文科省も、こんな発表するのですから、もういい加減いつまでもバッシングを続けていないで、性教育をすべしと方針転換しないものかと思います。今では、ごく一部の、管理職が文科省や教育委員会のいうことよりも、やりましょうという決断したところだけ、子どもたちに真正面から知識を伝えることができるというこんな状況なのですから。
私は、この休み、ゆっくりできるかと思ったら、夫が手が使えないので、一人で掃除や買い物や料理に奮闘しています。いつも大分でお正月をしていたので、重箱やお雑煮用のお椀など、道具が広島になくって困っています。最低限の物を買いました。夫のケガについては、ブログに書いたことがばれてしまって・・。手がパンパンに腫れてえらいことになっていますがそれでも病院に行こうとしません。
クリニックの、青野さんのお正月用のお花です。青野さんには、一年間、ずっとクリニックの一隅を照らして頂きました。感謝しています。
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