「朝が来る」の続き・特別養子縁組について
明日は、妊娠SOSのスタッフの研修会での講師を務めます。少し苦労して2本のスライドを作りました。
昨日は、映画「朝が来る」について思うことを書きました。
これは、私が昨日手続きをした特別養子縁組について、家庭裁判所に提出する上申書の一部をここに掲載します。養親になりたい方の事情、やむを得ず、赤ちゃんを養子として送り出す人などの事情について、裁判所には詳しく述べますが、もちろんここでは割愛させて頂きます。
私は、広島市中区紙屋町にて医療法人河野産婦人科クリニックを開業しています。
1972年に広島大学医学部医学科を卒業し、同年医師免許取得、広島大学医学部産科婦人科学教室・土谷総合病院などの勤務医を経て、1990年に当地に開業しています。開業以前の勤務医の頃から、まだ女性の産婦人科医が少なく、女医を求めてか若い人の受診が多く対応に苦慮することもしばしばでした。そのような中で、性教育の必要性を痛感し、診療と並行して、性教育についての講演や本の出版もしてまいりました。
それらにより、さらに若い人の受診が増えました。受診する若い人の中には、望まない妊娠をし、だれにも相談できず一人悩んでいる内に、中絶の時期を失するという人もあります。中には、出産しなければならない、でも育てることも不可能という事もあります。
一方で、不妊で挙児を望み、いろいろと治療をしても、どうしても妊娠がかなわなかった、でも、子育てをしたいという方も患者さんとしていらっしゃいます。
その間を取り持って、特別養子縁組のお世話をすることもしてまいりました。私は、以前から厚生労働省、広島市への届け出をしている特別養子縁組あっせん事業者であり、制度が変わって許可制となっても、2018年12月4日付で広島市から特別養子縁組あっせん事業者の許可を頂いています。
この度の、Iさんご夫妻と〇〇ちゃんの特別養子縁組の申請につき、あっせんをした者として、その経緯のお話をします。
まず、Iさんから電話で特別養子縁組の養親の希望のご連絡があった時、一度、当方に患者さんとして受診して頂きたい旨お話しました。私は、特別養子縁組のあっせん事業者ではありますが、本業は医師であり、日々の診療があります。自分の患者さんのうちで、困った状況にある人の赤ちゃんと実母のためにのみ斡旋をしていますので、全く宣伝もしていませんので、あまり知られてはいません。Iさんは、厚生労働省のサイトで当方のことを知られたそうです。一度、いらっしていただきたいとお話ししました。原則、養親希望の方には、患者さんとして来院していただいて、お話することにしていますので。
(中略)
ご夫妻は、お二人ともやさしそうで穏やかで、また子ども好きであり、お二人の親族もみんなが児を望んでいるということ、そして、子どものいる家庭を望んでいるので、養子縁組を希望しているという事がよくわかりました。
私は、順番を待って頂きたいこと、でも、その順番はいつ来るか全く分からない事。当クリニックでは、時々育てられない出産があるけれど、それはいつも突然のことで、予測はできない事をお話し、待って戴くことにしました。
まだ順番を待っている人もあるので、どこか他のあっせん事業者にも登録して、早い方にされたらとお勧めしました。
私は、前述したように、あっせん事業をしていますが、本業の診療がありますし、宣伝はしていません。診療の中で出会った人だけにやむを得ずあっせんしていますが、経費は一切頂いていません。ですから、あまり知られることもなく、他の事業者よりは特別養子縁組の成立は少数と思います。
私としては養子縁組をするのにはこだわりがあります。
やむを得ず育てられない出産をする人たちは、とても苦しみます。100%の人が、何とか自分で育てたいと言います。では、何とか育てられる方法を一緒に考えましょうと。例えば、学生さんであれば、児相に相談して、学校に行っている間は施設にあずかって頂いて、時々会いに行って、そうして自活できるようになったら子どもを引き取るかとか。何とか、実母の両親と一緒に育ててもらえないかとか。それがどうしてもかなわない時に初めて、養子縁組についてお話します。
それから、妊娠の相手の男性とはどうなのか、破綻しているのか否かも大切なことです。まだ付き合いが続いている間は、決して養子縁組をしてはなりません。もう、ずっと以前、もちろん私があっせんしたのではありませんが、養子縁組で子どもを手離した後、その二人が結婚して、子どもを返してと訴えたというニュースに接したことがあります。二人の仲が続いている場合には、そのようなことも考えられますので、養子縁組で子どもと離すことはしてはなりません。
それから、特に女性が若い場合、本人が自分で育てたいとの気持ちをもっていても、周りが強引に手放すことを勧める場合があります。これも、絶対にしてはいけません。生んだ本人の将来の立ち直りを考える時、本人が十分に時間をかけて冷静に考え、自ら結論を出すこと、それが何より重要と思っています。
そのような姿勢であっせんをしていますので、そう数もあるわけではありませんので、いつまで待って頂くかは、全く分からないと、その旨をお話しました。
(以下略します)
そして、この度養親として赤ちゃんを託したご夫婦は、共働きの方です。共に働く人は子育てをしてはならないなんて法もありませんし、その点がこの映画でとても残念なことでした。
明日はこれらに加えて、私がとても残念なこと、原則海外への特別養子縁組が禁止になっていることへの思いなども話したいと思っています。何よりも私は、海外の方たちに「養子を育てる」ということを学んだものですから。
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