子宮頸がん予防ワクチン・9価のワクチンについて
7月21日、9価の子宮頸がん予防ワクチンを日本でも製造販売することが承認されました。で、クリニックにも9価をという問い合わせが来ています。しかし、承認即販売ではなく、まだ国家検定など様々な手続きを経てから使えるようになります。ですので、もう少し待って下さいと対応しています。
昨日詳しい方に尋ねた所、国は、新薬に対してよりも、ワクチンはうんと厳しくなるのだと。まだしばらくは無理だろうと。
先日当院にある私が属しているグループからとのことで電話がかかってきました。名簿が業者さんに流出?と気分が悪かったのですが。
「9価のワクチンを個人輸入するつもりはありますか?」と。私は、
「そのうち、国内でも販売されるでしょうから、待ちます」
と答えました。調べてみると、それは個人輸入代行業者さんでした。私は、未認可の薬を個人輸入して自分で使うのは、その人の自己責任で勝手だと思っています。しかし、それを患者さんに使って、医療業務としてお金を戴こうとは思いません。もしものことがあった時には、国のバックがありませんので、かなりこわいことになるのではと思うからです。その業者はもし副作用があった時には対応しますとは言っていますが、それを詳しく読んでみると、適応されるにはかなりのハードルがありました。どんな薬にもアレルギーの人はいるものです。何より、まだ販売が正式に許可される前に使ったことの責任を追及されると、大変です。子宮頸がん予防ワクチンは、安全であることはわかっていても、ご承知のような大変な「副作用運動」が起こりました。それらに個人的に対応するのは、本当に大変です。
私も、早く認可してほしいと思っていますが、でも、もう少しのことでしょうから、待てばいい、そう思います。ただ、今高校一年生の方は待っていると無料の接種期間を過ぎてしまいますので、今許可されるのをうったほうがいいですね。
それから、9価のワクチンが定期接種、要するに無料でうてるようになるのかという問題です。これは、全くわからないとしか言いようがないと。今の所は、任意接種ということで進んでいるそうですが。これは政治の問題ですね。そもそも、まだ今認可されているワクチンでさえ、「積極的勧奨はしない」としている政治ですから。勿論、厚労省は、WHOや世界産科婦人科学会や世界婦人科腫瘍学会などから、早く勧奨を再会せよと勧告されていて分かっているのだと。でも、これは政治の問題として、官邸預かりになっていると。安倍さんがやれと言ったら、すぐにやれるのだけれど、それをしないと。今度、菅さんになって、それがどうなるかですね。
では、今更かもしれませんが、「9価って何?」。
子宮頸がんを引き起こすのは、人パピローマウィルス。それには沢山の型があります。中でも多いのが16型と18型。だから、その二つのウィルスに対してワクチンを作りました。それが2価のワクチンです。それに6型と11型を加えたのが4価のワクチンです。今、この二つが認可されています。ただし、4価の6型と11型は、がんを起こすのではなく、「尖圭コンジローマ」という性器にできるいぼを作ります。それらを加えたのですね。
「二つより四つの方がいい」と考えられがちですが。私は、これまでずっと「2価」をおすすめしてきました。勿論、患者さんや保護者の方の意思を尊重しますので、どちらもうっています。なぜ私が2価をおすすめしてきたか。4価の18型は、16型の半分しかワクチンの中に入っていないのです。16型、18型、6型、11型がそれぞれ、1、0.5、1、0.5ずつの配分です。私は、初め、どうしてイボの6型を1にしたの? 1、1、0.5、0.5にすればよかったのにと言いました。まあ、それには答えはありませんが。というのも、16型が作るがんは、おもに扁平上皮がんと言って、おとなしく、進行もゆっくりで、細胞診でもよく引っ掛かるし、治療しやすいがんです。それに対し18型は、腺がんと言って、進行も早く、検診に引っ掛かりにくく、放射線などの治療もなかなか効かなく、暴れん坊のがんです。私も腺がんには苦い経験があります。ちゃんと細胞診もして異常なしで、でも、ほどなく気づいた時には、腺がんの進行がんだったという方があります。ですから、18型が起こす腺がんをしっかり予防してほしいのです。
18型の抗体価は2価のほうが、4価よりもはるかに強いというデータがあります。しかし、これらはもう少し時間が経って疫学的に検討されれば徐々にわかってくるでしょう。それまでは、私は、治療すれば治るイボの予防よりも、何より腺がんの予防を考えて、2価をおすすめしているということです。
それから、2価はクロスプロテクションと言って、他の型のがんも、クロスして予防するということもわかってきました。16,18型だけでなく、類似型の31、33、45、58型などにも効果を及ぼすと。
私の後輩に、子宮頸がんのプロフェッショナルがいます。日本産科婦人科学会のシンポジウムに指名されて子宮頸がんの円錐切除とレーザー蒸散の発表をされました。彼,円錐切除の後に必ず2価のワクチンを接種して、再発を予防すると。彼の発表を小さな会でしてもらった時に、「4価ではダメかね?」という質問に、「4価にはクロスプロテクションがないから」と答え、私は私の想いを確信したのです。
でも、こういうことも9価が認可され販売されるようになると、お終いです。9価は16、18、31、33、45、52、58型のがんの予防と、それに加えて、6,11の尖圭コンジローマを予防するワクチンです。
出来れば、早く販売を認可し、定期接種にも組み込まれます様に。今や日本は、世界で行われているワクチン接種から取り残され、子宮頸がんは「日本も含めたアジアの病気。アジア人がかかり、アジア人が死んでいき、アジア人の若い女性の子宮がなくなる」とされています。ほんとうに、これから赤ちゃんを産もうとする若い女性の子宮摘出は胸が痛みます。
先日の夜のウォーキングの時に川の向いの相生橋から撮った原爆ドームです。相生橋は、Tの字になっていて、原爆投下の目印にしたのだそうです。原爆ドームは、4回目の保存工事が始まりました。今度の工事では、被爆当時のようにこげ茶色に塗られるという情報があって、それはどうなの?近づくと、今のままの色の方が、すごい迫力でいいのにと思ってしまいます。
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