「8.6ヒロシマ平和の夕べ」平和講演「核を持ってしまった世界へ 広島・長崎から、核廃絶を問う」森達也さん①
大型台風10号が広島にも暴風雨をもたらすと、でも、実際は風が強いくらいで、それほど大変ではありませんでした。九州方面の方、土砂くずれで行方不明の方かが出たそうで、心配です。それに、暴風雨だけでなく、大停電で大変なご様子。それに、釜山大変そうです。どうぞ、しっかり生き抜いてほしいと思います。
今日は、朝から公共交通機関がストップしているので、スタッフは出てこられませんでした。私は自転車なので、お昼前に出勤。一人なのですが、結構患者さんが来られて、とても忙しくしています。お薬を出したり、注射をしたり。でも、検査などはスタッフがいないと無理なので、お断りせざるを得ません。電話も半端なくかかってきて一人でキリキリ舞いしています。
その隙間を縫うようにですが。ブログを書きます。今年の「8.6ヒロシマ平和の夕べ」の平和講演。森達也さんのお話を今日と明日で掲載します。なお、講演の録音をしたのをスタッフの一人の竹田雅博がテープ起こしをし、要旨をまとめました。さらにそれを河野が少し縮めております。
講演の初めに、まず森さんは、その前夜のことを話し、聴衆を笑わせました。前夜、スタッフの一部と、他の発言者の方々と、お好み焼き屋さんに行ったと。そこで「うにほーれん」を食べますか?と言われたと。何ですか、うにほうれんなんて、皆さん知ってますか?私は知らなかった。そこで、ホウレンソウにウニを混ぜたのが出てきたと。で、人に会う時には、みんなマスク。話す時にも、マスク。そして、うにほうれんをじか箸で食べた。それって、おかしくないですか?とそんなことから、講演が始まりました。ちなみに森さんは、マスクをされていませんが、写真ではわかりにくいのですが、前にシールド板を置いています。
核を持ってしまった世界へ 広島・長崎から、核廃絶を問う
映画の仕事で海外に行くことも多く、広島、長崎を知らない人はほとんどいない。しかし、そこでどのようなことが起こったのか、原爆とは何か伝わっているかどうか。とくに核兵器を投下した国アメリカでは、いまも「戦争を終わらせる正当な行為だった」という人が多くいる。
オバマ広島訪問の際、謝罪に言及しなかったのも、そうした意識を持つアメリカ国民を強く意識したからという。どう考えても、原爆投下は明らかな国際法に違反し、「正当な戦争行為の延長」でもない。二つの都市と数10万市民を犠牲にして戦争を終わらせようとしたのか、そうではないだろう。都市、市民への実験をしたかった、世界へ示威など理由はいろいろあるだろうが、とても納得できることではない。でも、それがアメリカではなかなか伝わらない。とくに50代以上の人々は、「あれは正当な行為である」と答える人が多いようだ。
ぼくは、以前『アトミック・カフェ』という映画をみたとき、そういうことかと少しわかった。新たな撮影ではなく既存のフィルム、音声資料を使ったアーカイブ・ドキュメンタリーだ。多くの印象的なシーンがある。使われている素材は、戦争中や冷戦期にアメリカという国家が国民に啓発の資料、あるいは米軍内での教育用資料として作った映画やテレビ番組、当時のヒットソング、アニメなども使われている。
ニューメキシコでの原爆実験のとき、周囲の壕に米兵が配置される。爆発後に、きのこ雲に突進させている。当然被爆し、彼らは後にアトミック・ソルジャーと言われた。社会問題にもなり、多くの人がガンなどを発症し早くに亡くなったり、子どもに何らかの異常が出たりした。
冷戦期、原爆・水爆は抑止力とされ、実験が行われた。ぼくは原爆・水爆はリミットを超えており、抑止力というものがあるとしても、使えないと思うけど。いまだに、その抑止力論がはびこる。アメリカ側に「ソ連なんか滅ぼしてしまえ」という人もいた。しかし、それなら当然反撃を受ける。そのとき、どうするのかという啓発の映画、テレビ番組が多く作られ、実際に使われた。
例えば、このようなシーン。「小さな木箱に入って」爆風をやり過ごせ。原爆実験の壕に入るアトミック・ソルジャーに上官が訓示する。「きみたちはガイガー・カウンターを着ける。怯える必要はない。熱線さえ防げばどうってことはない。しかし傷があると、そこから放射能が入るから絆創膏を貼っておけ」。兵士たちは肯き、きのこ子雲に銃を持って突進していく。大真面目、その程度の認識だ。
アメリカ人の多くは核兵器、原爆とはどんなものかわかっていない。原爆投下後の広島を見た米兵へのインタビューでは「ダブルヘッダー後の球場のようだ」と話し、聞いた人たちは大笑いしている。子ども向けのアニメ、亀のパートくんは「ダック&カバー(Duck and Cover、さっと隠れ頭を隠せ)」。放射能は怖くない、ピカッと光ったら物陰に隠れろとか。そのレベルだからこそ、投下した。
いま大学で学生たちに映画をみせると、プロパガンダの恐さは実感する。その対象がアメリカ国民だということもわかる。だけど誰が発信しているかというと、考え込んでしまう。大統領か政治家か、軍の上層部なのか、テレビやラジオ局の経営者かプロデューサーか、わからない。マンハッタン計画に参加した科学者たちは、核をわかっていただろうが、アメリカの国民、兵士たちは超巨大な爆弾くらいに思わされた。
つくづく思うのは無知、知らない恐さ。プロパガンダとは普通に考えると独裁者とか、邪な意識を持つ為政者が国民を洗脳するのがプロパガンダと思っている。しかし、ほとんどの場合はする側もされる側もわかっていない。知らないままにお互いに宣伝し刺激をうけ、どんどん高まってしまう。その結果、どんでもないことをやってしまう。
昨日、アメリカの研究者2人が「日本に(戦争終結のため)原爆を投下する理由はなかった」というリポートを発表したというニュースがあった。いまだに、ニュースになるというのがアメリカの現状でもある。悪意はないが無知はある。(明日に続きます)
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