「8.6ヒロシマ平和の夕べ」平和講演「核を持ってしまった世界へ 広島・長崎から、核廃絶を問う」森達也さん②
昨日の森達也さんの講演の続きです。
映像を見ながら、昔話なのか遠い国のことなのか考える。4年前か、北朝鮮が実験ミサイルを発射したとき。実験だから火薬も、もちろん核兵器も積んでいない。日本の上空450キロ、国際宇宙ステーションよりも高い高度を飛んだ。日本は政府がアラートを発し、電車や地下鉄を止め、「物陰に隠れろ、破片が落ちてくる」などの騒ぎになり、そういう訓練すら行なわれた。
東日本大震災、福島原発の事故のとき家を流され家族を失い、多くの人がとんでもない理不尽に苦しみ逃げまどっているとき、私たちは家で暖房を使い冷蔵庫を開ければ食べ物もある、電気も使っていた。これは何だとテレビを見ながら思った。その不条理。それは広島、長崎、沖縄、東京や各地の大空襲についても同じ。その後ろめたさ、サバイバル・ギルティ(生き残ったことの罪悪感)、その罪責感が大事だ。だけど後ろめたさというのは、持つのがつらい。だから、振り返りたくない。
別言すれば加害性。ぼくらも加害者だ。
百田尚樹氏が広島で講演し、「過ちは繰り返しませぬから」という慰霊碑の言葉に、違和感を持つか否かで日本人としての民度がわかると話したという。つまり「碑文はおかしい。過ち、原爆を落としたのはアメリカだ。悪いのはアメリカなのに、なぜ私たち日本人がそう言うのか」ということだろう。
ぼくは、この碑文は好きだ。私たちは繰り返さないという意味は大きい。呉、広島は軍都だったこと。広島、長崎も一人ひとりは加害者ではなかったが、だけど戦争に加担していた。被害者でもあるが、加害者でもあった。どちらかだけではない。どちらも大切だ。被害も加害も、どちらもしっかり刻み、残していく。後ろめたさは、うっとうしい。忘れたくなる。そう言うと自虐史観と言われる。最近、その傾向が強まっているのではないか。
そういう位置で被害と加害、その責任をどう考えるか。福島原発の大事故のときに気がついた。被爆国であり、狭く地震の多い日本に原発が54基も造られた。米仏に続き世界第3位の原発大国だ。ぼくも、それは福島事故の前から、知っていた。同じ映画の友人、鎌仲ひとみの映画も見ていた。だけど、なにか他人事だった。放射能の知識も、一応あった。突き詰めて考えていなかったのか。原爆とアメリカも、それは同じでは。いまだ加害の意識をきちんと持ち得ていない。だからこそアメリカは、戦後もずっと戦争の歴史を続けてきた。
ぼくたちは被害者であり、同時に加害者でもある。そう思いながら、あの碑を見つめる。いま、この国は歴史、自分たちの加害に目を背けようとしている。被害を伝えることは大切、声を大に言い続けなければならない。同時に、自分たちも加害の側にいる、その後ろめたさを持つ。しんどいけど、それは広島、長崎を体験した、この国のぼくたちの責務ではないか。他の国、人々に原爆とは何か、放射能を浴びどうなるか伝え続けながら、もうそろそろ違う展開にしていきたい。(これは、森達也さんの講演の要旨です。文責は、8.6ヒロシマ平和の夕べにあります。)
以下、河野の私見です。
森さんの講演をこうして振り返ってみて、確かにそうなんだと。加害と被害について、明確に論じてもらったと思います。そして、さらに思います。だから、これからどうする?と。誰が誰に対して、何を言いどう行動するのか、それが問われていると。あるマスコミの方で、その方の父親が沖縄のひめゆり部隊の教師であったと。その子として私はどうすればいいのか、宿命を背負いながら、私は私の番組を通して、その贖罪をし続けていると。その方は、地を這うようにして、重い課題の番組を作り続けられました。
そうすると、私とて似たようなものかもしれません。父は、広島二中の教師として、多くの教え子を失いました。戦時中、軍隊に入るという卒業生に「死ぬなよ。生きて帰れ」と言い続けたという父が、何と、一発の原爆により、若い命を全滅させました。「教師にとって、教え子は、自分の子と同じように大切だった」と父は言いました。戦後、父は180度考えが変わったといいます。その後の教育の中で、また子育ての中で、もう、決して戦争はおこしてはならない。核兵器は三度使ってはならないということをしっかり教えてくれました。私が小さい時、寝ていて、父のうめき声で何度も起こされました。夢の中で、何を苦しんでいるのだろう、そう父の心情を幼いながらに、感じ取っていました。喉を締め付けるようなうめきは、私が高校生になっても、続いていました。その父の心の深い闇は、私には理解できないままでした。
私の私見、明日にも少し述べさせてください。クリニックの、青野さんの花。白が基調ですが、オレンジのグラジオラスの花が少しだけ開いています。これが一杯開くと、ガラッと鮮やかな花たちになるでしょう。
『河野美代子からだの相談室』
ここをクリックすると私の体の相談室と著書の販売があります。
ぜひ覗いてみて下さい。
| 固定リンク
コメント