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真夜中の電話「15歳です。妊娠しています。」

その日、私は締め切りが迫った厚生労働省への書類を焦って書いており、遅くなってしまいました。やっと目途が立って、翌日の締め切り日に清書すればいい所までできて、帰ろうとしていました。もう夜中の11時でした。と、電話が鳴りました。私のクリニックでは、夜中に電話があるのは珍しくありません。みんな帰った後は留守電になり誰かがメッセージを吹き込むと、携帯に連絡されます。ああ、私がまだいる時でよかったと思いながら受話器を取りました。受話器の向こうは、か細い声でした。

「あの、私は15歳です‥。あの、妊娠しています。もうお腹が出てきていて。中絶もできないと思います。」と。
「あの、チャイルドラインに電話したら、ここに電話をしなさいと言われました。」それなら、急いで来なさい、来てみないとなんにもできないから。
「怖いんです。行ったら、何をしますか?」診察だよ。お腹から超音波で診るだけだよ。
「内診しますか?」しないよ。お腹から見るだけ。
「痛いですか?」全然痛くないよ。心配しないで、とにかくいらっしゃい。
「あの、お金もありません。」大丈夫。お金は無くても、何とかするから。
「親にも言えません。」そうね、なかなかこんなことは言えないよね。でも、そのままにしていることはできないでしょう。早く診察して、何とかしなければね。とにかく来れば何とかするから。
「では、家出してもいいですか?」家出しても、ここに来るのよ。来ないで家出したらいけんよ。お金なくてもいい。誰にもいわなくてもいい。とにかく来て。くれば、ちゃんとします。約束するよ。待ってるよ。

 長い電話でしたが、そんな話をしました。

そして、翌日、受付さんにもナースにもその話をして、とにかく受け入れるからね。みんなわかりましたと。こんなことは時々ありますので、スタッフは承知しています。でも、彼女は来ませんでした。来なかったね、どうしてるんだろう。

 そして、その日、厚労省への原稿が出来て、送信して、やれやれできたできた。さて、帰りましょう。と片付けをしていたら、電話でした。何気なく出たら、彼女です。あの、だけでわかりました。昨日の人ね。

「はい。」来なかったね、みんなで待ってたのよ。
「はい。やっぱり怖くていけませんでした。」怖いって、大丈夫だよ。そのままにしておくほうが怖いんじゃない?ねえ、あなたバス代くらい持ってる?
「はい。」電車?バス?ここ、どこかわかる?そごう知ってるよね。その前にエディオンがあるから。エディオンが二つあるその間を入っていくと、左にあるからね。
「あの、駅はどこですか?」電車?バス?「電車です。」それなら、紙屋町西。だけど、あなた、どっちから来るのかな?何町に住んでるの?
「あの・・・」大丈夫よ。住んでる所を言っても、追いかけて行きはしないから。そしたら、
「あの、ごめんなさい。ほんとうは遠いんです。」うん?広島ではないの?どこ?うんと遠い?
「はい。東京です。」ええ?東京?それは、遠いねえ。東京から、どうして広島なのかなあ。
「だって、チャイルドラインでここの電話を教えてくれたのです。」どこのチャイルドラインにかけたの?
「チャイルドラインはどこにつながるかわからないんです。」ああ、そうか。今はそういうシステムになっているのかも。

明日に続きます。とても久しぶりの方から動画を送って来て、それがスパムだったのです。とたんにパソコンの調子が悪くなって、メールが全部消えて、新たなメールも入らなくなってしまいました。本当は今クリニックに飾ってある素敵なお花の写真を出したいのですが、その写真がパソコンに入りません。だいぶ前に行った花の輪展での写真でまだアップしてないのを出しますね。

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