養子縁組をしなかった子・続きです。
彼女の場合、背景に「貧困」があります。初めは中絶希望でも、お金がありませんでした。産婦人科のドクターから当院を紹介されても、お金がなくって受診できなかったと。来ればお金は何とかするのですが、彼女の場合、電車賃もなくって来られなかったと。やっと行政の方が当方に連れて来た時に、一日家でどうしているの?ごはん作ったりしないの?と聞くと、「食材を買うお金もないんです」という事でした。高校はやめました。どこかで働きたいと。でも、高校生の妊婦を働かせてくれる所はどこにもありませんでした。
以来、何回も当方に来ましたが、一切お金は頂いていません。手紙の中にある「エコーを見せて欲しい」というのは、遠方にいる彼がやってきた時に、二人でエコーを見たいという事でしたので、対応しました。その時に、私は男性にしっかり話をしました。彼の親は強く出産に反対していると。でも、反対も何ももう中絶不可能な時期に入っています。生むしかない、後はその赤ちゃんを誰がどこで育てるかという問題になります。
本来なら、妊娠した女性は、赤ちゃんが生まれるという事を喜んで、幸せであるべきなのよね。彼女をこんな状況に置いて、食べ物も不自由な状況で。ずるずると、何とかするみたいな事を言い続けて、彼女はそれにすがっているんだけれど、本当なの?ほんとうにあなたは、彼女と一緒に育てて行くつもりなの?もし、無理だと思うのなら、今、それを言うのも、あなたの勇気なのだと。今、ごめんなさいと頭を下げることも大切かも。あなたをあてにして子育てができるかもという期待が持てないのだったら、一人でどうやって育てればいいのかという風に考えるし、もし、一人で無理だということになれば、養子縁組だって、彼女は本気で考えられるのだからと。
初めは、特別養子縁組の候補として当方に紹介があったのですが、男性と切れていない場合は、養子縁組はしません。後になって、二人で育てたいから返してみたいなことになると、大変です。でも、やっぱり危惧した通り出産した後でこんなことを言いだしたのですね。
行政には、若い女性の妊娠のケアについて、研修会を行いました。行政のケアを受けられると言っても、それには予算措置がありません。(研修会も私の好意でという事で講師料もなしです。)ちゃんと食べられるだけのお金の工面がたちまち必要なのですが・・。16歳の彼女単独で生活保護も受けられませんでした。
将来を考えると、高校はやめないでほしかったのですが、それよりも働かないとという、目前の問題のほうが優先でした。
こんなしっかりした手紙を書いてくる、学力も優秀な彼女は、これから中卒のままで子育てをしながら、働かなければなりません。貧困の連鎖にならないことを祈ります。
平成29年度の全国の人工中絶率の集計が出ました。率は人口1000対です。これを貼り付けておきますね。
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