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恥ずかしくて、情けなくて、腹立たしくて。

私のクリニックには、外国人の患者さんがよく来られます。国によって医療が異なりますので、言葉の問題と共に、それは気を使います。

先日の、ある東南アジアからご夫婦で日本に来られている方。妊娠なさいましたが、稽留流産になってしまいました。妊娠が途中でストップしてしまうのですね。昔だったら出血が始まって、ああ、流産だとわかるのですが、今では超音波エコーで分かります。自然に流産をするのを待つには、少し大きく、手術が必要と判断しました。ご夫妻に説明をすると、


「手術でなく、薬で対処できませんか?」と言われました。いわゆる中絶薬ですね。「日本では、それは認められていないのです」とお答えしました。驚かれましたが、仕方ありません。手術をすることにしました。以前帝王切開をされていて、そのために子宮が腹壁に癒着をしていて、なかなか難しい手術でした。ああ、こんな方こそ、薬で出来たらいいのにと手術をしながら、痛感しました。今、WHOでも、人工中絶を安全にする方法として、中絶薬が推薦されており、日本でしているような手術は危険と警告されて、世界中で使われているのです。

手術の後の診察の時、暫く避妊をしたいと言われました。ピルにしましょうか、IUD(避妊リングと言われるものですが、今はミレーナと言って5年間効果が続くものもあります)もありますと説明すると、「腕に注射して3年間持つ避妊法を」と言われました。インプラントです。注射のようにして、上腕に細い棒状の物を入れ、そこから徐々に黄体ホルモンが排出され、3年間効果が持続します。妊娠を望む時に抜去すれば、直ぐに元に戻ります。外国からの患者さんに時々入れている方を見ます。足を広げて、痛いのを我慢して子宮の中にIUDを入れてもらうより、はるかに精神的に楽ですね。

「これも、日本では認可されていないのです」と言いました。情けない。中絶薬もインプラントも、先進国と言われるほとんどの国で広く使われているものなのですね。外国の方から見て、これらが日本にないというのは驚きであって、「どうして?」と聞かれます。

別の患者さんで同じ東南アジアの国からの方。以前中絶の既往があります。この時、どうやって中絶をしましたか、と尋ねると、「お薬で」と言われました。ゃっぱりね。

本当に、これまで何度も言っているように、日本の女性行政が貧しいのです。低用量ピル、緊急避妊薬、そして子宮頸がん予防ワクチン、どれも日本に導入されたのは、先進国の中では最後といってもいいほどなのですね。いえ、先進国というより、世界の中でといってもいいでしょう。だって、緊急避妊薬が日本で認可されたのは、世界中のラスト6か国。イラン、イラク、アフガン、ペルー、北朝鮮、そして日本。こうなって初めて認可され、でも、その条件として、とても高い値段を付けられました。先日ジェネリックが出たのですが、それでも、世界からはとびっきり高いのです。(自由診療だと言われても、問屋さんから買う値が高いのです)

それに加えて、避妊などの性教育の貧しさ。中学生には性交も避妊も教えてはならないという文科省の指導要領。こうせしめているのは、やはり政治なのです。金と票のある団体が政治家を動かし、行政を動かす。こんなことのおかげで、私のクリニックのような小さな末端で、女性たちが悲鳴を上げています。そして、外国からの患者さんにとても不思議がられている。

恥ずかしくて、情けなくって、腹立たしくて。

今日は投票日ですね。こんな国の状況を誰が作っているのか、よく見極めて投票しようと思います。一部、白紙投票をせざるを得ないのもありますが。棄権はしません。

昨日の平和公園の桜です。


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そろそろお終いですね。桜吹雪の中を歩くのが好きです。

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