CD「夏の花」②
原民喜の「夏の花」のCDに収載されている三分作、4枚のCD。それぞれについて私の解説より、CDケースに書かれている説明の方がうんといいと思いましたので。
「夏の花」(49分)
当初「原子爆弾」という題名で1945年に書かれた。夏の花を妻の墓前に供えたその翌々日、原子爆弾が落とされる。広島の凄惨な光景が原民喜の澄みきった眼を通して語られる。
「廃墟から」(53分)
1947年発表。原爆が投下された後、次兄の疎開地である八幡村に移った作者の体験が引き続き描かれる。壊滅した広島、荒廃した戦後の人々の暮らしには、原爆で命を奪われた人々の無数の嘆きが横たわっている。
「壊滅の序曲」(104分)
1040年発表。広島に原爆が落とされる前の数か月間を描く。広島に戻った正三(原民喜がモデル)は、故郷の痛ましい末期をどこか予感しながらも、戦争末期の日々を過ごしているのだった・・・・
はじめの「夏の花」が被爆の直前からその時、その後。爆心地近くで被爆しても、奇跡的に助かった著者の周辺に起こっていること。崩れる家家、迫る炎。次々と近所や身内や出会った人々の亡くなる状況。それらがこれでもか、これでもかと描かれます。運転していて、息苦しくなるほどでした。
原爆の直撃では助かった人でも、その後に髪が抜け、斑点が出て、血を吐いてなくなって行く、その姿がまた詳細に描かれます。
だから、三番目の「壊滅の序曲」は、これから原爆が落ちることが分かってはいていても、聞いていて、どこかその日常生活にホッとするのでした。
そして改めて思います。よくこれを残して下さったと。原民喜が命を削るようにして、これらを書いてくれて本当にありがたいことだと思うのです。それまでも沢山文学を書いていた著者が、あろうことか、こんな状況に放り込まれたこと。これは、天が「書きなさい」と彼に告げたのだろうと思います。そして、書いた挙句に自死。なぜ?
また、これらを読むのでなく、CDで聞くという事。ぴったりの声と演技力で淡々と読む岡崎弥保さんの朗読。それはインパクトがありました。原民喜と共に、岡崎さんにも感謝です。
今、ちょうど広島で「原民喜展」が開かれています。12月9日までとのこと。どうしても行かなくては。
『河野美代子からだの相談室』
ここをクリックすると私の体の相談室と著書の販売があります。
ぜひ覗いてみて下さい。
| 固定リンク
« CD「夏の花」① | トップページ | 冴えない話。 »
コメント