2018年8月6日⑦国連人権理事会でのスピーチと勧告
今回の発言は国連人権システムの手続きである普遍的定期的審査(UPR)の第3回の対日審査の中でおこなわれたものです。この制度は2008年か4月から始まったもので、全ての国連加盟国が約4年ごとに人権状況の審査を受ける制度です。
2012年10月に第2回の対日審査でオーストラリア政府代表から日本に対して「人権理事会が選任した健康の権利特別報告者の訪日調査を受け入れるように」勧告があり、日本政府の正式招待という形で健康の権利特別報告者アナンド・グローバー氏が訪日して調査を行い、2013年5月に人権理事会に詳細な報告書(国連グローバー勧告)が提出されました。それは個人的判断で書かれたものではなく、すでに確立されている国際人権法を根拠とし、日本の国内法も援用して原発事故被害者の人権を守るための多面的な政策転換を日本に勧告したものです。
その後、社会権規約委員会(2016年3月)でも、原発事故被害者の人権状況改善について勧告が出されています。日本政府がどのような反応をしても、これらの勧告は現在もそのまま有効です。
2017年10月、福島から京都に避難した園田さんが人権理事会の各国政府代表や特別報告者に面会するとともに、第3回UPR(普遍的定期的審査)の事前セッションでスピーチをし、女性と子どもに「格差ある被害」が生じていることなど実情を知らせました。
2017年11月、作業部会では日本に対して報道の自由を含む217項目の勧告が出され、そのうち福島原発事故被害者の人権保護については4カ国の政府代表から勧告が出されました。これに対して日本政府は形式的には「フォローアップを受け入れる」と表明しましたが、具体的にどう実現されるかは不透明です。これを実現するためには政府や国会だけでなく、地方自治体や市民社会の継続した努力が必要です。
園田さんと森松さんのスピーチは日本の人権状況への関心を国連加盟国によびかけるとともに、日本の状況を改善する提案としての性格があるといえます。国際法や国連というと、遠い外国のように感じがちですが、国際法は国内法より優位にあり、地方自治体や市民社会も国際法を順守する義務があります。国際法を根拠として出されている勧告は政府を含むすべての国内組織と市民が尊重し、実現していく必要があります。
2017年11月の4か国の勧告は次のごとくです。
住宅、財政的、及び他の生活支援に関わる措置と、被災した人たち、特に事故当時子どもだった人たちへの定期的な健康管理の実施を含む、福島の高い放射線地域からの自主避難者への支援の提供をすること(オーストラリア)
影響を受けた全ての人達の再定住に関する政策決定過程において、女性と男性双方の十分かつ平等な参加を確保するために、福島第一原子力災害によって影響を受けた全ての人たちに対して、国内避難民に関する指導原則を適用すること(ポルトガル)
特に放射線の許容可能な線量限度を年間1ミリシーベルトに回復させることによって、また避難者と住民への支援を継続することによって、福島地域に住む人たち、特に妊娠した女性と子どもの最高水準の心身の健康に対する権利を尊重すること(ドイツ)
福島原子力事故によって被災した人々と、核兵器の使用の影響を受けた何世代もの生存者に対して、医療サービスへのアクセスを保障すること(メキシコ)
特に、このメキシコの勧告は、広島・長崎の被爆二世にも及ぶ勧告ですね。これらの勧告は、今回、これを自分の力で転載して初めて理解できました。これを配布して下さった森松さんありがとうございました。
8.6ヒロシマ平和の夕べの後の交流会で、ナンシーさんたちがイマジンを歌っている時に、横断幕を広げる森松さんです。
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