幼い子の性的違和・性同一性障害①
その日、その方の日頃の体調を尋ね、漢方薬を続いてお出ししましょうねというお話の後、いつものように「どうですか?ちゃんと学校に行っていますか?」と聞きました。お子さんのことです。
その方は、半年前から、はじめはお子様のことで私のクリニックに来られています。今は、ご本人の自律神経のための漢方薬をお出しするのと共に、必ずお子様のことを尋ねます。
お子さんは、小学校一年生。体は男の子ですが、心は女の子。長い髪、女の子の服を着て通学しています。正式に診断はされていませんが性的違和・性同一性障害のお子様です。(正式に診断されていないというのは、日本の基準は、経験を積んだ二人の精神科医の診断が一致して初めて性同一性障害であると診断されますので、その意味でです)
その日、お母様が話して下さったのは、それまでと少し異なるお話でした。お子さんのことをAちゃんとしますね。ある日、教室で女の子から、
「Aちゃんは、男なのに、スカートなんかはいてきてはいけんのんよ」
と言われたのだそうです。今日、学校でいやなことがあったと帰宅して言ったのだそうです。それで、担任の先生に連絡をすると、「直ぐに対応します」と言われたのだと。そして、Aちゃんが男の子だと子どもたちに言ってもいいですか?と聞かれたのだそうです。もし、ご両親が言ってはいけないと言われるのであれば、それは言いませんと。
Aちゃんは、入学まで行っていた幼稚園では、体は男の子だと多くの子どもたちが知っています。学校に上がると、同じ幼稚園から入学した子は知っていますし、そうでない子は知っていません。それで、この際、みんなに言っていただいてよろしいですとお答えされました。
Aちゃんが入学するにあたって、前年の秋から入学予定の学校を御両親が訪ね、Aちゃんのことをお話しし、受け入れをお願いしました。学校は、修道大学の河口和也先生を講師に招いて職員研修をし、どうぞ心配なく入学させて下さいと対応されました。
その学校は、名簿は男女別でなく、混合名簿でした。それもよかったですね。もう一つ、基準服、いわゆる制服はありません。学校によっては、公立小学校でありながら、厳しく制服を指導する所もあります。でもその学校は、それぞれ好きな服を着て通学する学校でした。それも良かったです。
その上で、入学式の後、始業式で、校長先生が子どもたちにお話しなさったのだと。金子みすずの「みんなちがってみんないい」をスクリーンに映されたのだと。
Aちゃんの受け入れに当たって事前に自ら研修をし、子どもたちにもお話しをし、そのような下地をつくられての、子どもたちの指導でもありました。
私のクリニックには、大人の性同一性障害の方は約60人ほど来院されています。ホルモン治療をするとともに、名前の変更のための家裁への書類の出し方や手術の相談にのったりしています。今回は、幼い子どもの場合のお話しをしたいと思います。このお話、まだ続きますね。これは、Aちゃんのお母様に、診療の後お電話でもう少し詳しくお話を聴き、了解を得て書いています。
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