妊娠した高校生についての文科省通達
この度、文部科学省が「公立の高校における妊娠を理由とした退学などに係る実態把握の結果などを踏まえた妊娠した生徒への対応などについて」の通知を発出したと報道されています。通達は、文科省の初等中等教育局児童生徒課長と健康教育・食育課長の連盟で出されました。
いろいろな報道がありますが、この官庁通信社が一番事実関係を淡々と正確に記述しているようなので。
ああ、やっとやっとと、涙が出る思いで、これらの記事を読みました。妊娠を理由に学校をやめさせてはいけない、高卒の資格は母子が生きて行くのに必要なんだと、ずっといい続けてきました。こっそり中絶をすれば続けて行くことができるけれど、出産するならやめなければいけないと言うのは、おかしいと。
高校生で出産した子が二十歳になったからと、先日会った母子、「あの時先生が絶対に高卒の資格を取れ」と言ってくれたからこそ、と。彼女は公立高校をやめ、通信高校に転校して卒業しました。そのあと専門学校に行き、資格を取って今の職業を身に着けることができました。
親が高校に相談に行った所、即座に退学させられた少女もいます。だから、出産しようとする時、一番慎重に考えなければならないのが学校への対応なのですね。退学を撤回して下さいと、壮絶な闘いをしたこともあります。私のクリニックの開業10年のデータで、妊娠した高校生の妊娠393例のうち、35人が出産しましたが、その内30人が高卒の資格を取りました。こっそり学校に知られないように出産したり、通信に転校したり、いろいろですが。
通達は、とても具体的で画期的です。
「妊娠した生徒が退学を申し出た場合には、生徒や保護者の意思を十分確認することが大切だとし、退学以外に休学、全日制から定時制・通信制への転籍や転学といったような学業を継続するためのさまざまな方策があり得ることについて必要な情報提供を行うよう要請している。」
「その上で、「妊娠した生徒に対する具体的な支援の在り方」として、妊娠した生徒が引き続き学業を継続する場合は、生徒や保護者と話し合いを行い、生徒の状況やニーズも踏まえながら、学校として養護教諭やスクールカウンセラーらも含めた十分な支援を行う必要があるとしている。」
「また、体育実技などの身体活動を伴う教育活動においては、生徒の安全確保の観点から工夫を図った教育活動を行ったり、課題レポートなどの提出や建学で代替するなど母体に影響を与えないような対応を行う必要があるとしている。」
「妊娠を理由として退学をせざるを得ないような場合であっても、再び高校などで学ぶことを希望する者に対しては、高校等就学支援金などによる支援の対象となり得ることや、高校卒業程度認定試験があること、就労を希望する者や将来の求職活動が見込まれる者に対しては、ハローワーク及び地域若者サポートステーションなどの就労支援機関があることなどについて、生徒の進路に応じた必要な情報提供を行うよう求めている。」
「また、各教育委員会においては、妊娠を理由として過去に高校などを退学した者についても、ハローワークなどの関係機関と連携しつつ、学習相談などの効果的な支援の実施を推進するよう求めている。」
しかし、私は不思議なのです。性同一性障害などの人に対するきめ細かな対応についての通達や、今回のこんな素晴らしい通達を出す文科省が、どうして名古屋の中学校での前川さんの講演について、ネチネチと極めて具体的に嫌がらせとしか思えないような問い合わせをしたり。性教育に対しての指導要領がいまだに中学生の避妊の指導はしてはいけなかったり、性交という言葉を使ってはいけないとしたりしているのか。お役人の人それぞれによるという事なのでしょうか。省内での意思統一が取れていないということなのでしょうか。
何よりも私は、性教育、特に義務教育での性教育をしっかりしてほしいと思っています。
当院での高校生の妊娠の相手はこうなのですから。男性にも、しっかりと性教育が必要なのですね。何も教育を受けないで成人した男性がどうしているのか、それを端的に示していると思います。
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