性犯罪被害者の手記③
小林美佳さんの「性犯罪被害にあうということ」から。
『毎日の生活は、「いつもと変わらない日常」をこなすことで精いっぱいだった。仕事や社会生活など、周りに他人がいて事件のことを公言できない場での私の生活は、「何かあったと悟られないように」過ごし、それまでと変わらないように見えていたと思う。実際、時間の速さや生活のリズムは何も変わっていなかった。しかし、一人の時間には、それまでと同じ生活は全くできなくなっていた。
食べることも忘れてしまう日々が続いた。ひと月で十三キロも体重が落ちた。そもそも、生きる気力を失った人間が、食べようと思うわけがない。(略)
一人でいる時間は、事件のこと以外、考えた記憶がない。取り憑かれたようにいつも事件のことばかり考え、汚らしいと感じる自分をどうしたらよいのか解らなかった。
フラフラしながら駅のプラットホームで電車を待っていると、「何かのはずみで人に押されて線路に落ちちゃえばいいのになあ」と、考えたりしていた。』
「魂の殺人」と言われるのはこういうことなのですね。
でも、今でも、多くの被害者に、心ない言葉で接し、行動する医療者、警察官、検察官がいるということを改めて考えさせられます。
集団レイプの被害に遭った人が、精一杯突っ張って話しているのに、「あんまりつらそうな顔をしていませんね」と言ってのけた検察官もいます。
小学生の子どもが大人の男の被害に遭ったのに、ついて行った彼女の問題だとの結論を出した警察も。
中学生が明らかに姦淫されているのに、そうではなく、胸を触ったという「強制わいせつ」として起訴した検察も。
そんな状況を考えると、今、御直披の感動がむなしくなってしまうのです。板谷さんは、今、詩織さんの事件をどう考えていらっしゃるのでしょう。それを聞いてみたいと思いました。いえ、詩織さんのブラックボックスには、彼女の事件の困難を乗り越え、丁寧に操作をし、証拠を集め、逮捕状を取った警察官がいることが記されています。でも、逮捕状の執行直前に政権の中枢に近い所にいる人から、執行を止められたのですね。担当を外された警察官は、今どうしていらっしゃるのでしょうか。
この事件は、世界に日本の恥をさらしています。日本の大手のメディアがほとんど報道しない中、海外の多くのメディアが大きく報道しています。ニューヨークタイムズは、大変な取材を経て、大きくこの事件を取り上げました。その記事からは、とても沢山の人から話を聞いた形跡が分かります。わたしの所にさえ、この事件の背景を知るために、日本の性教育の状況はどうなのかという取材があり、掲載された新聞を送って来ました。
そのほか、ヨーロッパもアジアも、多くのメディアが報道することで、日本は、性犯罪に対してこんな状況であるということを世界中の人に知られることになったのですね。本当に恥ずかしい。
もう一回、このことについて書きますね。
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