村中璃子さん、授賞式での講演
村中璃子先生の講演を聞いた時、胸が熱くなりました。私も以前とてもしんどい思いで、裁判を闘ったことがあります。その裁判の相手と同じ団体から、ひどい誹謗中傷を浴びながらも、毅然としてその信念を貫いている彼女に、私たちがおんぶされてばかりでいてはいけない、私たちがどう彼女を支援するか、それぞれが行動すべきであると、発言しました。
産婦人科医の仲間である私たちは、臨床の場で、まだまだ進行した子宮頸がんに出合っています。その多くが若い人です。そして、命を失ったり、まだ出産をしていない子宮を失う人たちを見ています。そのような経験から、子宮頸がんのワクチンを多くの女性がうつべきだと思っています。
村中さんは、あくまでも科学的に取材し、研究し、分析し、子宮頸がん予防ワクチンの日本における状況のおかしさを追求しています。
WHOでももっとも安全なワクチンとされ、世界中で接種され、そのうち歴史上の病気とされるであろうと言われる子宮頸がんは、今や、日本も含めたアジアの病気とされています。アジア人が罹り、アジア人が死んでいくと。
孤軍奮闘している彼女に与えられたこの素晴らしい賞、ジョン・マドックス賞のロンドンで行われた受賞式での彼女の講演が英語バージョンから日本語に翻訳されています。すでに公開されていますが、少しでも多くの方に読んで戴きたく、あえてここに転載させて頂きます。
『
世界では毎年、53万人が子宮頸がんと診断され、27万の命が失われている。
現在では子宮頸がんを防ぐワクチンがあり、世界130カ国以上で使われているというのに。
しかし、近い将来、ワクチン接種率の高い国では、子宮頸がんは歴史の本でしか見つからない過去の病気となるだろう。
けれども、その道のりは決して簡単ではない。
2013年4月、子宮頸がんワクチンは日本でも定期接種となった。ところが、それから2か月後、日本政府はこのワクチンを定期接種に定めたまま積極的接種勧奨を「一時的に」差し控えるという奇妙な政策決定を下した。けいれんする、歩けない、記憶力や成績が落ちた、不登校になったなどという訴えが相次いだためだ。
脳波に異常のない「偽発作」に代表されるように、小児科医たちは思春期の子どものこういう症状は、子宮頸がんワクチンが世に現れる前からいくらでも見てきたと言った。厚生労働省の副反応検討部会も、副反応だと訴えられている症状は、ほぼ間違いなく身体表現性のものだろうという評価を下していた。
親たちは娘のけいれんする姿や車椅子姿を携帯電話やスマートフォンで撮影し、インターネットに投稿した。メディアからの取材にも積極的だった。大多数のまっとうな医者たちは「心ない医者に、心の問題だと言われた」などと激しく批判されて面倒になり、みんな黙ってしまった。
世界中どの国でも新しいワクチンが導入されればそれに反対する人は必ず出てくる。しかし、日本には、他の国にはない厄介なことが2つあった。ひとつは、政府がサイエンスよりも感情を優先した政策を取ったこと。もうひとつは、わざわざ病名まで作って、子宮頸がんワクチンによって引き起こされたという薬害を唱える医者たちが登場したことだ。
その名はHANS(ハンス)、子宮頸がんワクチン関連免疫異常症候群。HANSを唱える医師たちの主張は、患者の訴えと印象に基づいており、決して、エビデンスを示すことはなかった。代わりに、エビデンスを示せないのは、現代医学が十分ではないからだと糾弾した。しかもHANSは「ワクチン接種から何か月、何年経っても起き」「消えてもまた現れ、一度なったら決して治らない」のだという。
*
昨今、科学的根拠に乏しいオルタナティブファクトが、専門的な知識をもたない人たちの不安に寄り添うように広がっている。私は医師として、守れる命や助かるはずの命を危険にさらす言説を見過ごすことはできない。書き手として、広く真実を伝えなければならない。これが、メディアに執筆を始めたきっかけである。
子宮頸がんワクチン問題は、エボラ出血熱から水素水まで、私が取り扱ったさまざまなテーマのひとつに過ぎない。この問題が、原子力爆弾のように何千・何万もの人々の命を危険にしていると気づいたのは、1本目の記事を出してからのことだ。私はただ真実を書いてきただけであり、このワクチンを推奨するために書いたことは一度もない。
最初の記事がビジネス誌「Wedge」の誌面とオンラインに掲載されたのは2015年10月だった。この記事は文字どおり数百万の人々に読まれ、子宮頸がんワクチンの安全性に関する議論を再開させるきっかけとなった。その後も私は取材、調査を続け、このテーマで20本以上の記事を発表した。
明日に続きます。
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