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産婦人科の現場から、年末年始を通して⑤

落合恵子さんの「月刊子ども」のもう一冊、1989年5月号には、特集で「教育は危機ですか?」というアンケートがされ、69人の人が答えています。28年も前の雑誌です。それには、現代と全く同じ状況が語られています。いえ、今日ある姿が、この頃からもう心配されていたという事でしょうか。私も一文をよせていますが、何人か、心打たれる方の文がありますので、それを転載しますね。もう、亡くなった方もおありです。

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毛利子来先生、小児科医で、広島にも講演に来て頂きました。とても楽しい先生でしたが、残念ながら昨年10月に亡くなりました。先生のあの真っ黒でふさふさの髪、もちろんかつらでもなく、染めてもなくって自然のままだと。ある日、診療に来た子どもが先生の髪を引っ張って、「ママ-、かつらじゃなかったよ-」と走って行ったと。講演会を主催した時の楽屋でのお話です。そんな先生のメッセージです。

『町で小児科医をしていると、子供たちが気の毒でなりません。
みんながみんな同じことをしなければならないみたいなんですね。勉強にしても行動にしてもーー。それだと学校にたまたま合う子はいいけれど、そうでない子は苦しい。そのために気分が悪くなったり頭が痛くなって診察に連れてこられる子がけっこういます。
それから、やたらマジメばかり押し付けられるみたい。毎日学校に行って、きちんと宿題をして、丈夫で明るく規律正しくってぐあいにね。――けど、人間、そうとばかりはやっていられないでしょ。大人だって、しょっちゅう体調が悪かったり暗くて沈んだり、スッコケルことだって少なくはない。なのに、子どもだと、そんなことしたら大問題にされてしまう。
こりゃもう、人間破壊もいいところ。子どもよ、うんとこさ文句を言え!大人は「長いものには巻かれろ」を捨てましょう。』


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中村隆子さん。中国新聞の女性記者の草分け、退職後には家族社を設立し、月刊家族を発行されました。がんで声を失っても、精力的に活動されました。中村さんには個人的にさまざまお世話になり、沢山の思い出があります。2012年にお亡くなりになりました。

『船が難破する前には船底からネズミが逃げ出すという。子どもたちが登校を拒否したり、教室から塾へ逃げたり、校則の足かせを必死でふり払おうとしているのは、学校が難破しかけているのではあるまいか。
本能的に危機を感じて逃げようとする子どもたちを学校はただやみくもに押さえ込もうとしている。学校暴力に手をかして子どもをつぶす教師がいる。せめて暴力に手をかさないことを良心として、つぶされていく子どもたちを手をこまねいて見ている無能な教師がいる。
学校が難破しようとすまいと、親は子どもが学校に行くことを自明の理としている。
こんな中で、子どもたちが送るSOSは受け止められることなく、学校と家庭の中間を交錯し、消えて行く。挫折あるいは大人への不信を残して。
だが逆教育ということもある。難破船から自力で逃げまくった子ネズミたちの中には、社会正義が半社会的なものであることを知った鼠小僧治郎吉が出る。』

そして、もうお一人、一昨年の8.6ヒロシマ平和の夕べでお話し頂いた、ずっこけ三人組の那須正幹さんのメッセージです。

『危機という言葉に、多少抵抗がありますが、ある種の不安は持ち続けています。
戦後四十数年たった現在、新憲法への新鮮な喜びを今の子どもたちに、うまく継承しきれないことへのいらだちと言ってよいでしょう。
むろん、そうした状況を生み出したのは、政府の教育政策ですが、これを黙認している大人ひとりひとりにも責任があります。
あの日、もう戦争はいやだ。言いたいことが自由に言える世の中であってほしいと考えた、あの率直な気持ちはどこに行ったのか。
勝てる戦争ならやっても良いと思っているのか。お金のためなら、何をしても良いのか。
学校や教育、あるいは子どもを考える前に、私たち大人として、考えるべき問題ではないでしょうか。』

まだまだ沢山の方々の宝物のような文が載っています。「月刊子ども」。1986年から1993年まで。その後、「月刊子ども論」となって2006年3月まで発刊されたようです。素晴らしい本を発行し続けられたクレヨンハウス、落合恵子さん、ありがとうございました。

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