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性暴力について3.

山口氏は、彼女が激しい痛みで目覚め、逃げようとしたのをさらに押さえつけて、彼女はこのまま死ぬのではと恐怖をもったと。こんな所で、自分が死んでいるのを両親が知ったらどうなるのかと。さらに、自分の服を探して身につけながら、妊娠したらどうするのかという彼女に山口氏は「ピルを買いに行きましょう」と言ったと。

彼女は、目覚めた時、コンドームもつけていない彼を目撃しているし、ピルを買いに行きましょうと言ったということは、避妊をしなかったという自覚が山口氏にもあるということです。

彼が「ピルを買いに行こう」と言ったことは、ことの後に飲む「アフターピル」を買おうというのに他なりません。

アフターピルは、レイプされたとか、コンドームが破れてしまったとか、緊急のことが起きた時の72時間以内に内服する「緊急避妊薬」です。女性の妊娠を防ぐ目的です。レイプ、妊娠、人工中絶という、二重三重に苦しむ女性の救済策としてあるものです。避妊しない男性を救済するものではありません。

山口氏は知っていないのでしょうか、それとも特別に手に入れる方法でもあるのでしょうか。アフターピルは、薬局で自由に買えるものではありません。今のところ、産婦人科に行って処方してもらう薬です。この頃私のクリニックでも、アフターピルを求める人がとても増えています。中には、彼と共に来る人も。私は、その時、なぜ緊急避妊が必要なのかと必ず尋ねます。それは今後の避妊にもつながることでもあります。

詩織さんが迷った挙句、一人で尋ねて行った産婦人科医は、「どうされましたか?」と尋ねるべきでした。そしたら、緊張していた彼女は、まだ整理しきれない自分の身に起こったことを、実はと泣きながらでも話したかもしれないのです。

先日は、彼が中出しをする度に緊急避妊薬を飲んで来たという人もいました。そもそも産婦人科医は、緊急避妊の処方をした後には、この後もこのようなことが予想されるのであれば、日常時に内服するピルを勧めなければならないものです。何度もこの緊急避妊薬を内服しなければならないことは、悲しいことです。

そして、避妊をしなくとも後で飲めばいいからと、彼が勧めるということは、もっと悲しいことです。避妊しない男の免罪符としてアフターピルがあるのではありません。

それに、アフターピルの避妊率は85%と言われています。必ず避妊できるわけではないのです。詩織さんは、自分で行った産婦人科でアフターピルを処方してもらい内服しましたが、それでも来るべき生理が遅れて、妊娠の恐怖につらい思いをしました。

来るべき月経が遅れて妊娠したのではないかという恐怖は、おそらく男性には分からないでしょう。まして、恋人との間でもない、強引な性で妊娠したかもというおそれは、それはつらかったことと思います。

のちに、「妊娠はしないでしょう」と言った彼の言葉を問い詰めるメールのやり取りを読んでも、この言い訳はおかしい、嘘だらけだと思いました。彼のプライバシーもあるでしょうが、これは子どものいる人が言うことではないと思いました。

本当に人間関係をどう考えているのか、女性感、セックス感はどうなっているのか、許せない男だと思いました。

次は、性犯罪を罪に問うことについて話します。

写真は、福井からの帰りの列車の中から撮った、もう暗くなった琵琶湖です。もう少し早く、夕暮れの中での琵琶湖を見たかったなあと思いましたが。

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