性暴力の被害に遭うということ②刑事と民事
オルガさんの講演の直前に、ある女性弁護士さんから、私が診断書を書いた少女の強姦事件の加害者が強姦事件としては起訴されなかったと聞きました。なんと、胸を触ったという「強制わいせつ」での起訴だと。びっくりしました。事件は、胸を触ったというものではありません。少女は起こったことをあれだけ明確に話し、その診察もしたのですが。
それに、この件は、加害者が逮捕されたにも関わらず、その件は、一切報道されませんでした。警察の発表がなかったということです。
最近、改めて知ったことでもありますが、子どもが被害の性犯罪は、とっても多いのです。それも、加害者は、普通の生活をし、仕事もチャンとしている男性たちです。社会に喚起するためにも、本当は報道してほしいと思います。加害者は、釈放された後、誰にも知られることなく、これまでと同じ場所で同じような生活を続けることになります。被害者が特定されないように細心の注意を払った発表の仕方もあるはずなのですが。
起訴をするか否かは、有罪にできるかどうかを裁判官ではなく、その前に検察自らによって判断されているいうことなのでしょう。裁判になる前に警察や検察の段階で門前払いをされてしまうのです。子どもの訴えや証言をどう判断するかということでもあるのでしょう。供述だけでは有罪にできないということもあるのかもしれません。子どもは、受けた性暴力について、嘘を言うのはまれであると教科書にもあり、そのコピーも提出しましたが。
そして、弁護士さんは「刑事は弁護士として手は出せないけれど、民事がありますので。その時には協力をして下さい」と言われました。それは、もちろんです。
この数日、詩織さんの事件についても動きがありました。検察審査会の不起訴相当の議決についての詩織さんと山口氏の声明です。この検察審査会では、当然つくはずの助言者としての弁護士がついていないということも分かりました。
詩織さんのコメント
検察審査会の議決までにはもう少し時間がかかるものとうかがっていたので、本日この結果を知り驚きました。私たちが集め直した証言や証拠が「不起訴処分を覆すに足る事由がない」と判断されたことについて、なぜそうなったのか、しっかり説明して頂きたかったと思います。今回の結果にかかわらず、私が会見を行った理由である性犯罪・性暴力に関する司法・捜査のシステム、また社会の在り方を変える必要性については、引き続き伝えていきたいと考えています。3年後の刑法改正見直しまでに少しでも改善されるよう願っています。
山口敬之氏のコメント
今般の検察審査会の判断について
5月29日に検察審査会への不服申し立てを行った相手方女性を巡る案件で、検察庁の昨年7月の不起訴処分の判断に加え、今般検察審査会においても、当該不起訴処分の判断を相当とする「不起訴相当」の判断がなされました。
この案件に関しては、当該女性の記者会見の前後から、女性の主張を鵜呑(うの)みにし、私を犯罪者であると断定するかのような週刊誌や新聞、テレビの報道が大量に流布されました。しかし、11名の一般国民の方々により構成された独立性を有する組織である検察審査会は、当該女性の主張は勿論(もちろん)のこと、検察庁が保有する全ての証拠資料の提供を受け、3カ月以上の時間をかけて厳正に審査した結果、不起訴処分が相当であるという結論に立ち至ったわけです。
一連の経過において犯罪行為があったと認定されたことは一度もなく、今回不起訴処分が確定したことで、この案件は完全に終結しました。
しかし、これまで一部の報道機関や政治家、記者、コメンテーターなどは、当該女性の主張のみに依拠して私を犯罪者と断定するような報道や発言を行い、私の名誉は著しく傷つけられました。大変残念であり、事案によっては法的措置も検討しています。
今般の検察審査会の判断により、今後は私に関して誤った報道がなされることはないものと期待しております。万が一、私の名誉を傷つけるような報道が引き続きなされた場合には、そちらも法的措置の検討対象となることもご承知おきください。
以上
平成29年9月22日
私は、緑の太字の部分に震えるほどの怒りを覚えました。だって、証拠を丹念に集め、逮捕状を裁判所が出し、それを執行しようとした、それは、犯罪行為があったと認定されたことなのでは?そして、正にその逮捕状執行直前に首相側近の鶴の一声で逮捕が取りやめになったのですから。そして昨日、詩織さんが、民事で加害者を訴えたとの報道がありました。以下、毎日新聞のウェブからです。
以下、引用です。
元TBS記者の50代男性ジャーナリストから、性的暴行を受けたと訴えるフリージャーナリストの詩織さん(28)=姓は非公表=が29日、真相究明などを求めて東京地裁に民事訴訟を起こしたことを明かした。提訴は28日付。
詩織さんは準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を出したが、東京地検は不起訴処分にした。検察審査会に審査を求めたが、検察審は21日付で「不起訴相当」と議決した。詩織さんはこれを受け、男性を相手取って提訴した。訴訟では、精神的慰謝料などとして総額1000万円の損害賠償も求める。
29日に東京都内で開かれた集会「性暴力被害当事者を孤立させない」に登壇した詩織さんは「どのような判断をされようと私が受けた行為、事実に変わりはない」と話した。一方、男性は「訴状を見てから対応する」とコメントした。【坂根真理、巽賢司】
山口氏が言っているような「この案件は完全に終結」していないということになりました。これらの報道について、ネットでは、詩織さん、頑張ってという声がたくさん飛んでいます。
総理に気にいられると、なんでもありなのですね。土地をただ同然でも手に入れることができ、大学の学部もたくさんのことを捻じ曲げてでも認可してもらえる。それだけでなく、なんと逮捕状が出て、逮捕直前の強姦犯でも、総理の側近から逮捕状の執行をストップしてもらえるということ。これらは、詩織さんのおかげで、私たちは知ることができました。
彼女はこれまで、どれだけの物を失ったことでしょう。詩織さん頑張ってではありません。もう、これまでさんざん頑張って頑張って、時には絶望の淵にも立たされたことでしょう。詩織さんに頑張ってというのではなく、どんな支援をしようか、できるかということだと思います。これからの裁判には、労力だけでなく、お金もかかります。仕事も失って、生活も大変でしょう。支援金の送り先はどこなのか、支援する弁護士事務所かどこか、送り先をご存知の方、お教え下さいませんか。
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コメント
先生が以前、ブログで悼んでおられた冨江洋次朗さんのドキュメントが先ほど広島テレビのNNNドキュメントで放送されていました。
志を持っておられたお若い方がよりによって早世されるとは。
残された私たちが洋次朗さんの残された足跡を忘れてはならないと思い入りました。
投稿: ゆり | 2017年10月 2日 (月) 01時38分