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「夕凪の街と人と」「桜の国」「この世界の片隅で」

広島の人ならきっとご存知でしょうが、大田洋子は、広島の被爆者です。原爆直後まだGHQの統制が厳しく、原爆を語ることが禁じられていた時から、命をかけて書いています。1948年に「屍の街」で、被爆直後の人々を描きました。

そして、1953年10月に、「夕凪の街と人と」を講談社のミリオンフックスの一冊として出版され、以後絶版となっていました。1978年、大田洋子の文学碑が建設されるのをきっかけに、復刻版が三一書房から出版されました。それをこのたび私は入手することができました。これもアマゾンでとても高価でしたが。

当時、原爆スラムと呼ばれた地域に住んでいる人々のこと、それだけでなく、被爆者の実態調査する学生や被爆者医療や検診ににたずさわる医師、さらに非道な原爆を投下したアメリカを訴えるという原爆訴訟に立ち向かう人々、さらに原爆の悲惨さを金儲けに利用する人々などをも描き切っています。重く、息苦しく、しばしば読むのをストップせざるを得ませんでした。その渾身の作品が、本文中にしばしば出てくる「夕凪」のムッとする暑さをタイトルにした「夕凪の街と人と」なのですね。

さらに、大田洋子は、1940年に朝日新聞の懸賞小説に一等に入選しています。そのタイトルが「桜の国」です。これは、どうさがしても読むことができませんでした。

「夕凪の街と人と」「桜の国」。これらは紛れもなく大田洋子の作品です。

こうの史代さんの漫画「夕凪の街 桜の国」と太田洋子の作品のタイトルの近似はどうなっているのかと思います。でも、こうのさんの漫画は、数々の賞をもらっているのですから、それは出版界ではクリアされているのでしょう。きっと。

でも。山代巴さん編著の「この世界の片隅で」。こうの史代さんの漫画「この世界の片隅に」のタイトルの近似。二冊続くと、首をかしげてしまうのです。

山代さんの1965年に出版された「この世界の片隅で」には、大田洋子の作品にあるような原爆スラムと呼ばれた地域、福島町の被差別部落に住む被爆者、在日朝鮮人被爆者、胎内被爆による原爆小頭症、原爆により孤児となっ「原爆の子」、まだアメリカの統治下にある沖縄の被爆者などマイノリティーの立場の人たちのルポがこれでもかと出てきます。

そして、山代さんはこの本の前書きで言っています。「この本の名を、『この世界の片隅で』ときめました。それは福島町の人々の、長年にわたる片隅での闘いの積み重ねや、被爆者たちの間でひそやかに培われている同じような闘いの芽生えが、この小篇をまとめさせてくれたという感動によるものであります。現地の片隅での闘いが私どもを変化させた力は大きく、「広島研究の会」は、どこまでも現地に密着して、中断することのない研究を進めなければならないと思われます。・・・。」

こうのさんの「この世界の片隅に」も、賞ももらっているし、映画も大ヒットしているし、やっぱり出版会ではタイトルの近似はクリアされているのでしょうね。大田さんも山代さんもなくなっているし、ご遺族の間ではどうなっているのかも何にも知りませんが。でも、私の中でのもやもやは、続いているのです。


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コメント

やっぱり参考図書として、漫画の単行本の裏に書くべきではないでしょうか?原爆小頭症などの問題って必ず福島につながっていくのでは。すごく奥の深いところで研究なされているドクターですね。昔はエコー何てないから色々悲しいお話があったのは確かだとおもいます。色々な意味で新型着床前検査を議論されてましたが、 先生の立場は明らかに少しわかりました。すごく重度な異常が胎児にあった時決断を妊婦とドクターは決断しなければならない、だからこそ反原爆なのだと感じてます。産婦人科医は他の診療科以上に遺棄に近い死にもたずさわらないといけない。障害者差別になりうる死にも携わるというのは特権があります。それだけ大変な問題なんだと思います。

投稿: 愛ちゃん | 2017年9月 9日 (土) 09時00分

真面目な話をしている間にもプロ野球速報を確認、明日から横浜三連戦が勝負ですね。応援頑張りましょう。

投稿: 愛ちゃん | 2017年9月 9日 (土) 20時54分

「桜の国」(朝日新聞社 1940年)は買えないかもしれませんが、読むだけなら、最寄りの図書館にリクエストカードを出せば、所蔵している図書館から取り寄せて2週間だけ貸してもらえます。私の場合は、住んでいる自治体の図書館にはないですが、3冊とも県立図書館にはオンライン目録で、所蔵されていることがわかったので、リクエストカードを書いて、取り寄せてもらって借りようと思っています。
著者名やタイトルが分かれば、絶版の本でも、借りて読むことはできるので、諦めないでください。

投稿: 永添泰子 | 2017年9月11日 (月) 01時49分

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