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尾道②「彼らが本気で編む時は、」

「彼らが本気で編む時は、」トランスジェンダー、生まれた時は男だった、でも心は女で、今は女性として生きるリンコ。その彼女と共に生きるマキオ、そして母親が男と出て行き、育児放棄されたマキオの姪トモ。この三人を中心に、様々な社会が紬ぎ出されます。


すごく感動したので、帰り、パンフレットを買いました。広島へのまた各駅停車の列車の中でそれを読んで、ああ、パンフレットも買ってよかったと思いました。荻上直子監督の素敵な文章が書かれていました。

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20代の6年間ロスアンジェルスで過ごし、ゲイ・レスビアン・トランスジェンダーの友人たちが彼女の周囲の当然のごとく存在し、

「アジア人としてアメリカでマイノリティに属す私に、セクシャル・マイノリティである彼らはみな、優しかった。」

アメリカから帰国すると、とたんに自分の周りのゲイ率が減った。当時は、日本だからしょうがない、と思っていた。

「それから12年後、夫と生まれたばかりの双子と共に再びアメリカで暮らすことになる。当然と言えば当然だが、またゲイの友人が自然にできる。レストランで食事をすると、隣のテーブルの家族はどうやらパパが二人いるよう。友人のアパートの上の階に住むレズビアンの一人とすれ違うと、今からゲイの友達のとこに行って、インサミネイテッドして来るわ、と言う。」

「そして、帰国すると、再び、自分の周りのゲイ率が減る。しかし今回は、日本だからしょうがないとは思えなかった。あれから12年も経っているのだ。テレビでは「オネエ」とカテゴライズされた人々がきらびやかに活躍している。しかし、普通に生活していても出会わないのである。図書館に双子をつれて行ったら、レズビアンファミリーと仲良くなるなんてことはまずない。スポーツジムで、昔は男性だったと思われるトランスジェンダーの女性には遭遇しない。

オカシイ。違和感がある。

なぜなら彼らは、人類のあるパーセンテージ確実に存在するのだ。自然のこととして受け入れると、非常に違和感がある。

この国では、水商売か芸能人にでもならない限り、いまだに存在しづらいのではないか。そのことを公表してふつうの生活をするには、多くの弊害があるのではないか。」

まだまだ続きます、この文章を読んで、これだけでも買ってよかったと思いました。荻上監督のこの文章は、性教育の仲間に紹介しようと思います。

ああ、でも、この映画は多くの人が見るべなのですが、でも、リンコに相当するトランスジェンダーの人が見るには、つらすぎると思いました。彼女たちには、この映画を観なさいとは言えないと。余りにつらい差別が描かれ過ぎていると。育児放棄、娘を放り出して男と出奔したのに、リンコに向かって最後に言ったトモの母親の言葉は決定的に言い過ぎ。これを見たら、彼女の立場にある人たちはさらに傷ついて、立ち直れなくなるのでは、と。一番彼女たちが悩んでいる所なのですから。監督は、その胸をぐさっと正面から突き刺しました。

荻上監督は、この続編を撮らなければならないね、と思いました。もう一度、尾道が続きます。

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