トルーマンを投げ飛ばした女性2.
トルーマン大統領を投げ飛ばした女性は、林田民子さんと言います。明治37年生れで熊本で育ちました。
25歳の時にピクチャーブライド(写真だけで結婚)で渡米。しかし、渡米と同時に相手の男性に結婚生活を拒否され、離婚。結局ずっと独身で過ごします。渡米する船の中で柔道家太田節三と出会い、柔道を習います(一緒に行ったピクチャーブライドの女性たち8人と共に、徹夜で柔道着を縫って)。その後、道場を作った太田節三の元で柔道を習いながら、料理や茶道、華道、そろばん等の教室も開き、活躍します。
排日運動が激しくなる中、日米のために懸命に働きます。
『 節三も民子も日本人ではあったが、かつてはサザンパシフィック鉄道の役員であり、アメリカ独立戦争当時の大功労者であるバニング家とのつながりもあり、なおかつ世界平和基金財団の代表理事でもあることから、強制収容所送りを逃れていて、OSS(米国戦略事務局)の研究員として終戦後の処理方法の研究に携わっていた。
強制収容所からは多くの日系人の若者が志願兵として戦地に向かった。そして各地で勇敢に戦った。卑怯者の子孫とののしられながらも、特にハワイの二世部隊の働きには目を見張る物があった。』
『一九四五年七月二六日、ポツダム宣言が発表された。
日本についてのすべての情報はOSSが掴んでおり、天皇がポツダム宣言の受諾を決断した御前会議の内容も、その日のうちに掴んでいた。無条件降伏を唱える天皇に、阿南陸軍大臣が抗って戦争継続を主張したが、場合によっては天皇自ら銃を取って抗戦派を一掃する、との情報も漏れてきた。(略』
ポツダム宣言受諾の知らせを待っていたはずだったが、そこにとんでもないことが起きた。八月五日(日本時間八月六日)広島に、そして八月八日(日本時間八月九日)長崎に原爆を投下したのだった。八月一四日、日本はポツダム宣言の受諾を通告し、八月一五日に天皇自ら国民に無条件降伏を告げた。
『すべてが終わった・・・・。終わったように見えた。しかし、本当に終わったのだろうか?
九月二日、OSSの面々はホワイトハウスに招待された。日本への原爆投下を勧告した諮問委員会のスティムソン陸軍長官が同席し、トルーマン大統領から労いの言葉を受けた。
「諸君の努力のおかげで成功裏に戦争は終結した。皆さん本当にご苦労さん。我々の自由が侵される時は、また力を合わせて友に戦いましょう。では、アメリカの繁栄と皆様の健康を祈って、乾杯!」
音楽が流れ、フロアにはダンスの輪ができた。グラスを手にして、節三と民子が大統領に近づき、ともにグラスを目の高さに挙げた。それに応えてにっこり微笑んでグラスを目の高さに挙げた大統領に民子は小さな声で、
「大統領、なぜ広島、長崎に原爆を投下したのですか?」
「二〇万人を超える若いアメリカ兵の命を救うためです」
「日本はすでに無条件降伏を決めていました。どうして二〇万人ものアメリカ兵が死ぬのでしょうか?」
「抗戦派の抵抗も考えられ、これ以上戦争を長引かせては、若いアメリカ兵の命が危ないと判断したからです」
「大統領閣下、貴方は嘘を言われている。マリアナにある戦略爆撃司令部は、ポツダム宣言に対する返事があるまでは原爆の投下はあり得ない、と言明していました」
「それは若いアメリカ兵二〇万人の命を・・・・」
「大統領、貴方は日本が無条件降伏することをすでに知っていた。それなのになぜ原爆投下を命じたのですか?ヤルタ協定で日本に侵攻する予定のスターリンへの警告でしょう」
「そんなことはない。すべてアメリカ兵二〇万人の命を守るためだ」
「大統領、貴方には日本人の命などどうでもよかったのです。あの原爆投下によって二〇万人以上の人間が死傷することは、初めからわかっていたはずです。あなたが虫けら同然と思っている日本人が二〇万人死んでも、貴方にとっては問題ではない。人体実験をしたかっただけです。スターリンが警告を素直に受け取り、アメリカに逆らうとこの原爆がモスクワに落ちると・・・・。ただそれだけのために二〇万人以上の日本人を犠牲にしたのです。二〇万人のアメリカ兵の命を守るためではない!大統領、貴方は今世紀最大の悪魔です」
民子は大統領の胸ぐらに手を伸ばすと、きれいな背負い投げで投げ飛ばした。
叫び声とともに音楽が止んだ。慌てて民子を取り押さえようとしたスティムソン陸軍長官も民子の一本背負いで宙を舞った。全員が立ちすくんでしまった。
突然「バン!!」と乾いた音がして、民子の胸が赤く染まった。民子は胸に手をやり、音のした方向に視線を向けながら崩れるように床に倒れた。』
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コメント
日系一世がトルーマンをなげたおしたんですね。しかも、日系一世としてのプライドを感じられる気迫です。また誰もが感じられるのは、原爆投下は戦後覇権のための原爆投下であり、日ソ中立条約破棄と強制労働と残留孤児ですね。私はだからこそこの日系一世のご婦人の生き方は筋だと感じます。戦後処理の名目で作られたポツダム宣言やヤルタ協定等の不透明性能が各々右から左において不満なのは明らかではないでしょうか?いつも米国とロシアの間で苦しみをかきけして不良消化状態に陥ってるようにみえてなりません、我が祖父、赤ちゃんにとってはひいじいさんは戦後処理だと感じますから、原爆投下と被爆者は、最大の戦後処理の犠牲者なのではと感じます。やがては、アメリカもまともになりますと信じてます。
投稿: 愛ちゃん | 2016年5月27日 (金) 11時05分