若い女性の生理痛と高齢の方の膀胱炎3.
ピルの副作用がと言われる方は、たとえばどんな副作用が心配かと言うことが分からないままに、漠然とした不安を持たれていることが多いのです。
ホルモン量が多い昔の中用量ピルに比べて、低用量ピル、OCや月経痛の治療薬として保険適応されているLEPは、ほとんど副作用の心配はありません。少なくとも、毎月の月経をひどい痛みを我慢し続けることや、望まない妊娠をして中絶をするリスクに比べれば、そちらの方がはるかに深刻だと思います。
まず、飲んではいけない人があって、その方たちは処方しません。妊娠中の方や乳がん、子宮頸がんなどを発症している方やOCに過敏症を起こしたことがある方などはもちろんなのですが、その他にも。
1.50歳以上の方
2.35歳以上でたばこを一日15本以上吸う方。
(タバコはピルととても相性が悪いのです。と言うより、子宮頸がんなどすべての疾患にタバコはよくありません。だから、ピルを処方する前に禁煙をおすすめします)
3.前兆のある片頭痛をもっている方
4.コントロールできない高血圧の方
その他、重症の肝障害や肝腫瘍などの疾患のある方などなのですが。それは事前の問診でしっかり把握をして、お断りすることになります。
それらの方を除いて一番気をつけなければならないのは、血栓症ですね。血管が詰まるというもの。これがよく知られているのは、飛行機に長く乗った時に起こるエコノミークラス症候群ですね。じっとしていて、下肢に血栓ができ、歩き出したときにそれが飛んで胸の血管を詰まらせてしまうというもの。
その血栓症が起こりやすくなるというものです。そういうと、あたかも、ピルを飲んでいる人がみんな血栓を起こすようにとらえられがちなのですが、でも、待って下さい。その比率はとても低いものだし、それに血栓症が起こるのは、ピルだけではありません。よく知られている論文から、友人が作って患者さんに配っている表です。
若い女性でピルを飲んでいない人が血栓を起こす確率は、一年あたり、一万人に0.4から0.5人。妊娠した人が4.8から6.0人。そしてピルを飲んでいる人が1.2人から2.0人なのですね。
だから、ピルを飲まないで、妊娠した人が血栓を起こす確率の方の方がピルを飲んでいる人に比べて3から4倍も多いということになります。
でも、ピルを処方する人には、必ず、しっかりとその話をします。一万人に1人から2人と言っても、あなたは起こさないと誰にも言えないから、だから、みんなにお話ししますね、と言って、その注意をします。もしも怪しい自覚があったときには、すぐに受診をしてほしいと。早くに見つけることが大切だからと。
1.足・下肢のヒラメ筋の一部がピンポイントで突然痛い、むくむ、何か変だという感覚があった時。
2.胸・突然の息切れ、押しつぶされるような痛みがあった時。
3.頭・激しい頭痛。
4.口・舌のもつれ、しゃべりにくい
5.目・突然の視力障害
考えてみれば、これらの自覚があったときに早く受診をというのは、ピルを飲んでいない人にでも、どなたにも当てはまることではあります。私の所でも、これまでも足が変だと言って来られて事なきを得た方が数人いらっしゃいます。多くは、ピルの服用を中止しただけでおさまりますし、重症だと判断したときには、血管外科に紹介しています。
最後に、世界の中でどれだけの人がピルを飲んでいるか、そのグラブを示します。これは、富山の種部先生作のグラフです。日本の女性はこんな状況にいるということが分かって頂けるかと思います。
明日からは、高齢の女性の繰り返す膀胱炎についてお話します。
『河野美代子からだの相談室』
ここをクリックすると私の体の相談室と著書の販売があります。
ぜひ覗いてみて下さい。
| 固定リンク
コメント
ピルとタバコの話も納得しました。たばこは女性は特に吸ってはならないのが近日のニュースでよくわかりましたが。ピルとも相性がよくないんですね。子宮けいがんを誘発するってすごい問題ですね、やっぱり生理痛があるならいろんな問題をふくめて産婦人科にゆくべきですね。たばこの問題も産婦人科で治療してほしいです。恐ろしいと思います。
投稿: 愛ちゃん | 2016年1月 9日 (土) 12時09分