男性と女性の更年期5.
このシリーズを終わるにあたって、もう少し講演で話した男性の更年期について、話しておきますね。
男性にも更年期はあります。ただ、この分野については、女性に比べて、まだまだ医療が進んでいるとは言えません。いえ、それは日本において、と言ってもいいでしょう。
1996年、カナダのバンクーバーで世界エイズ会議が開かれました。HIVに感染している人やエイズを発症している人に、抗ウィルス剤を三剤併用することによって治療できるという、画期的な発表がなされ、世界中が拍手喝采をした会議でした。私もエイズのボランティアに取り組んでいて、それに参加しました。そのとき、展示会場で、男性のホルモン補充療法のパッチを見ました。
当時、エイズを発症した人は、免疫が下がって、元気もなくなると。それに男性ホルモンを補充して、少しでも元気になって頂こうというものでした。(なんと、それは陰嚢に貼るものでした。陰嚢は、目の上の皮膚と同じように、皮膚がとても薄くて、よく薬を吸収するのだと)
私はびっくりしました。当時、日本では、男性のホルモン補充療法なんて、まったくなくって、私自身も知りませんでした。で、サンプルのセットを頂いて、持って帰りました。(サンプルのセットには、カミソリまで入っていました。陰嚢に貼る時にヘアを剃るものだと)それを広島で話すと、先輩のドクターが、高校時代のクラスメートにもよく相談されると。その薬を個人輸入してみたいので教えてと来られました。で、私はサンプルの一つをお渡ししました。
でも、そのドクターが直接アメリカの会社に頼むと「日本は厚生省が許可をしていないので、日本には送ることができない」との返事があったとのこと。がっかりです。それからほぼ20年。いまだに日本では、そのような治療薬は許可されていません。
男性の更年期は、多くの方が丁度中間管理職の座にあって、上司と部下の間に挟まれ、ストレス一杯の時期。うつ病を併発するというか、うつ病と更年期の見分けが難しくて。それは、しばしば自殺を伴います。ですから、診療内科、精神科と泌尿器科と共同で治療されることが望ましいのです。精神科でも、ホルモンはどうなのかという意識をもっていただくべきと思うのですが、女性の更年期の治療についても、いまだによく理解していただけないこともあります。
余談になりますが、ある大きなな病院の精神科の部長さんと同席したことがあります。その時、女性の更年期の治療について「自然に枯れて行けばいいじゃないですか、ちがいますか」と言われて、言葉を失いました。だって、その方は、睡眠薬や抗うつ剤や、いっぱいお薬を患者さんに出していらっしゃいましたので。ああ、理解がないのだなあと痛感したものです。
ちなみに、こんなデータがあります。男性ホルモン、テストステロンと死亡との関係です。
男性ホルモンが多い人ほど、あらゆる死亡のリスクが低くなるというものです。私は、性同一性障害の方や、不妊症で子どもを望むけれど、性交がなかなかできないという方たちの治療薬して男性ホルモンの錠剤と注射とクリームを用意して使っています。
まだまだこの分野の医療の発展を願っています。
私は今、東京にいます。これから、夕方まで一日中勉強。夜は、息子一家や娘たちと食事をして帰ります。孫に会えるので、いまからドキドキしています。
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コメント
その精神科のドクター配慮がないですね。男性のホルモン補充療法の件はいがいです、AIDS患者の方や性的マイノリティの方に使いながらも男性不妊についてもつかえるよというのは以外です。気が遠くなるような高額手術のまえにこういうやり方があるよとうなら試してみたいですよね。ホルモンが足りていないという力説少し感じてしまいます。
投稿: 愛ちゃん | 2015年11月15日 (日) 10時55分
男性の更年期の治療方法にはびっくりこいてます。たしかにうちの主人は、更年期に近いことがあり、こういうホルモン補充療法があったとはびっくりです、様々なことを研究されているなんて感服いたします。大学病院の男性用ブースにその日規定量まで何時間も、一年半もすわって採集るよりも短時間だったかもしれません。とにかく色々な考え方や生き方があるんだと勉強させられびっくりします。色々また教えてください。男性の更年期の話は請け合いです。
投稿: 愛ちゃん | 2015年11月15日 (日) 16時17分