支援する側へのケア。
鳥取県のDV関連予算を見て、唸ったことがあります。
相談、一時保護、退所後、その他と別れているその最後のその他の項目の中の「研修・体制強化」のところで、「DV被害者等支援体制強化事業」として、県独自の取り組みで134万9千円の予算がついています。その事業内容は、
・民間スタッフを対象としたケース検討会を実施
・精神科医や臨床心理士などによる配偶者暴力相談支援センター職員等の二次受傷及び燃え尽き防止のための心のケアを実施。
・DV被害者に対し、相互作用的な自己管理や問題解決への変容を促すため、専門家によるグループカウンセリングを実施。
となっています。ここの二番め。配偶者暴力相談支援センターの職員等への心のケアをすると。被害者だけでなく、被害者を支援する人へのケアなのですね。これは、すごい。
私もたまにあるのですが。診療の枠を超えて、いわばボランティアの領域に入るかと思います。一生懸命、その人のためと思ってやっていたことが、全然身を結ばなかった、というか、逆に受け止められてしまったというか。そんな時、結構傷つきます。自分は一体何をしていたのかと思います。
ある患者さん。高齢の男性と若い女性との再婚でした。男性にはお金がありました。女性は男性のお金の管理というか、税金対策もあって、男性のお金を自分の財産の方にせっせと移しました。それなのに、なんと、その若い女性の方が癌にかかってしまったのです。それも、わかった時には深刻な状況でした。
病状が進んで、辛かったのでしょう。何度もなんども電話がかかってきて、私はもちろん訪ねて行ってお話もするし、電話でも長時間お話もするし。彼女だけでなく、妻に先立たれそうな男性の相談にも乗っていました。
そしたら、ある日突然、彼女が私に向かって「河野美代子が、主人をたぶらかして、私のお金を取ろうとしている」と言われたのですね。私は、びっくりしました。私は医者ですから、それは彼女の病状が進んで、脳にも障害をきたしているからだと冷静に受け止めることができました。が、気持ちのいいものではありません。一歩引いて、距離を置くようになりましたね。
若い女性への診療、ケアで母親から恨まれることもあります。彼女のためにと思ってしたことで、くってかかられることもあります。
まあ、こんな世の中ですから、いろんな人がいますので。仕方ないわね、いつか彼女にもわかる時が来るでしょうと、そんな心境になれるのに、長い間の経験が必要でした。
ケアをする側の「燃え尽き防止」。こんなことに予算をつけて、実行する鳥取県は、なんと素晴らしいことかと拍手を送ります。
私は今日の10時から、大野6区の集会所での女性の癌の講演をします。その後は、また、ボツボツ家の掃除に取り掛かりながら、頭を叩きながらの暗記の作業です。
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コメント
やっぱり支援する職員だって人間だから恨まれて、最悪殺されると感じます。それに奥様が末期ガンのご夫婦、心配ですね。お医者様だってもしかしたらガンですとご主人や家族に告白したために親族などからバッシングをうけるかもしれません。我が家もつい最近まで不妊治療を成功させたドクターに主人の悪口を言いにいかないか、ドクターに文句を言いに大学病院の研究室までいかないかと心配だったんです。本音を言えば、母親と娘って複雑で母親がドクターを逆恨みして殺人あるのではと感じます。患者さんの旦那さんにまで、優しくされるのは素晴らしいことですが、患者や家族は時たま豹変するからお体をきおつけてください。患者本人や家族や配偶者からの包丁ぶっ指し事件などはお医者を信用してないのだな、あってはならないと感じながらも、その患者さんの人生を感じます。
投稿: 愛ちゃん | 2014年11月16日 (日) 12時41分
>ケアをする側の「燃え尽き防止」。こんなことに予算をつけて、実行する鳥取県は、なんと素晴らしいことかと拍手を送ります。
そこまで考えてあるプログラム、本当に素晴らしいですね。
投稿: クロス | 2014年11月17日 (月) 07時11分
某県の児童相談所で勤務していた頃、職員6名のうち3名が年度途中で精神疾患になり、内2名は退職してしまいました。子を虐待する親からの暴言は仕方ないのですが、それよりもストレスだったのは、多くの関係機関からの脅しでした。法的な問題やシステム的な問題を感じております。
投稿: パ男 | 2014年11月23日 (日) 13時50分