これらの血栓症のリスクは低用量ピル・OCはどれでも同じなのですが、この度、ヤーズが大きく報道されたのは、ヤーズが保険適応の薬であるということも一因でしょう。ヤーズは、欧米では低用量ピルとされていますが、日本では、「保険の効く低用量ピル」よりも、「月経痛治療薬」として認可されています。その「治療薬」で血栓による死亡が出たということで、大騒ぎになりました。
でも、繰り返しますが、ほかのOCでもそのリスクは同じなのです。
厚労省の指示により、製薬会社では、このようなカードを作り、処方している医師を通じて、内服している方に配ることになりました。これを渡す時に、再度血栓症について説明をし、注意を喚起しています。このカードの裏には、「医療機関の方へ」と印刷され、「この方は、○○から、ヤーズを服用しています」と書かれています。
しかも、この血栓症は、長くOCを内服している人に起こるのではなく、そのリスクは、飲み始めて程なく3ヵ月以内に起こることが多いのですね。そして、いったん止めてまた内服する時にもまたはじめと同じリスクに戻ってしまいます。今回の報道以来、いったん止めてみたいという患者さんが結構あります。
以下、私たちと同じネットワークで蓮尾豊先生のメール相談の例を転載させて頂きます。とても配慮が行き届いた回答と思いますので。
『○○に住んでいます。22歳でヤーズを服用しています。服用し始めた
のは、2.3年前からです。副作用などはまったくありませんでした。
今、ヤーズが話題になっていて怖くなっています。親から、とりあえず、一回
やめてみたら?飲むのを辞めてみて、生理痛がどれくらいのもので、ピルが必要
かもう一回悩んでみたら?という意見も家族の中であります
ヤーズを飲むようになってから生理痛はすごく楽になっています。
一回やめてみて、やっぱり無理やったから、もう一回飲み始めるというのは可
能でしょうか?
辞める際はどの様に辞めるべきでしょうか?
どこに相談したらいいのかわからず、不安でした。よかったら相談にのってく
ださい。
【以下が私の回答です】
お問い合わせの方へ
ヤーズによる血栓症のことがNHKや新聞で報道され、すごく不安が広がっています
ね。しかし、報道は一方向のみから見たものであり、一般の方が読んだり見たり
すると誤解するのではと、私たちもとても心配しています。何故なら、全く副作
用もなく、ピルを飲んで確実な避妊だけでなく生理痛の改善や多くのメリットを
感じている女性まで服用を止めては本当にもったいないと思っているからです。
あなたの質問に対する回答に移ります。
まずあなたがヤーズを飲む必要があり、ヤーズにより月経痛の改善がみられてお
り、今何の症状もなければ止めるべきではないと思います。
もちろん止める場合には、ヤーズを含めたピルはいつ止めてもいいのです。シー
トの途中で止めてもその分、生理が早く来るだけで何の問題もありません。
ピルによる血栓症は、例外はありますが多くは飲み始めて3ヵ月以内に起きるこ
とが多いのです。今回の3人の方はこれ以上の服用期間の方もいますが、血栓症
はピルだけが原因で起きる病気ではないので、いろんなケースはあります。
あなたは2年間服用しているのでリスクはとても少なくなっています。
止めない方がいい理由はもう一つあります。一度止めて、再開する場合には、ま
た飲み始めにリスクが高まるのです。このことからも、リスクが減少している今
の時期に止めるのではなく、継続することをお勧めします。
実は血栓症はピル以外にもとても多い病気なのです。
2012年に公表された米国の有名なデータがあります。
ピルを飲んでいない女性10,000人の中で1年間に血栓症になる女性は1~5人で
す。ピルを飲むと3~9人に増えます。しかし、妊娠初期では5~20人に増え、
お産の後の12週間は何と40~65人にも増えるのです。
そしてタバコとピルの比較では、ピルの死亡リスクを1にすると、タバコは167倍
というWHOの有名な報告があるのです。ピル服用者の血栓症はニュースで流れ、喫
煙女性が血栓症になってもニュースにならないのは何故なのでしょうか?
こんなこともよく考えて下さい。
もちろんピルを飲んでいる時にはわずかに血栓症のリスクは高くなりますから、
次の5つの症状には注意して下さい。喫煙者、肥満、高齢者、長時間の航空機な
どの場合は、ピルを飲んでいない人でもこの5つの症状は大事です。
1.強い腹痛(普通の腹痛でなく、転げ回るほどの)
2.胸の痛み(これも胸の強い痛みで息苦しさを伴うもの)
3.頭痛(普通ある頭痛でなく、視野の狭窄や光がちらつくなど)
4.視覚障害(これも視野の狭窄やものの見え方がおかしいなど)
5.強いふくらはぎの痛み(足が張る程度ではなく、すごく強い痛みであり、痛
い方の足が腫れている、皮膚に変色が見られるなど)
これらの症状があったときにはヤーズの服用を中止し、主治医にすぐに連絡をと
って下さい。または、内科、できれば循環器を専門にしている内科を受診し、ピ
ルを服用していることを伝えて診察を受けて下さい。
この様なことを覚えておけば万が一の場合でも重症化することはまずありません。
欧米では日本よりも血栓症が多いにもかかわらず、15~52%くらいの女性が今日
もピルを飲んでいるのです。』
以上、引用終わります。この項、まだ続きます。
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