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性教育バッシング⑤国会と文科省

 様々な地方議会よりも先行してバッシングが行なわれたのが「国会」の場です。20002年6月当時の民主党議員を初めとして、78人の国会議員により「行き過ぎたジェンダーフリー教育や性教育から子どもたちを守るために」「健全な教育を考える会」(代表幹事は、それまでも、国会のさまざまな場で根拠のない質問と意見を繰り返していた山谷えり子議員)が発足しました。

 同年8月、2001年から配布されていた中学生向け性教育パンフレット「思春期のためのラブ&ボディBOOK」(厚生労働省所管の「母子衛生会」作成)を絶版とし、在庫は回収という措置が取られました。

 20003年2月6日、日本の家庭を守る地方議会の会主催「ぶっばせ!ジェンダーフリー~男女共生・児童の権利の政治的歪曲を許さない緊急集会」が開催され、高橋史郎明星大学教授と山谷えりこ氏が講演をしました。

 そこに参加した人たが中心となって、各地方議会での根拠のない発言と報道が繰り返されることとなりました。

 そして、文科省は、これらの動きを受けて、指導要領の改訂により、「ペニス、ワギナ、セックス、性交」という言葉を教科書から消し、それらの言葉は使用禁止とされました。中学生に避妊を教えることも禁止です。

 エイズなどの性感染症やその予防は中学生で教えることになっていながら、性交という言葉も使えない、それらの言葉を使う外部講師の講演も禁止というそのような通達により、現場では、なんにもできない!という悲鳴やあきらめが広がりました。

 広島の地において、私は地方の経済界に売られる雑誌で、びっくり仰天の名指しの記事を掲載されました。例のごとく「若者たちにセックスをあおって、家庭を崩壊させ、革命を狙っている」という、お決まりの調子で、何の根拠もなく。

 医療の現場で、望まない妊娠、人工中絶、性感染症などが繰り返される若者たちに警告を発するために必死で行って来た性教育を、このようにゆがめて掲載されて、ほんとうにびっくりでした。その記事は、当時の広島市PTA協議会会長名で書かれた連載でした。

 その内容のあまりのひどさに、私は名誉棄損でその出版社とPTA協議会の会長を提訴しました。

続・いま“生きる底力”を子どもたちに!―性教育バッシングに物申す 産婦人科医・河野美代子の熱烈エッセイ&トーク

 診療や講演をしながらの、長く苦しい裁判でしたが、その闘いの報告は、この本に掲載しました。今読み返してみても、涙が出るほど悔しい思いと、負けないぞ!!とい思いで頑張り続けた裁判です。沢山の資料を集め、裁判官たちが良く分かって下さいました。多くの方にも支援して戴きました。PTA協議会の会長を相手にするということは、どれだけのリスクを背負うかということが問われることでもありました。が、それまで一方的な情報の提供で、ゆがめられ続けて来たPTA活動に、少しでも警鐘を鳴らすことができて、本当によかったと思っています。

次回、今の性教育の現状について、いまだに続くバッシングの影響などを述べます。
 

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コメント

ここ十年ちかくの間で七養護学校の事件と小児甲状腺疾患に関する問題がじつは、介護福祉士 の筆記国家試験にでてます。介護福祉士の事件にでさえ時事問題がでてるので介護福祉士を受験する方は河野先生のブログをみて加点につなげてみてはいかがでしょうか?それくらい社会問題になっています。AIDSをおしえるのに感染経路をおしえるなってことはやっぱり問題だなとおもうとともに誰もみなAIDSにならないとどこかでおもいこんでるし、赤十字の献血を検査がわりにつかい、被害がでてしまったのはほんとにバカらしいです。じつは赤十字の献血は体外受精につかわれてます。本当に今回の被献血者が みつかるまでひやひやでした。本当に献血を検査がわりにしないでほしいのとみんなやっぱり保健所で検査をすべきだとおもうが、やっぱりAIDSをしらなすぎるのは問題です。山谷えりこ議員は、周りが困るようなかなりイデオロギー丸出しの質疑が見受けられるなと国会中継を拝見すると感じながらもそんな連中に加担するマスコミと裁判をした河野先生のご心痛はいかばかりかとおもいます。やっぱり学校や職場や労組まできちんと性教育をうけるべきだとおもいますが、いくら労組に性教育をうけろと一人の組合員がいったとしても男社会でできた学校、職場や議会や労組だから性教育をうけたがらない。我々夫婦は所属する労組と労組執行委員会に性教育をうけろと要求してきましたが、やっぱり河野先生と同じように様々な嫌がらせをうけて治療が遅れそうになったこともあります。性教育をうけろというだけでバカらしい嫌がらせはいかばかりかとおもいます。女性の体と心を知ってほしいと何度も要求しましたが無理でした、組合もやめましたが、今もめちゃくちゃな嫌がらせが止まりません。バカらしいです。産婦人科の医療を支えるには社会の協力があってこそ、それができないのは治療を続ける上で苦痛です。ましてやAIDSやその他性病や望まない妊娠や男性不妊は自分はないとみんなおもいこんでることじたい悪です。こんなに退廃してる社会はないと思うし、こんなに男性社会がへんないみで産婦人科医療に悪影響を与えてることはないのだろうかと最近感じます。性教育は学校できちんとしておくべきだし、社会にでてからも職場や労組もきちんとしておくべきなのにそれをきちんとうけたがらない労組は女性差別主義の組合だとおもいます。

投稿: 愛ちゃん | 2014年1月 7日 (火) 16時20分

河野先生、想像を絶する大変な闘いをしてこられたのですね。
「いま(生きる底力)を子どもたちに!」と「続いま(生きる底力)を子どもたちに!」を注文しました。
是非読ませていただきます。
先生の正しいと信じる道を突き進む生き方を心より尊敬します。

投稿: のぞみ | 2014年1月 7日 (火) 21時49分

お疲れ様でしたの一言しかありません

投稿: もみじ日記 | 2014年1月 8日 (水) 02時19分

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