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性教育バッシング④ジェンダーフリー教育もセットでバッシング

 性教育へのバッシングと同時になされたのが、「ジェンダーフリー」へのバッシングです。ジェンダーフリーとは、性別によって差別を受けたり、生き方を制限されたりすることなく、すべての人間が多様な個性と能力を発揮できることを目指すものです。

 ところが、これを「性別をなくす」ことであるとか、「フリーセックス」を推奨するものであるとか、意図的にゆがめられて宣伝されました。あちらこちらの地方議会で「同じような意見書採択が試みられ、実際に採択されたところもあります。

 例えば、当の七生養護学校に乗り込んだ都議の古賀俊昭氏は、2013年2月14日、都議会一回定例会で

「ジェンダーフリーは、単純に男らしさ、女らしさを否定する次元の問題ではなく、日本人の人格を否定し、日本や家庭という共同体を敵視したあらたな革命運動であるとの、この思想の本質と恐ろしさを認識することが何よりも肝要であります。そしてこの新しい革命運動のもう一つの顔が今日、全国各地で問題となっている、常軌を逸した、異常な、露骨な学校での性教育であります。」

と述べました。

 2003年7月に鹿児島県議会で採択された、ジェンダーフリー教育に反対する陳情では、具体的な県・市・学校名を上げ、「男女一緒に上半身裸で身体検査をした」「ランドセルを男女ともに黒で統一した」「高校で体育の時間など男女が一緒の更衣室で着替えをさせられた」「修学旅行で男女が一緒の部屋で宿泊させられた」とっ言った例が挙げられました。

 これに疑問を持った「南日本新聞」の記者たちがチームを組み、具体的に名前の挙がった県・市・学校に取材をしました。そして、そのような例はどこにもないと明らかにしました。

8月5日付で『"極端"現場どこに―鹿児島県議会採択の「ジェンダーフリー教育反対」陳情』『「ジェンダーフリー教育反対」関係自治体・学校は否定―男女一緒の身体検査、更衣、宿泊』と見開きのページで掲載しました。

 私も、その記者の方とお話ししたことがあります。これはおかしいと疑問を持ち、名前が上がったすべての自治体と学校に取材をしたと。それは、たいへんな作業であったと。そして、どこにもそんな例がないことを確認した上で、その質問をした議員に取材、そしたら、それは筑波大学の中川八洋教授の冊子「これがジェンダー・フリーの正体だ―日本解体の革命が始まっている」(日本政策研究センター)を根拠としたものであると聞き出しました。

 そして、記者は中川氏に会いました。中川氏は「実際学校には当たっていないこと、さまざまな資料から引用しつつ書いたこと、それぞれの事例は明星大学の高橋史郎教授に確認した」と記者に答えています。

 そこで記者はさらに高橋氏に取材をしました。そしたら、当該の学校に確認したわけでもなく、「東京女性財団が出したジェンダーフリー教育のビデオを見た」と言い、さらにそのビデオを確認すると、どこにもそのような事例はないことが指摘されています。

 この中川八洋氏の冊子は、広島県のPTA協議会の大会でも、多く売られました。それに、全国でこの冊子を使って、議会での意見陳述が行われました。

 広島県でも、ある議員が、議会で「小学生にピルを勧めたのだ」と演説をし、教育委員会から「そのようなことはあってはならないことです」との答えを引き出しました。実際、どこの誰がどのような現場でピルをすすめたのか、そのような具体的なことは何もなく・・・。

 「ウソも百回言えば」の如く、発言と報道が一斉になされ、性教育やジェンダーフリー教育へのバッシングのうねりとなったのです。

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コメント

K都議は日野市市内にある明星大学や国立の筑波大学まで足を伸ばして自分に同調させていたのは初めて聞きました。本当にご自身のイデオロギーを活かした活動なんだとおもうが行き過ぎですが、それに同調する大学教授もよくないなとおもいます。地元のものが河野先生のブログでコメントをだすのはあまりよくないことですが、K都議には公務熱心をもっと違うところに目をむけていただければさいわいです。毎回河野先生のブログを拝見いたしますと自分の視野の狭さや自戒の念になり新鮮です。知らない部分があり勉強でき素晴らしいとおもいます。また三多摩の偏狭の地の日野市のおかしさや危うさを日本全国にわかっていただく機会ができ幸せです。日野市は今ごみ問題でゆれてます。石田地区のダイオキシン汚染は顕著です。本当にダイオキシンや放射能を石田地区で随時計測し、日野市の政治問題を解決していきたいです。本当に福島の瓦礫や小金井のごみを受け入れに前向きな前馬場市長やK都議や大坪市長や小金井の稲葉市長は頭がおかしいのではと感じます。ダイオキシンや放射能汚染が自らの妊活と密接なだけに本当にごみ問題を解決してくれたらまた、K都議のイデオロギー強要がおさまってくれたらさいわいです。

投稿: 愛ちゃん | 2014年1月 6日 (月) 11時17分

先生お疲れ様です。

先生の著書、「初めてのSEX」と「ジェンダーフリー•性教育バッシング」を昨日購入し読み始めています。

私は体の成長が早かったのと性の目覚めも早かった為、性教育を受ける前に世の中に蔓延る性の情報を受け取りました。小学3年生の頃に、叔父が隠し持っていた裏本(一般の書店ではなく繁華街で違法に製作され売られている無修正のセックスが掲載された60ページ程の本)や成人向け漫画で初めて、セックスに触れました。中学生の頃には裏ビデオも学校で回し見されていました。(おそらく現在はそれ以上でしょう。スマホで無料で無修正動画がすぐに見られますから)

私はその、商品として販売されているセックスで、まさか子供が産まれてくるとは、思いもよりませんでした。

妊娠のメカニズムは知りませんでしたので、子供はセックスとは関係なくきっと愛情深い夫婦に幸運のように自然に授かるもの。としか思っていませんでした。

いざ学校で性教育を受けた時に、ショックを受けました。
あのいやらしい気持ちでするセックスで子供が産まれてくるなんて。と。

自分のこの、いやらしい気持ちと子作りの接点が見出せず、混乱しました。今のパートナーとの関係が出来て、とことん話してようやく、互いのいやらしい気持ちと折り合いがつきました。

性教育が無かったら、子供が出来るとは知らずに幼馴染の女の子(ふざけてズボンを脱がされた事がある)とセックスをしていたのではないかと思います。合意も何もありません。自覚も無いんですから。
加害意識も芽生えていません。とても悲しい悔やみきれない事が起っていたかも知れません。

個人的には親が子に性教育をするのが一番いいと思っています。家の本棚に「初めてのSEX」があって子供が興味を持ったり開いた形跡があったらそれについて話す。というのが理想ですが、

それを教育出来る親がどれだけいるだろう。


性教育用の人形をダッチワイフと見間違えたような人のセックス感覚は誰に教わったものなのか。
事実を捏造してまでバッシングをする政治家の思惑は?

先生の本を読み進め、ブログの更新も見守っています。

投稿: 一般男性(42) | 2014年1月 6日 (月) 17時57分

私は正直言って記者の方はあまり信用していないのですが,この記者はよく取材されましたね。
それに引き替え,資料を読んだだけで現場取材をしなかった冊子の作成者のいい加減さ・・・。

投稿: もみじ日記 | 2014年1月 7日 (火) 01時43分

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