性犯罪の被害者について。③検察官の言葉
私の疑問は、検事や裁判官など、司法の現場にいる人たちが、性犯罪について、法律や判例以外のところで、どの程度知っているのか、知ろうとしているのか、また、研修をしているのだろうかという、そのことなのです。
被害者の心理やその後の後遺症、生活などについて、もっと言えば、ジェンダーの視点、女性差別について、分かっていないのでは、ということなのです。
これは、警察の現場では、ずいぶんと努力され改善されてきていると実感します。
以前のことです。私の患者さんの件で警察から電話がかかって来ました。
「あの、○○子の事じゃけど。あれは、この事件の前には処女だったんですかのう。」
「それがどうしたのですか?」
「まあ、それまで経験がないんじゃったら、本気で聴いてやらんと行けんかと思いまして」
本当にそんなことを言われたのです。私は怒りに震えました。
そんなお粗末な状況でしたが、変わってきている実感があります。県レベルで24時間性犯罪のフリーダイアルが設置され、原則的に女性の警察官が対応します。でも、これも時間外や休日に電話すると、当直の男性が出てきてびっくりすることもあります。これは、まだ改善の余地があります。
性犯罪の被害にあった人や家族が、または被害者を診察した医師が、どこに相談をしたらいいのか迷います。強姦救援センターは24時間相談に乗るという状況にはありません。
警察に相談するといっても、どこの警察署に行けばいいのか、そこからもう敷居が高くなります。まず性犯罪の相談フリーダイアルに電話をし、どこの警察署のだれだれを尋ねて行くように、という指示があれば、少し敷居が低くなります。そして、そこには必ず女性の警察官が待機してくれています。その警察署にトレーニングを積んだ女性警察官がいない場合は、県警から派遣された女性が待機してくれます。
事情を聞くのも、主に女性の警察官が対応してくれます。しかし、これも初めから終わりまで女性だけということではなく、男性の上司の指示や、直接複数の男性が事情を聞くという場もあります。
私は、話を聴くのが女性でなければならないとは思っていません。きちんと被害にあった女性の立場を理解し、その心理状態まで配慮してくれれば、性は問わないとも思います。
今回の高校生の事件の場合も、警察は本当によくやってくれたと言われています。
でも、担当になった検事の「あまりつらそうな顔をしてないじゃないですか」という発言は、絶対に許せないと思うのです。複数の男たちに襲いかかられ、その後の体の変調でさらにつらいことになって、そして事細かく事情を聴かれるという、この一連の中で、彼女が精いっぱい自分を保とうとするその姿勢をこんな風に言われたのでは、たまったものではありません。
彼女は、この言葉にさらに傷つけられています。
さらに、たとえ集団強姦事件として立件できなくとも、まだその県の「青少年健全育成条例」もあるでしょうに。
加害者に何にも責任を問わないで釈放して、その結果、かれらは被害者に対してさらに傷つける行為を続けています。
このブログは、被害にあった女性も読んでいます。もしも、皆様からの彼女に対してのメッセージがあれば、コメントに寄せて下さいませ。また、検察に対して何かできないかと思っているのですが、ご意見、助言があればそれもお願いします。
この項、まだ続きます。
私は今日の診療後は京都に移動です。明日は福井での講演です。中学生にお話しをします。まだこれからの彼ら、彼女たちが性についてのしっかり視点を持ってくれるように、頑張って話したいと思います。
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コメント
被害にあわれた女性へ
どうか、あなたが自分を大切にするために、自分の大切な人のために頑張ってきたことが、社会的に認められ、あなたを傷つけた男たちが罰せられることを願っています。どうすればいいのかわからないけれど、きっと、方法があり認められると思う。
あなたは何も悪い事をしていない。あなたが傷つけられるのは許されないことと、大勢の人が思っています。きちんと向き合い頑張っているあなたを応援しています。とてもすてきな女性だと思います。
あなたの心と体が心配です。こうの先生を始め、周りのすばらしい方たちに頼って、早く苦しい思いがなくなるように願っています。
投稿: | 2013年12月18日 (水) 17時00分
夜遅くにすみません。
そして、初めまして。本人です。
一昨日の夜中、初めて記事を読ませていただきました。
お母さんと2人で思わず泣いてしまうほど嬉しかったです。
先生、ありがとうございます。
これからどうなるか分からないけど、
まだ頑張れるなって思いました。
また、私宛にコメントを残してくれた方々。
私は、沢山の人に支えられていることを実感できました。本当にありがとうございます。
これからどうなるかなんて想像もつきませんが、前向きに頑張ります!
投稿: | 2013年12月19日 (木) 00時17分
私は幼い頃、電車や人混みで痴漢されました。幼いのでそれが何なのかわかりませんでした。学校にあがる前、大好きな親しい女の子と家でふざけていて、ズボンを脱がされパンツを下ろされそうになり必死で押さえました。相手はふざけているんです。でも今でも無言で体に触れられるとそれが誰であれ体が硬直します。親しみを持って接してくださる方や握手を求められるのが怖くて仕方がありませんが、やんわり拒否していて誤解され、なんだアイツ。気取りやがって。と反感を買って急に逆上される。そんな事が何度もあり、誰にも会いたくない。と思う時期があります。
パートナーは過去強姦された事を告白してくれました。互いに人に接する距離感を図る事が難しいです。でも人一倍、愛情やスキンシップを求めています。二人で解決したくて、沢山考え調べ行動していました。過去あったことや、報道を見ていての憤り、河野先生の話など話しているうちに、互いに過去の自分を愛そうよ。と。そして、この憤りを誰かに捻じ曲げてぶつけるのは、それは精神的なレイプの加害者になる事だよ。言われのない誹謗中傷はレイプ行為だよ。と私達は話し合いました。自分達に出来る事を考えると、一人でもそういう被害に会わなくていいように自分に出来る事をしよう。それで過去の幼い気持ちはきっと消えてなくなるよ。
と行動をする事にしました。私は男性なので男性の性に悩む人に可能性を提示したり現実を伝えたり仲介をしたり助ける事が出来る。
一人でもハラスメントの加害者にならないよう、ブレーキがかけられるようにアドバイスしたり気を付けたり、ひとりよがりの性や行動は多くの傷を作る事を、気付けるよう自分に出来る事をしよう。それを生き甲斐にしよう。と決心しました。
長文で場所を濁しているかもしれません。勇気を持って行動しているご本人、先生、みなさんに感謝します。頑張ってください。頑張りましょう。
投稿: 一般男性(42) | 2013年12月19日 (木) 07時25分
被害にあわれたお嬢さんへ
同じ女性として、子を持つ母親として、
怒りと悔しさでいっぱいです。
そして
あなたのことを本当に大切にいとおしく思います。
前向きにがんばるとおっしゃるあなたを尊敬します。
あなたの涙を直接ぬぐってあげることはできないけれど、
私はあなたを守りたい。
投稿: | 2013年12月19日 (木) 11時28分
被害にあわれた娘さまへ 前の方と同様娘をもつ母として許せない気持ちでいっぱいです。あなたは何も悪くはありません。がんばってと簡単にはいえないけれどまた頑張れるかなっての言葉に少し安心しました。くじけずに生きていってくださいね。あなたを応援しています。うまくコメントできないけれど。わたしもあなたを守りたい。
投稿: アレメイママ | 2013年12月19日 (木) 21時18分
私も性犯罪被害者です。でも私は、何もしませんでした。あなたの勇気ある行動に、心より敬意を表します。
言い訳でしかありませんが、当時は、今よりもずっと情報が少なく、未成年だった私には訴える先もわからず、相談できる人もいませんでした。
今、こうして、ネット社会の中で、いろんな人とつながりができていくことは素晴らしいです。でもそれも、あなたが声をあげなかったらできなかったつながりです。情報化社会を利用して、たくさん、あなたの味方がうまれています。私も微力ながら、その一人になれればと思います。これが、世論や検察も動かす力になればと思います。
私はその経験を、「なかったこと」にして、今は2児の母になっています。意識的には「なかったこと」ですが、こういう話を聞くと、無意識に涙が出ます。
あなたの心の傷を消し去ることはむつかしいけど、少しでも癒えていくことを、お祈りしています。
投稿: | 2013年12月20日 (金) 11時30分
担当検事のあの言葉は許されないですね。
勉強ができて検事になったのでしょうが、人として大切なものを得れないままに大人になったとても可哀相な人ですね。
どんなに辛く悲しく苦しいおもいをしても、心に強く決断した人は、心のなかの色々な思いを隠して前に進もうとするのなら、弱々しい弱者でなく、戦う決意が現れていると思います。
そんなこともわからないのですから、何をもって人を裁けるのでしょうか。
あの検事とって裁判とは、人の人生でなく、勝てる裁判で自分の評価を上げるシステムだけなのでしょうね。
証拠の改ざん、冤罪は、きっとこのような人として未完成の検事がいるからおこるのでしょうね。
警察の調書を見て、検事は判断したのでしょうが、検事として本当の仕事をしたのか疑問ですね。
法律の素人、社会的な弱者、未成年者には、警察の調書の段階から弁護士のサポートは必要だと思います。
投稿: やんじ | 2013年12月20日 (金) 15時13分
ここ数日、怒りに震えるような気持ち、そして祈るような気持ちで河野先生のブログを毎日拝読しています。高校で教員をしている者です。
あなたはなにも悪くない。あなたの尊厳は、一つの出来事によって傷つけられることも、汚されることもない。あなたや、あなたを愛するすべての人にとって、大切な大切なその存在を、遠くにいてもとても近くに感じます。
その存在を、尊厳を守るために、もし私にでもできることがあるならば、いつでも立ち上がり、声をあげるつもりです。きっと、そう思っている人がたくさんたくさんいるはずです。
どうか、がんばりすぎないでくださいね。
投稿: maricome | 2013年12月20日 (金) 16時02分
先生 おはようございます。
被害に遭遇された方へ 少しでも手助けになればと思い 私自身が調停や裁判や弁護士との打ち合わせで役立った事をお勧めしてみます。
記録を家族の方と毎日つけてみては如何でしょうか?
カレンダーやダイアリー帳など なるべく年月日が入ったものが望ましいです。
事実を記載していき 出来ればその時の気持ちを書き込んでいきます。
長くなりそうな場合は日記帳を別につくり記録し続けます。
家族の方は 周りからも記録していきます。
食欲がないとか 夕食をいつもなら笑顔で話題も友人との笑い話しをしたが 今日は無口でうつむきがちで時折涙ぐんでいたので心配だったなどです。
また 相手側の服装や言動も出来るだけ詳細に記録しておくのも大事ですが これはまた違うノートに書く事をお勧めしますが 本当に辛い作業です。
私は記録しながら怒りや無念が溢れて幾度も泣きながらの作業でした。
あった事実は文章にすると 他人も我がことのように体験したり感じたりします。
辛いですが 努力されてみては如何でしょうか?
私は役に立ちました。
投稿: 雛菊かあさん | 2013年12月21日 (土) 09時01分
追記です。
日記やスケジュールに嫌な目にあった時の事実や心境を書く時に重要なのは 本来なら 普段はその時間に何をする予定だったかも記録することです。
私なら買い物や掃除や町内会の行事に参加など。
でも 身体や気持ちが その場に追い付かなかった 辛さで涙して人から大丈夫?と問われたなど 社会生活もままならない状況は刻銘に記載しておくのが 良いかと思います。
嫌な気持ちにさえならなければ 普段通り 明るく元気で笑顔で家族や友達と過ごせたし 将来的にも繋がっていくはずです。
何がどう阻害されているかも 私は重要に思います。
こんなに辛い出来事があっても 全て糧になり自分の財産になります。
貴重な経験 重大な経験は いつかは社会や人の為に活用できます。
闇に光 夜に朝
今は大変な辛さでいっぱいですが 必ず強さと優しさが身につき貴女を守ると信じています。
投稿: 雛菊かあさん | 2013年12月21日 (土) 10時06分
言葉が見つかりません。検察官の心ない言葉。逮捕、釈放された男性の誹謗中傷。
辛そうな顔をしてしまったら涙がこらえられない。そんなやるせない気持ちを、なぜ理解しようと、してくれないのでしょうか?
怒りにうち震え、言葉が見つかりません。
こんなコメントしかできない自分にも腹が立ちます。
ひたすら、お心の傷がいえますように、祈っています。
投稿: あやめ | 2013年12月21日 (土) 20時38分