ダ・ヴィンチ・ロボット手術
7月25日の夜は、臨床産婦人科医会でした。
講師の講義が始まる前の写真です。当日の演題は、「ダ・ヴィンチを用いた婦人科手術の新展開」。演者は東京医科大学産科婦人科井坂恵一教授です。
「ダ・ヴィンチ」。レオナルドダ・ヴィンチが初めて作ったとされる「ロボット」。ロボットによる手術のお話しです。腹腔鏡による手術は今や一般的に知られています。その腹腔鏡を離れた場所で画面を見ながら操作するという手術です。手の指にセンサーをつけ、指の動きに応じて、ロボットがお腹の中で動きます。
動画で、その見事な手術を見せて戴いて、うなりました。ロボット手術により、開腹と同じような手術が、患者さんの侵襲は最少でできると。これまでの腹腔鏡は、主に良性の手術であって、がんの手術、リンパ節の廓清を要する広範囲の手術は、開腹で行われていました。でも、ロボットを使うと、3Dでお腹の中を見ながらスムーズに操作できるということです。
すでに、アメリカでは、2000台のロボットが導入されており、前立腺の摘出手術は、2009年には9万人の手術の、その85%以上がロボット手術で行われています。2010年度は278000のロボット手術の全症例のうち、40%が子宮全摘出、35%が前立腺摘出、25%がその他となります。子宮全摘の110000のうち良性が約78000件。悪性が約32000件であると。
日本では、今急速に導入されており、100台を越えて、世界で第二位となっていると。
東京医大では、2009年3月にダ・ヴィンチが導入されて以来、2012年11月までに行われた婦人科手術の内、子宮体がんが68例、子宮頸がんが33例、ロボット手術で行われています。リンパ節の廓清など、本当に見事なものでした。
うーん、私は多くの患者さんを手術して、それなりに自信もあったのですが、もう医学の進歩にはお手挙げですね。若い人たちは、どんどんこのような最先端の技術を身につけるでしょう。ゲームに慣れた若い人たちは、ロボットの操作も、ゲーム感覚で楽しんで訓練できそうです。
私たちのようなクリニックの開業医に必要なのは、こうして最前線の医療の情報を知識として取り入れること。良く知って、どこでどんな治療や手術が行われているのか、その成績はどうなのか、常に勉強を怠らないこと。そして患者さんたちにその情報を伝え、どこでどのような治療を受けるか、その判断の情報を提供すること。今や、治療を受けるのは、その居住地だけでの選択とは限りません。
もし、私が子宮の頸がんや体がんになったなら、今はためらわずに東京医大で治療を受けようと、そう思いましたもの。
その意味で、今回の研修は、私にとっても決して無駄ではありませんでした。ただただ感心して、うなって過ごした研修でした。見事でした!!
私は今日診療を終えると、即京都に入ります。今日の午後から全国大会が始まっています。広島のみんなと合流して、今日の話を聞き、明日の発表に備えます。いよいよです。
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コメント
お疲れ様でした。
我々としては,どこでどのような治療が行われているかよくご存じの先生がいらっしゃるということは,とても心強いことだと思います。
常に研鑽を怠らないお姿は本当にご立派です。
投稿: もみじ日記 | 2013年7月27日 (土) 15時15分
そのうち、僻地医療で、遠隔操作で手術の主要部分をする日がくるかもしれませんね。
そういえば、漫画で本物と変わらない感触を得ながら、手術の練習ができるバーチャル手術ってのもありました。
iPS細胞で作った臓器で手術の練習ができる日も近いようですね。
患者にとって、いろいろな情報を提供してくれて、その長短所を説明してくれる医師は、心強い味方になりますね。
投稿: やんじ | 2013年7月29日 (月) 00時05分
もみじ日記さま
ホント、医療の世界は、日々、進んでいますので、それについて行くだけで精一杯です。連日連日研修会です。いつもありがとうございます。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2013年8月 4日 (日) 17時23分
やんじさま
実は、ヨーロッパの患者さんをアメリカで手術をすることは、もう行われているのです。すごいですねえ。私が受けた検査も、心臓の裏まで見える3Dの造影でした。裏の血管まで見えるなんて。ほんとうにすごい進歩です。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2013年8月 4日 (日) 17時26分