ワクチンの研修をしてきました。
昨日は、東京での「ワクチンフォーラム2013」に参加しました。全国から600人余りのドクターたちが集まりました。日本全体のワクチン行政や、小児へのワクチン接種、とくにロタウィルスのワクチンなど、とても勉強になりました。それに、何よりも子宮頸がん予防ワクチンについての話が大変にタイムリーだし、そもそもそれを聞きたくて行ったようなものなのですが。
総合司会の京都大学の小西先生、自治医科大学の今野先生の話など、涙が出る思いで聴きました。
結論から言えば、6月16日に書いた私見 は、いささかもブレないと言うことです。ますます確信を持ちました。
今野先生からは、さまざまなデータが出されました。
何よりも胸をうったのは、今年の6月13日にジュネーブで開かれたWHOの「子宮頸がん予防ワクチンの安全性諮問委員会」の結論についてでした。
前回の検討から4年間に世界では、1億7500万回の接種が行われたと。そして、その安全性については、全く変わらない、「高い安全性」を再確認したとの結論であったと。
接種することによる、血栓症、ギランバレー、脳卒中などのリスクが上昇することはないと。失神については、いわゆる迷走神経反射ですが、緊張したために起こるもので、接種されるのが思春期の少女であることから、起こりうることととされています。
そして、その会ではわざわざ日本への特別な言及があったそうです。世界の中では、日本のみの特殊な状況となっています。
日本はその副作用について、マスコミの注目を集めたが、発表されている症例は、典型的な「CRPS」症例と一致しないと。
CRPS、複合性局所疼痛症候群は、外傷による原因不明の疼痛とされていますが、ワクチンの薬物によるものではなく、針を刺すということによって起こるものだと。なかなか統計がないことなのだそうですが、オランダでは、様々な要因で、10万人あたり14.9件起こるとされていると。そのような症状が起こった場合は、疼痛を緩和すること、薬物や理学療法、心理的なカウンセリングなど、多面的な治療で改善されると。
それから、日赤の献血でみられる副反応では、平成23年度では、失神が100万人中20人。日赤ではRSDといわれているCRPSが100万人中0.2人にみられたとのことです。日赤では、このような場合には献血者健康被害救済制度が設けられています。
今回の「積極的には勧めない」という処置は、これらについて、専門科たちできちんと調べましょう、その期間をくださいという措置なのだと。
今、子宮頸がんで亡くなる人は、数が増えて、年間2万人が発症し、3500人が死亡していると。それに、今野先生もクロスプロテクションの話をされました。子宮頸がんも、だんだんと腺癌が増えて来て、以前は5%だったのが、20%を越えたと。そのほとんどが18型によるものだと。
がん検診でなされる細胞診で見つけにくく、進行も早く、抗がん剤、放射線も効かず、腺癌はワクチンを接種しないと有効な対応ができない。20から30代の若い人たちの感染は、80~90%が16型と18型の感染だと。全年代では70%がこの二つとされていて、予防効果は70%と考えられていたが、クロスプロテクションの効果で、93%の効果が見られていると。31型も45型も、ずっと抗体を持ち続けると。
それから、このワクチンは、筋肉注射です。他のほとんどの注射によるワクチンは皮下注射です。これは、皮下に漏れると、とっても強い痛みを起こします。筋肉注射に慣れていないと、針が深く入り過ぎたり、肩の関節の中に針が入ってしまったりという事故も実際にあったそうです。(婦人科では、ホルモン剤などの油性の注射液など、筋肉注射することに慣れています。)
副反応について、重篤とされているのは、あくまでもそれを報告した人の主観なのだそうです。患者さんや家族の方たちが重篤としたら、それがそのままであって、専門医がこれは重篤であるとか、そうでないとか判断するのではないそうです。それで、私も納得がいきました。
すくなくとも、このワクチンの接種率が減ると、今後日本では今の少女たちのうち、年間4400人が子宮頸がんになっていくと。それから、検診は、「今の安心」であって、将来を約束するものではないこと。ワクチンは「将来の安心」であるとも。
まだまだ沢山のお話しを聞きました。私は必至でメモをとりましたが、不十分です。婦人科のがんの専門医の先生方が、早くこれらのことを書いてほしいのですね。そしたら、それをコピーして迷っている人に渡すこともではきますし。
今回の東京行については、食べたものとか、孫にあったことなど、また付録を書きますね。
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コメント
今回も貴重なお話をありがとうございました。
先生が伝えようとしてくださったたくさんのことが、医療の知識のない私でもよくわかりました。
河野先生は本からネットから、ひとりひとりに向き合い、目を見て、真剣に語ってくださいます。
28年前、中学生だった私は先生のお話を雑誌で読んで、「命はすごいよ。あなたの体は大切なんだよ。あなたも大切なんだよ。」と、誰も言ってはくれなかったけど、とても聞きたかったことを手渡してくださいました。
それは10代の女の子向けの雑誌だったので、女性の体、妊娠、出産についてなどなどたくさんに知識と一緒に。
知ることで、自分の体を(でぶでブサイクだったけど)愛しく、大切に思えました。
今、4人の娘がいます。
私も、あの時、雑誌越しに先生が伝えてくださった大切なことを「子宮頸癌ワクチン受けようね。」という言葉といっしょに娘たちに伝えたいと思います。
もちろん、なぜ受けるのか?今後の検診についてなど、たーっぷりの勉強とセットで(笑)。
先生、これからもご活躍と健康を心からお祈りしています。
投稿: ハワイ | 2013年7月 1日 (月) 10時28分
マスコミも調べれば簡単にわかることですよね。
この問題が取り上げられた時に、世界ではどうのようになっているのか、国民に知らせる義務がマスコミにあります。
報道が中立であるからこその報道の自由なのですからね。
被害者いるのなら守らなければいけないでしょうが、それがどうなのかを調べて報道してほしいですね。
騒ぐだけのワイドショーのような新聞やテレビ報道が多すぎますね。
取材する人も、目立ちたいだけなのかもしれませんね。
投稿: やんじ | 2013年7月 1日 (月) 18時52分
こんにちは。
子宮頸がんワクチンは主に女性を対象にしていますが、男性への接種については、どうお考えですか?あまり世界的にも推奨されていませんが、ハイリスク型HPVは舌がんや口腔がんとの関連も指摘されているようですが。
また、風俗など性産業従事者の中には幼いころの虐待や両親の離婚、家庭内不和や性犯罪被害などにより、自尊心や自己肯定感が弱く(低く)、仕事や勉強や人付き合いが長続きしなかったり、依存関係だったりすることもあるそうですし、ACのように他人に尽くし過ぎてしまうことに生き甲斐を見いだしている場合や自閉症スペクトラムや軽度知的障害など、一見、自分の意思や金目当てでやっているような人でも根が深い場合は、そういう心理的・社会的・脳科学的アプローチは効果ありますか?また、それを一般人が知りあちらの道に行きそうなのを止めることはできますか?
自分は基本的には本人の意思で選ぶべきと思っていましたが、最近こういう背景があると知り、法的にももっと守っていくほうがいいのか、過干渉なのか迷ってます。自分が迷ったところで関係ないかもしれませが…。
投稿: ガチャピン | 2013年7月 1日 (月) 22時52分