「ヒロシマ」と「フクシマ」その③被爆者の国会請願
昨日の続きです。昨日の後に、被団協の分裂、被爆者の運動をする人たちへのアカ攻撃がすごかったこと、任都栗被団協・自民系の人が出て、別の組織をつくったこと、原水禁運動へのかかわりなどが語られた、その後を引用します。
坪井 となると、被爆者にとっては被爆者の大会の方が大事だし、印象も深かったんでしょうね。
阿部 そうです。被爆者大会に集まって来た人たちは表情も心も本当に温かくて、近所の人たちとは全然違いますからとても勇気づけられました。大会に行くと、救われた気分になったものです。
藤川 そうそう、大会に参加すると気分が全然違って来るんです。
坪井 被爆者大会での感激は、会ができた以上に強かったようですね。(そうですね、など3行略)
藤川 だから被爆者援護を求める請願行動は熱心にやりましたよ。請願のための上京費用は全部自持ちでね。それで、ほとんどの者が宿泊代節約のために夜行列車を利用して上京したもんですよ。汽車の中で寝て、東京駅で顔を洗って、食事はむすびですませて、そして、そのまま手分けして議員会館に行ったり走り回り、頑張ったもんですよ。
池田 そうでしたね。広島を午後二時発の急行「安芸」というのがあって、翌朝八時に東京に着くんです。駅で顔を洗って、国会に行きましたよね。
坪井 当時は蒸気機関車で顔が真っ黒になったでしょうから、顔を洗わないと国会に行けなかったでしょうね。…(笑い)ところで、請願費用は全部自分持ちということでしが、当時はまだ会費は集めていなかったんですか。
池田 会費はまだなかったです。
藤川 双三郡では年会費が一円だけ。これじゃーどうしようもないから、上京費用は全部自分持ちだったですよ。
池田 私たちは街頭募金にも立ち、カンパのお願いにも回りました。選挙の応援をした町長に助成を頼みに行ったこともあります。この時は苦い思いをしましてね。私は町からちゃんとした助成金を出してもらいたかったのに、町長は「じゃー、わしのポケットから出そう」と財布からいくらか出したんです。その時は情けなくて、頼みに来なければよかったと思いましたよ。助成金を出してもらうことに意味があったのに。
(この後、拠点づくりのためのお金をどうするか、代表の森瀧先生への攻撃、1964年の被団協の分裂などの話しが続きますが、略します)
坪井 その当時も国会には毎年行っていたんですか。
藤川 そうです。それも春に行き、夏に行き、秋に行きですよ。
坪井 請願は主として被爆者援護法の問題だったんですか。
藤川 そうです。
近藤 もちろん援護法ですよ。
坪井 核兵器廃絶の問題はまだそれほどでもなかったんですか。
藤川 核兵器廃絶も最初から当然ありましたよ。
坪井 当時から二本柱だったわけですね。
藤川 当時の請願行動は今と大分違っていましたね。理解のある県会議員さんがいて、東部の県会議員さんなんですが、私たちの請願に同行してくれ、段取りも議員さんの方で、「きょうは厚生省に行きましょう」とやってくれました。厚生省に行くと職員に、「被爆者の話を真剣に聞きなさい」と迫るんです。だから、厚生省の職員も私たちの話を本気で聞いてくれましたよ。ありがたかったですよ。
坪井 厚生省も当時はまじめだったんですね。今の厚生省には被爆者の声に耳を傾けてくれるような熱心さはないですよ。「はいはい承っておきます」という感じで・・・。
藤川 当時は熱心に聞いてくれましたよ。被爆者手帳の一本化の時も、「特別と一般の二種類の手帳があることは被爆者の差別を招く。差別しないようにしてほしい」と要望したら、翌年には一本化されましたから。差別という言葉を受け止めてくれたと思うんです。
坪井 そういう時代もあったんですね。
池田 私たちの国会請願も必死でしたからね。当時だって、こちらが黙っていてやってくれたわけじゃありません。何度も何度も頼みに行かなければ、動きませんでした。国の方からしてあげようなんてことは一度もありませんでしたよ。
坪井 こっちの熱意も今と違っていたんですね。
近藤 いま池田さんや藤川さんの話されたのは県被団協の請願行動ですが、私は当時、職域でしてね。県労被爆連(県労会議被爆者団体連絡協議会)です。カネがなかったという状況は私らも全く同様で、夜行列車で行き、ホテルは一人分の宿泊費で四・五人もぐり込んだりして苦労しましたよ。請願では、厚生省、大蔵省、官邸などを回りましたが、役所は冷たかったですよ。広島県出身の国会議員のところへ行けばいいんですが、役所は本当に冷たかったです。
(まだ被団協ができる前のことも引用したいと思います。少し間があくかもしれませんが。私は、今日は今から宝塚に行きます。宝塚市長選の応援です。帰りは最終の新幹線になるでしょう。明日はブログ、書けないかもしれません・・・)
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