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「ヒロシマ」と「フクシマ」その⑦被爆者の後障害その2

 昨日の続きです。これは、平成23年度の広島県の冊子ですが、元の論文について見落としていました。<注>本章は放射線被曝者医療国債協力推進協議会の協力を得て「原爆放射線の人体影響1992」の総論部分を掲載したものである。と書かれています。うーん、1992年かと躊躇するところもありますが、でもいろいろと探していて、一番よくまとめられていると思いますので、後障害の部分のみ引用続けます。

「2)白内障

 白内障は放射線の直接的障害であり、放射線の種類と量に大きく影響される。被曝にみられるレンズ混濁は線量と完全に相関している。また、広島の原爆は長崎原爆に比し中性子線量を多量に含んでいるため、同じ線量でも広島被爆者のほうが混濁を示す比率が多い。原爆に起因する白内障は眼の後極中央部に位置するのがその特徴である。最近の被爆者診察においては被爆者が老齢期に入ってきており、老人性白内障(周辺部位からの混濁を特徴とする)も加わって中央部ならびに周辺部からの混濁状態を示し、多彩な様相を呈している。

3)染色体異常と体細胞突然変異

 原爆被爆者の染色体については末梢血のTリンパ球ならびにBリンパ球、骨髄細胞および皮膚線維芽細胞について報告されており、いずれも被曝線量と正の相関をもつことが示されている。2Gy以上の被爆者ではリンパ球や骨髄細胞の30%以上に染色体異常がみられており、なかにはまったく同一の異常性(クローン)を示す細胞もみられる。さらに重要なことは、骨髄の中にある造血の起源を伴っている幹細胞にも、染色体異常が証明されていることであり、このことは被曝後40年後でも継続して染色体異常がみられていることや、白血病が多発していることの一因とも考えられている。体細胞突然変異はリンパ球や赤血球を用いて各血球表面に産生されている蛋白質の違いにより、内在する突然変異を推定するもので、いずれも被曝線量と正の相関が認められている。

4)胎内被爆児の知能遅滞(小頭症)

 胎内被爆児にみられる知能遅延は胎児の週齢と受けた放射線量によって、その頻度は異なる。8~15週齢の胎児は最も障害を受けやすく、また、放射線量に比例して重度精神遅滞が現れている。他の障害と異なり、0.2Gyあたりに閾値が示唆されている。

5)機能異常

 最近になって特定の器官における機能異常状態が把握されるようになり、その異常性が被曝線量に関連のあることが指摘されてきた。

 副甲状腺機能亢進状態は持続的な高カルシウム血症と副甲状腺ホルモン値(血清上昇)から推測可能である。図8に示すように(ここでは略します)0.5Gy以上では有意な有病率上昇がみれている。また、この傾向は若年被爆者ほど高いことが明らかとなっている。一部の症例の機能亢進症例は腺腫または過形成によることが手術により証明されている。甲状腺機能低下も被曝線量との関連が指摘されている。

2.増加示唆群

 悪性腫瘍のなかで増加示唆があるものの、まだ決定されていないものとして食道癌、唾液腺腫瘍、泌尿器癌、卵巣癌、悪性リンパ腫などがある。1987年頃より皮膚癌についての研究がなされ、被爆者に皮膚癌が増加しているとの報告があるが、まだ被曝線量との関係は明らかにされていない。(注:最近、被曝線量と明らかに相関するとの報告が出た)。組織型では、一般集団と異なり基底細胞癌の占める比率の高いことが指摘されている。特定の体液免疫能および細胞媒介免疫能検査においても示唆的変化があるが、年齢をはじめ数多くの因子が関与しているため確定的とはなっていない。

 悪性腫瘍以外の死亡率(約半数は心臓血管疾患)をみた最近の報告では当時40歳以下で2Gy以上被曝した人では死亡率が高くなっているとのことである。」

 以上でこの冊子からの引用は終わります。要するに、被爆者は被曝後何十年たっても、その放射線の影響を受け続けているのであって、個人にとっては決して「過去のこと」ではないのです。ということを私は言いたくて、延々と引用しました。まだ、飛び飛びになりますが、このシリーズ続けます。

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