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子どもの虐待死について思う。

 昨日お話しした、セブのストリートチルドレンへの文房具、さらにもってきて下さいました。自分で買って来たり、おうちの中を整理したりして。ノート、クレヨン、鉛筆だけでなく、鉛筆削りやホッチキスまで。私がお預かりただけでも、もうずいぶんになります。皆様、ありがとうございます。

 広島県で、子どもが実母に殴られて死亡するという事件が起こってしまいました。虐待による子どの死亡については、以前、0週0日、生まれてすぐの場合の発表をしたことがあります。このブログにも若い人の出産についてお話しした時に載せたスライドの一枚です。

Photo でも、今回は、11才五年生の子どもです。母親は、この子を産んだ時17才。

 若い女性が妊娠を自覚したときに、「産みたい」というのがほとんどなのです。積極的に中絶をしたいという子はまずいません。彼女が寂しい環境にある時には、特に産みたいと強く主張します。愛情をそそぐ相手を赤ちゃんに求めるのでしょう。
 
 でも、若くして子どもを産みたいというとき、その親に育てる能力があるのか否か、子どもの父親はどうなのか、これはしっかり見なければなりません。若い母親の場合、相手の多くの男は子育てに参加せず、かと言って生活費を家に入れるでもなく、やがて離れて行ってしまうという、そんなことが多々あり得るのですね。

 一人取り残された若い女性にとって、子育ては大変です。彼女の場合、それができないと、生まれてすぐから、それから一旦引き取った後虐待があって、また児童養護施設に引き取られています。

 児童相談所が「親子関係が良好になった」と判断したという、ここに強い不信感を持ちます。長い間子育てをしていなかった母親が、そんなに簡単に「良好」になることはまずありません。虐待をした母親は、また虐待をするかもしれないと考えなければならないのに。だって、その母親に対するアプローチがどうなされていたのでしょう。

 DVをした男性に対しての治療的カウンセリングがボツボツなされ始めていますが、虐待をした親に対しての、アプローチはほとんどなされていません。虐待をしてしまった親のSOSの電話相談には、親自身からの泣きながらの相談が殺到します。

 ストレスの多い孤立した親への子育てへの支援がなされなければというのが一つ。

 もう一つ。大切なのは、子どもへのアプローチです。「あなたたちは、暴力はうけてはいけない」ということをしっかり語ってあげなければ。暴力を受けたこどもは、「私が悪いからだ」と思わされています。誰にもSOSを求めることもなく、一人抱え込んで暴力に耐えています。

 回りが発見できなかったのかということと同時に、子ども自身からSOSを求めていいのだと。誰からでも、殴られたり無視されたりしてつらい時には、回りの誰にでも助けを求めていいのだと。特に、児童相談所には、子ども自身が助けを求めていけるような人を作ってあげる義務があると思うのです。学校の先生でもいい、とくに保健室の先生には、いつでもお話しに行っていいのよと、そうしっかり話してあげていたら、と思います。

 私は、診療の現場で虐待の事実を見つけたなら、簡単に家には帰しません。自相も家族から拉致といわれても、「命」を守るのが先決と、頑張って保護している例を何度も見ています。今回の子どもが、そんな大人たちに守られなかったのが、とても残念です。親からの暴力をだれにも助けを求めることもなく、ひっそりと死んでいった彼女が何ともかわいそうです・・・。


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ぜひ、覗いてみてください。

広島ブログ


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コメント

以前、同じような事件があった時
「虐待は遺伝する」と云う表現を使ったら、炎上しました。

投稿: ⑦パパ | 2012年10月 3日 (水) 14時00分

子供の虐待。
聞く度に、こうなる前に何かできなかったのか?
と思います。
そして、加害者にどんな歴史があるのだろう?
と考えてしまいます。
連鎖…ということを…。
それで解決ということはないのかもしれないが、
親のココロに、大変だった時の気持ちに寄り添う
サポート、あればいいなぁ。

少し話は違うかもしれませんが、
元薬物中毒の女性達の研究で、
クスリをしたくなる時と
生理周期に関係があるとか。
それを意識していれば、
今はそういう時期。と考え直せる…

虐待してしまうイライラは
それと関係あるのかなぁと…
このイライラは
そういう自分の時期だから、
思い直せたら、少しは…
とは、ならないですかね…(^_^;)

へんなコメントですみません<(_ _)>
何か、ちょっと気になってたことだったので…

投稿: 季切少楽 | 2012年10月 3日 (水) 16時00分

高校生の頃、妊娠した同級生が出産することを決めたあとで
ふと「虐待しちゃったらどうしよう」と漏らしていました。
彼女は不安定な家庭の出身だったので
テレビなどで語られる「虐待の連鎖」に怯えていたようです。

あれは虐待された自覚がないと親にされた通りに育ててしまうとか
虐待されずに育った人よりも注意やサポートが必要であるという意味であって、
虐待された子がみんな虐待親になるという意味ではありませんよね。
それなのに、虐待された子供はろくな大人にならないと言わんばかりに
「遺伝する」と気軽に煽る人たちは、まるで虐待を期待しているかのように見えます。

「お前のようなやつが虐待に走るんだ」と言われ続けるストレスを子供にぶつけたら
「それみたことか」と満足するんでしょうか。
なんの助けにもならないならせめて黙っていればいいのに、
上から忠告してやるような顔で足を引っ張る人たちに、はらわたが煮えくり返る思いです。

良い親・良い母を過剰に賛美し、虐待親を罵倒する声があまりに大きいと
真面目な子ほど失敗してはいけない・完璧な親にならなければと追い詰められて
周囲に助けを求めることさえできなくなってしまいます。
子供は社会の中で大きくなるものなのに
親にすべてを押しつける社会のありかたも虐待の遠因なのだと思います。

河野先生のように守ってくれる大人がひとりでも近くにいたら
子供の人を信じる気持ちも死なずにすむのでしょうね。

投稿: りく | 2012年10月 3日 (水) 20時17分

⑦パパさま
遺伝はしませんよ。「遺伝」ではなく「連鎖」は言われているのですが、それでも、自分の虐待体験を反面教師として子育てに生かしている人も沢山います。このコメント欄のりくさんの意見も読んで下さいね。子育てのストレスを社会的にうけとめなければ、虐待は消えないと思います。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2012年10月 5日 (金) 08時09分

季切少楽さま
いつも楽しくブログを読ませて戴いています。成熟した女性のからだの周期で、特に生理前のイライラ、うつ、があることは確かなのですね。生理前に子どもを怒鳴りつけてしまったね。わけもなく涙が出るという経験は誰しもあると思います。それを医療で克服することもできます。PMSの治療のために来る人もたくさんいます。ただ、今回の事件を起こした人がそうであったのかは全くわかりませんが・・・。コメント、うれしかったです。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2012年10月 5日 (金) 08時14分

りくさま
貴重なコメントありがとうございました。誤解をしている人たちへの警鐘になったと思います。社会的な子育てへの支援が必要ですね。ほとんどの人が「子育てを学ぶ」機会はないままに親になっています。そこにあるのは、自分の経験と、感情。子どもに一人で向き合うことは大変なストレスなのだと、社会がうけとめなければ、と思います。こうのみよこ

投稿: こうのみよこ | 2012年10月 5日 (金) 08時25分

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