中学生の妊娠⑨
二日お休みしましたが、中学生の妊娠のシリーズを再開します。
現場では、妊娠した中学生の状況はそれぞれ進行しています。それぞれの少女と保護者の方たちは、しんどい中で、懸命に方向を見出そうとしています。その姿に接し、いくらかのアドバイスをしながらも、やっぱりこうなる前に伝えておかなければ、と思います。
社会では、「そんなことをする本人が悪い。そもそも中学生がセックスをすること自体が問題なのだ」と冷たく言ってしまっていますが、それなら、なぜ悪いのか、なぜしないほうがいいのか、それをちゃんと伝えなければ、と思います。それをどう伝えるか、それに悪戦苦闘しているのが、私の姿でもあります。
でも、今の社会は、本人が悪いといいいながらも、それを伝えることすらしていません。伝えることが悪とされているからです。「伝えるとそそのかす」と。もう、いい加減、大人たちがめを覚ましなさいと思います。民主党になって、文科省が少しは変わるかと思えば、さっぱりです。(と、また、私の愚痴です。まったく、愚痴のひとつも言いたくなります)。
さて、中学生に話すとき、まず大学病院時代に接したがん患者さんの話、「生きたい、生き続けたい、でも、病のためにその命を奪われていく、その患者さんたちと家族の方たちの話から入ります。性教育とは、命の教育です。命を考えるには、私は「生と死」だと思っています。その「死」から入ります。
婦人科ですから、患者さんはみんな女性です。そのほとんどの方は家庭の主婦であり、母親です。一家の中で、どなたが病に倒れても、大変だけれど。それでも特に一家のお母さんが病気になって、そして亡くなってしまうかも知れないということになったとき、そのご本人と家族の方たちの話しをします。どれだけご本人が残していく子どもたちのことを考えて、闘ってきたかということを。
そして、がん患者さんと家族の方たちの姿から多くのことを学んだ後、土谷病院に移ってからは、今度は多くの若者たちに出会いました。その若者たちに接して思うこと。
私は、はっきりと「君たちは無知だ」と言います。特に三年生にもなると、もうすでにいろいろな情報に接して、沢山のことを知っているように思っているでしょう。何もこの寒いのに(暑いのに)、それに受験前の忙しいときに、こんな所に集められて、二時間も話しを聞かされなくったって、「もう知ってるよ」と思っているだろうと、それは私もわかっています。それでも、私は君たちは無知だと言うね。そして、性というのは、「知識はなくっても、間違った知識を持っていても行動は取れる」やっかいなものでもあります。むしろ、知らないからこそ、行動は取れる、知れば知るほど慎重になるものなのだけれど。どこがどう無知なのかは、後で言いますね。
では、なぜ無知なのか、それは簡単なことで、私たち大人が真正面から伝えていないから。知らないということは、知らない君たちの責任ではなく、伝えなかった、我々大人の責任ではないかと考えました。それなら、なぜ私たちは、こんな大切なこと、性や体について伝えようとしないのでしょうか。それは、私たち大人が「性」をどうとらえ、どう実行して来たか、まさにそれが問われることなのですね。
もしかして、私たちは性というものを「いやらしいこと、恥ずかしいこと、隠さなければならないこと」と捉えていたのではないか。もしそうだとすると、これは絶対に子どもたちに伝えることは出来ません。いやらしいことと捉えていたらわが子に向かって「いやらしいことを教えてあげよう」なんて、言えるわけがない。「恥ずかしいこと」と捉えていたら、言葉を口に出すことすら恥ずかしい、だから伝えられない。
でも私は、今はそう考えていません。私たちにとって、「性」は、決していやらしいこと、恥ずかしいこととは捉えていません。これまで長い間、患者さんから学び、ご家族から学び、そして私自身勉強する中で、今、私は性というのは、「とても大切なこと」だ捉えています。そして、さらにあえていいますね。とても大切で、そして実は「いいものだ」と「素敵なものだ」と思っています。そして、私は君たちに「素敵なものを素敵なものとして実行していける」そんな大人になってほしいと思っているのです。(まだまだ続きます。)
今日、私は日帰りで、宝塚の中学生に話しに行きます。
その後のソニー。もう何枚も写真を撮っていますが、しつこいかなあと思ってカメラの中のみに収めています。でも、あえてこれは一昨日。この車が横断歩道にとめて、横断歩道上で荷物を降ろし、ソニーのビルの中に荷物を運んで行った、そのときにスーツ姿の社員さんが横を通ってビルの中に入っていきました。中の受付からも、ここに車が止まっていることは丸見えに見えます。私は、運送会社の運転手さんの責任にしたくはないのです。それを平然として見過ごしているソニーの問題だと思っています。この横断歩道上にタクシーを止めて、荷物をトランクにいれ、社員さんが乗り込もうとしているときに「ここは横断歩道ではありませんか」と私が言ったとき、あわてたのは、タクシーの運転手さんです。社員の方たちは無言で平然としています。その体質が私はとてもいやなのです。
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ぜひ、覗いてみてください。
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コメント
>知れば知るほど慎重になるもの
この一言に深く同意します。
性感染症や妊娠出産のリスク、経済的な問題
メンタルケア・・・など
知識が増えれば増えるほど慎重になって
息子たち周りの体験率は限りなく低いです(親が知らないだけかもそれませんが・・・)
その分2次元へ・・って感じでこれはこれで問題なのですが(汗)
投稿: ぶどう | 2012年1月19日 (木) 09時28分
河野先生。今日は雨ですが早い雨水かと思えば春遠からじの気分で明るいです。
今から出掛けるのですが その前にシリーズで読み進め また先生がひと息つかれて またまた始まったこの素晴らしいブログに応援の一言をと思います。
日本の憲法には教育基本法があり義務教育第6条2では
『教育の目標が達せられるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。』
とあります。
また日本は表現や言論自由を基本理念としておりますので どうして河野先生が教育されていかれる事におかれて言葉で不自由されておられるのか不思議でなりません。
不自由になられておられる言論において規制をかけておられるのが 如何なる理由で如何なる法律のもとにおいて規制されておられるのかが知りたいです。
規制されていらっしゃる方々は憲法を御存知の上で法律に基づいて教育組織体系を組まれ規制されているのですよね?
まさか憲法に違反されては おられませんよね!?
福寿草の咲く時季になりましたね。
今から娘と待ち合わせして 少し会談して来ます。
先生もお花の香りを愉しまれて下さいませ。
投稿: 豊華 | 2012年1月19日 (木) 11時11分
私の両親も「性」をいやらしいこと、恥ずかしいこと、と捉えてました。
時代的にある程度しようがないことかもしれません。
私は、「ちょっと違うんじゃ...?」と頭では思いながも両親の考えから、今まで抜け切れませんでした。
それが変わったのは、娘達にパートナーが出来たことを知った時です。
本当は、もともと「性」って人間にとって食べたり、飲んだり、排泄したりなどと、おんなじものじゃないんだろうか?ただ「性」はパートーナとの協同作業という部分もあるのかもと考えるようになりました。
別にいやらしくも、はずかしくもない普通のことと思えるようになりました。
娘達には、食べものや着るもの、いろんな価値感がパートーナーと共有出来たら楽しいように、「性」についても相性のいいパートーナーとめぐりあって欲しいと思う日々です。
投稿: みるく | 2012年1月19日 (木) 14時44分
本日は御講演ありがとうございました。改めて性や命について学ぶ事ができ、非常に有意義な一時を過ごせたと思います。弱冠15歳、中学生の自分も向き合っていかなければならない問題があるということに気づけて本当に良かったです。
投稿: | 2012年1月19日 (木) 19時12分
ぶどうさま
息子さまたちは、しっかり教えてもらわれているのですね。とってもラッキーで嬉しいことですね。このシリーズこれからももう少し続きます。またよってくださいね。コメントありがとうございます。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2012年1月29日 (日) 21時14分
豊華さま
いろいろとご助言ありがとうございます。理性で考えたら当たり前のことが、なかなかなのが、今の教育界の状況でもあるのですね。まだまだ覚悟して頑張らないといけません。豊華さまもしんどいことでしょう。いつかまたお会いしましょうね。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2012年1月29日 (日) 21時22分
みるくさま
素敵なおかあさまで、お嬢さまたちは幸せですね。これからもお嬢さまにとって、よきアドバイザーでいてあげてくださいね。コメント、ありがとうございます。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2012年1月29日 (日) 21時26分
宝塚の生徒さま。
コメントありがとうございます。みなさんが一生懸命聞いて下っさて私もとてもうれしかったです。これからも、いい人生を歩まれますように。こうのみよこ
投稿: こうのみよこ | 2012年1月29日 (日) 21時34分