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講演録から。男の子の性教育その④

 『だから、君たちは中学生にもなったのだから、家の中できちんと話し合いをしなさい。僕の部屋をあけるときには、ちゃんとノックをしてね。ノックをして、返事があって初めてあけてねって。それを言いなさいと伝えます。

 そのかわり、君たちは親の寝室には絶対に入らないこと。もし、寝室に入る用事あるのなら、誰かがそこにいるときに、ちゃんとノックをして、返事があって開けること。誰もいないときに親の寝室にそっと入ってやれコンドームを見つけただの、親のエッチ本を見つけただのって、結構あるのですよ。

 それは子供の側から親のプライバシーを侵害しているということなのです。侵害しておきながら、お父さんなんて不潔って、もう一緒の家の中で同じ空気を吸うのも嫌だみたいなことを悩んだりするのですよ。女の子が見つけたときなどは。

 やっぱり私は家族同士といえどもプライバシーはあるということを、ちゃんと取り込んだ上での家庭運営というものがなされなければならないと思っているのです。

 同時に、もうちょっと言いますけれども、先生、娘がこんな日記を書いていたんですとか、こんな手紙が着てたんです、今ではさしずめメールですよ。こんなメールがきてたんですって言って、相談に来られる方があります。日記を読むなんて、絶対にしてはならないことなのですけど。

 お母さんにしてみれば、日記を読まないと、あの子のことが分からない、嘘ばっかりついて何をしているかわからないじゃないか、ないじゃないですか、とおっしゃるのですね。

 そういう方に私は申し上げるのです。「お母さんね、思春期、中学生にもなったらね、子どもの全てを知ろうと思うのが無理なのよ、さびしいけどね。残念だけどね。大切なのは、子どもの全てを知ろうとすることじゃなくて、そうじゃなくて、私は子どもの全てを知ってるわけじゃなないということを認識すること、子どもは親に内緒のものをもっているって。それを知った上で、子どもとの関係を作らないといけないんじやないかね。」と私は言うのです。

 私も娘が小学校四年生のときに、私に作文を見せなくなりました。先生には出すのに、私には見せてくれないって。あ、始まったなと思いました。そのときから私は、娘に「見せたくないものは見せなくていい」と言いました。

 私にも覚えがある。おばあちゃんに日記を読まれてすごく嫌だったことがあるから、だから、見せなくていいんだって。でも、学校からの親への手紙は必ずあなたが責任をもって見せてねって。これを守ってくれたら、私はあなたがいないときにランドセルを探して、こっそり見るっていうことは絶対しない。絶対しないから、それは信じていいよ。

 でもね、これだけは覚えておいて。これからあなたが生きていくのに、色々しんどいことがあるよ、お友達のこととか、進路のこととか、どうしたらいいかわからなくなって、自殺したくなることだってあるかもしれない。

 そのときにはね、ここに相談相手がいるよ。私はあなたの親なんだから、あんたがしんどいときにはね、何があったって助けてあげたいと思うしね、あなたがどうしたらいいか分からないときには、一緒にどうしたらいいか考えあげることができると思う。ここに相談相手がいるっていうことを、これだけは覚えておいてね」って。

 この「何かあったら助けるよ」というですね、このメッセージを繰り返し繰り返し、送ってきたと思うのです。

 もう子育てって本当に大変で、色んなことがありますよ。いろんなことがあって、今はもう二人の子どもは大人になっていますけれども、これを伝えててよかったなぁと、私は今思っているのです。

 私は、私の診察室で、「お母さんだけには言わないで。親にだけは知られたくない」と泣く子のことが本当につらいと思って来ました。一番身近にいる大人である親が、どうして相談相手足りえてないんだろうか、って。言いたくないためにさらに悲劇を膨らませてしまうのですね。

 やっぱりプライバシーは守るっていうことと両立して、日ごろから、何かあったら助けるよっていうメッセージを伝えておいてほしいと思うのです。』

2011_12180002 今、横浜です。ホテルの窓からのみなとみらいの景色です。昨夜遅くに到着した時から、一時半まで人と会って話をしていました。それなのに、朝は早くに目が覚めました。いつもそう。ホテルに泊まっていると、なぜか早ーくに目が覚めるのです。今日は、10時から午後3時までぴっちり研修です。


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コメント

この男の子性教育シリーズ は子育て中のお母さんだけでなく ジジ・ババ世代にも踏まえておく事が大切と感じています。ここ④は すべての親御さんがこころ得ておくべき大事な事ですね。
 二人の男子だけしか育てた事がないのですが、なんとか夫々自立した社会人になってくれましたが その思春期を思い出すと じわっと涙が浮かびます。
 子育てとは「信じて、待つ」「ひたすら待つこと」であったと感じています。
 いつかこのシリーズが 女子にも男子にも平等に副読本となって 教育現場で生かされる事を 願っています。 

投稿: yuumin | 2011年12月18日 (日) 12時05分

よかった!講演を聞きに行った内容と一緒で!!と感じました。私の子供はまだ幼児と乳児で今は子供の何もかもを知っておかなければ…という使命感でいっぱいですが、それが小学校くらいから徐々にある程度の距離をおいていくということは必須であるということ、それは誰かに教わらなければ気付かないことでした。少しさみしい気もしますがそれが自分が子離れしていかないといけない大切な道筋ですね。でも肝心な時にはしっかり向き合うということ。
自分にできるだろうか…と不安でいっぱいですが、このブログを読み続けることで気持ちを奮い立たせます!
自分の産んだ二人の男子。性に関しては自分が率先して向かっていかなければ!学校に任せちゃいけないですね。

投稿: けいちゃん | 2011年12月19日 (月) 16時25分

先生が娘さんに仰ったこと・・・私も母に言ってもらいたかったと心から思いました。そしたら、35を過ぎた私の人生が、今までもこれからももっと楽に生きやすくなったのではと思います。

でも、これはこれから私が子供に言ってやればいいことですよね。
4歳と1歳の母となった今、そのときが来たら絶対に子供に伝えたいと思いました。
親を信用して、安心して生きて欲しいです。

子育てのヒントを頂いた気がして、ついコメントしました。ありがとうございました。

投稿: ゆうまま | 2011年12月19日 (月) 21時56分

なんだか身につまされるお話です。
私、娘が中・高生の頃、娘達が買い込んだマンガ・化粧品・ダイエット食品を見つけてはよくモメました。
別に隠してあったのを捜索したのではないのですよ、
そこらへんに放ったらかしてあったのですけど・・・。
でも娘達にとっては、うるさかったのでしょうね~、2人とも遠くで下宿してしまいました。
私が、もっとおおらかに構えてれば、今も近くにいてくれたんじゃないかと後悔しております。
娘達がこの頼りない母でも、困った時には、気休めぐらいの頼りになるかと思ってくれたら~と願ってる毎日です。
「正月いつ帰ってくるんだろ~~」

投稿: みるく | 2011年12月20日 (火) 17時22分

重要な講義でしたね。読んでいて、先生が上梓された「さらば、悲しみの性」を思い起こしていました。僕は同書を西垣戸勝さんの「性教育は、いま」の関連で読ませていただきましたが、今の子どもたちは遺憾ながら性教育についていえば、あまりに閉ざされているのは否めません。若年層の性の悲劇は、のぞまない妊娠や性病など、無知が伏線になっていることが少なくないですし、それをタブーという隠れ蓑にして真摯に教えてこなかった大人の罪悪だと、僕はにらんでいます。西垣戸さんも指摘されていましたが、男の子のための性教育の場はおざなりだな、とも感じます。

投稿: 佐藤陽男 | 2011年12月21日 (水) 21時52分

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