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「森瀧市郎追悼集」から④

森瀧市郎追悼集「人類は生きねばならぬ」の第2章は森瀧さんの「遺稿」集となっています。その中に(1979年4月25日夜、海老園の自宅にて)と記された文があります。これは、スリーマイル島原発事故を受けて書かれたものです。

『四国電力伊方原発訴訟における原告側「準備書面(一二)」の意味するもの』とのタイトルの文章から引用します。

『米国ペンシルベニヤ州スリーマイル島原発で起こった事故の報道は、全世界に大きな衝撃を与えた。私は三月末から四月はじめにかけて、毎日時間のありったけをかけて、この事故の報道に耳を傾けた。

 そして一年前の四月二十五日、松山地裁が下した「安全判決」にいたるまでの科学的論争を回想しないではおれなかった。科学裁判とよばれた四年余にわたる伊方原発裁判で、原告住民の弁護士・学者が展開した論述・証言の総まとめとも言うべき「準備書面(原告一二)」は、その副題の示すごとく「伊方原子力発電所の危険性及び違法性のすべて」にわたって体系的に委曲をつくして述べたものである。これは原発論争史上不滅の文献となるであろう。

 それにもかかわらず松山地裁の判決は、被告・国側の言い分を全面的に採用し、原告側の論述証言をいともあっさりとしりぞけてしまった。そして原発の安全性に太鼓判を押してしまったのである。

 私は悲憤やるかたない気持ちで広島にかえった。その日の日記を見ると、「ガリレオはその地動説の放棄を命じられたが『それでも地球は動く』とつぶやいた、伊方の人たちも『それでも原発は危険だ』と言い続けるであろう』と書いている。はたして伊方の人たちは高松高裁に上告した。そして進行中である。

 スリーマイル島原発事故の報道や解説と伊方原発訴訟の「準備書面(一二)」を読みあわせて見ていくうちに、私はこの準備書面のえらさに今更ながらいよいよ頭がさがったのである。

 スリーマイル島原発事故の報道で、私がいちばんおどろき、注目したことが二つある。一つは事故が二次給水系の故障に端を発したということであり、もう一つは炉内に水素が発生してあわてふためいている状況の報道であった。』(以下略します)

『原子炉一次系の熱除去は、正常なときには蒸気発生器二次側の水の蒸発によって行われている。しかし主給水系と補助給水系からなる二次側給水系が故障し給水が止まると、原子炉の停止が行われても、崩壊熱による発熱のために、蒸気発生器二次側の水は蒸発によって、およそ三十分で空になる。そうなると蒸気発生器による一次系の冷却は行われなくなるため、崩壊熱によって一次系の温度は上昇し、一次系の圧力は高くなる。・・・』(以下略します)

『次に私は、スリーマイル島原発の炉心に発生した多量の水素であわや一大事にいたる緊迫したニュースをみておどろいた。このことについても私は、伊方訴訟「準備書面(一二)」にその解説を求める外なかった。はたして準備書面の五六五頁で「燃料棒の被覆管と化学反応を起こして熱と水素を発生させるとともに・・・」という箇所に出会った。

 燃料棒被覆の金属ジリコニウムと水との反応で金属は酸化してもろくなるとともに、そこで発生した水素は酸素との割合で爆発するか燃えるかし、炉心溶融の最大事故につながる。そのことについての国側の安全審査のあまさを、原告側は次のように批判している。・・・』(以下略します)

『ともかくも私は、この伊方訴訟準備書面(原告一二)の中から、スリーマイル島原発事故のニュースの中で私が最もおどろいた二つの点について、このように明確に解明を与えられたのである。逆に言えば、少なくともこの二つの点については準備書面の所論はスリーマイル島原発事故で立証されたのである。もうひとつ逆に言えば、この準備書面のこの所論は、スリーマイル島のいわば科学的予言であったようにさえ私には思えるのである。

 私の言いたいことは、原発の危険性を憂慮する多くの人びとが今あらためてこの「準備書面(原告一二)」を読んでみていただきたいということである。』

 今年の8.6平和の夕べで、元京都大学原子炉実験所講師小林先生はこの伊方原発訴訟について話されました。この訴訟では、科学的に原発の危険性を完璧に科学的に立証したと。それでも、三権分立はどこに行ったのかというがごとく、国の言うことに裁判所はあっさりとお墨付きを与えてしまったと。

 森瀧さんは、1979年に、スリーマイル島の事故で、この伊方原発訴訟のすごさを語られています。それから三〇年あまり、今度はとうとう日本でこんな大事故を起こしてしまいました。伊方原発訴訟の予言どおりに。

 このたび、この本を読み返し、そして一文字一文字キーを打ちながら、私は、何度涙したことでしょう。森瀧さんの中では、核兵器も原発もみごとにつながっていました。「放射能」というこれのみによって被爆者運動を理論化し、引っ張ってこられました。いまさらながら森瀧さんのすごさに感銘します。

 そして、今日の状況を振り返ってみると・・・。あまりの状況に愕然とするのです。それは、被爆者運動の弱体化のみではありません。これまでヒロシマは核兵器を語って来たが、原発にはふれないできたとのうのうという人たちの存在にも。

 長い間引用ばかりで読む人は面白くないだろうなあ、いえ、ほとんど読んでもらえないだろうなあと、思いながら、続けさせて頂きました。改めて森瀧さんに深い感謝をささげます。なお、引用した本は、数冊でしたら我が家にありますので、お分けできます。


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ぜひ、覗いてみてください。

広島ブログ

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コメント


河野先生。

毎日拝読させて戴いております。先生の勉強には頭が下がる想いです。

先日 図書館で「原爆市長」浜井信三氏の本がありました。

私は別の本を借りたかったため まだ読んでいないのですが河野先生のブログに書かれている本は是非 読んでみたいと思っております。

森瀧市郎先生が原爆反対運動に励ましにおいで下さって感激したと河野先生は書かれておられましたが 私も河野先生が勉強されていて ブログにされておられるのを読むたびに 私も邁進せねばと奮起させられます。

これからも良い本との出逢いを助けて下さい。

広島市の事を考えて行くと どうしても物理学的な要素も勉強せねばなりません。私は娘にも是非 そのような考察も持ってもらいたいです。

これからもブログを拝読して行きますので どうか宜しくお願い致します。

投稿: 侑子 | 2011年9月 4日 (日) 18時52分

伊方原発の裁判では、反対派が勝つと誰もが感じた時裁判で、裁判長もそう判決するだろうと。でも突然に裁判長が採決の時に変わり、国が勝つ判決をする裁判官がやってきたと話されてましたね。判決を下すとまたもとに帰って行ったと。
法律に関わる人として最低の人が裁判官なんて。
法の平等を否定するなんて。

スリーマイルの事故も福島第一原発の事故も、同じものですね。炉心が冷却できなくなると起こる事故。
つまり、原発の安全技術は三十年以上進歩していないことが、証明されたことになります。
原子力の科学は、まったく進歩していない。
三十年以上も進歩していない技術には、安全性なんて存在していない。

投稿: やんじ | 2011年9月 4日 (日) 19時50分

 4回にわたる森瀧市郎追悼集の紹介を有難うございます。しっかり、なんども読み返しました。

森瀧氏の偉大さを、ますます知ることが出来ました。
先日、今井 一氏のお話を聴きました。彼も伊方原発の裁判での理不尽を語っていました。判決の出る直前に伊方に送り込まれた裁判長が 国の言い分を全面的に採用し、原告の住民を敗訴に。しかも裁判が終わるとさっさと移動してしまうという、信じられない事態が司法の世界でも行われていると。 私達一国民はなにを頼りに生きればいいのでしょう。
 ジャーナリストの今井一さんは 住民投票(岩波新書)を書いた方です。最近、”「原発」国民投票”という新書を集英社から出されています。
 これ以上の放射能を子孫に残してしまう原発は終わりにしなくては。負の遺産を次世代に残してはいけないのです。

投稿: yuumin | 2011年9月 5日 (月) 07時32分

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